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第7回:社会における制度や慣行をジェンダーの視点で考える

【理事長コラム】NPO法人 浜松男女共同参画推進協会 理事長 井出あゆみ

社会には様々な制度や慣行が存在し、私たちは大なり小なりそれらに従って生活しています。
その中で、新しく作られる制度はまだ良いとして、古くからある制度や慣行には、ジェンダーバイアス(性的偏見)がかかったものがたくさんあります。

例えば、冠婚葬祭で主要な役目は男性、裏方は女性と決まっている、自治会長は代々男性が務めている、相撲で女性が土俵に上がれない、お茶くみは女性がするなどなど。
こうしたジェンダーバイアスのかかった制度や慣行は是正していかないと、目指す男女共同参画社会には到達できません。

ところで、男女共同参画社会基本法には、第4条に「社会における制度又は慣行についての配慮」が規定されています。

「男女共同参画社会の形成に当たっては、<***>にかんがみ、社会における制度又は慣行が男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り中立なものとするように配慮されなければならない。」

<***>の部分には何が書いてあるのでしょう? 
何に「かんがみる」の?

答えは、「社会における制度又は慣行が、性別による固定的な役割分担等を反映して、男女の社会における活動の選択に対して中立でない影響を及ぼすことにより、男女共同参画社会の形成を阻害する要因となるおそれがあること」です。

同じようなフレーズが繰り返されている感じで、組み合わさると、長~い一文です。読み取るためには二度読みしちゃいませんか?!
法律の条文というのは、二義を許さないよう正確に書こうとするから、どうしてもこう長くなっちゃうんですよね。

要するに、第4条には、制度や慣行にジェンダーバイアスがあると男女共同参画社会を阻むおそれがあるから、男女共同参画社会をつくるには、制度や慣行が男女差別につながらないようできる限り配慮されなければならない、ということが書いてあります。

基本法第4条は、日本の制度や慣行のジェンダーバイアス是正のための法的根拠として、(ほぼ)唯一の重要な条文なんです。無くてはならない条文ではありますが、「おそれがある」とか、「できる限り」「配慮」などと、なんともハギレの悪いこと。
基本法のできた1999年頃は、固定的な性別役割分担に賛成の人のほうが多数派でしたから、国民感情に「配慮」して、軟らかい文言にしたのかもしれません。

制度や慣行は根強い硬直性を有していますから、男女共同参画社会の形成を本気で目指すなら、「男女共同参画社会の形成に当たっては、社会における制度又は慣行が、性別による固定的な役割分担等を反映して、男女の社会における活動の選択に対して中立でない影響を及ぼすことにより、男女共同参画社会の形成を阻害する要因となることにかんがみ、社会における制度又は慣行が男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響を中立なものとするように『是正』されなければならない」
という文言にするくらいでないとダメじゃない? (・へ・) 

NPO法人浜松男女共同参画推進協会
浜松市を拠点に男女共同参画、ジェンダー平等、女性活躍推進などの課題に取り組んでいます。浜松市男女共同参画・文化芸術活動推進センター(あいホール)の管理運営を担っています。
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