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昨日杉並区で母を助けてくれた皆さんへ。感謝と熱中症アラート

予兆の足攣り

昨日の夕方17時半頃、還暦過ぎの母と並んで歩いていたところ、彼女の歩き方が少し変なことに気がつきました。

左右の足を出すリズムが、微妙に…。
テテッ、テテッと、ずれている。

「お母さん、もしかして足痛いの?」
「あ、うん。なんかちょっと攣ってるみたい」

この時点で全然ピンときてない私は、ただ母の足が攣ってしまったのだと思いました。

「あいたたた」
「攣ったら伸ばすんじゃなかったっけ」
「うん。こう?あ、イタタタ、痛〜〜〜」
「え、大丈夫?」

目をきゅっと瞑って耐える母。もともと辛さをあまり表明しない人なので、普通の足攣りとは違うのか、よく分かりません。

「だめだ、あ〜〜どうしよう。イタタ」

そう言うと母は一歩も動けなくなり、道路脇の電信柱に手をついて、終いには立っていられずアスファルトに座り込んでしまいました。
両足をまっすぐ伸ばして沈黙し、テディベアになってしまった母。


あ。これは普通じゃないな。

漸く気がつくも、住宅街のど真ん中、すぐ傍を車がビュンビュンと通り過ぎます。
うーん…どうする。どうすべき?

どう動くべきか判断できず、とりあえずネットで調べ始めた私に、通りがかった2人組のご婦人が声をかけてくれました。

「大丈夫ですか?ここ、車通りが多いからこのままだと危ないかも」
「うんうん。救急車とか…呼んだ方がいいかも。うん」

心配そうに気遣ってくれるお2人。

でも、救急車…程なのか?
母はまだ意識もあって、少し休んで良くなる可能性もあって、不要な救急車を呼んで他の命が救われないことがあり得る懸念から、なかなか決断できません。

「う〜ん…急に足が攣っちゃったみたいで…休んだら回復するかもしれないんですけど」
「あ、それもしかして熱中症かも。水分とか、摂らせた方がいいかも」

熱中症?

原因は熱中症


熱中症。
ネットにも"熱中症から足攣りが起きる"と記載があり、水筒の水を母に飲ませてみると(この時点では自分で水すら持てない状態でした)、「もうちょっと飲みたい」と言われました。

いやでも、水分はとってた筈なのに…。
(水分を摂っていても熱中症になります)


私が水を飲ませるのに難儀していると、向かいのワインバーから女性のご主人が飛び出してきて、ストローをさしたコップの水やタオル、氷嚢、簡易の枕などを持って来てくれました。

母の身体を触ると、膝裏がものすごい熱さで、びっくり。
熱中症だ。完全に。
保健の教科書を思い出しながら、関節に氷嚢を当てていきます。

寝かせて、冷やして。これでいい…のか…?
半信半疑、自信ないながらの初実践でした。


幸運の援助フィーバー

そうやって不安ながら対処していると、ワインバーのご主人の援助を皮切りに、信じられないくらい沢山の人が次々と助けてくれました。

「あの、これ安物なんで…あげます!」と紫の小型ファンを思い切ったように手渡していってくれた黒髪ロングの女性。
「これよかったら」とDAKARAと経口補水液を買ってきてくれたボブの女性(咄嗟に小銭がなくお金も渡せずすみません。あの後母がどちらも飲み、本当に助かりました)。
最初に声をかけてくれたご婦人2人は近くで見守ってくれていて、鞄にあった冷感シートを出してくれたりと、止まない好意、厚意。

「ありがとうございます、すいません、ありがとうございます…!!」

必死に御礼を言うしかない私。
次から次へと休みなく援助の手が来るので、つい胸が熱くなり、一瞬泣きそうになりました。

自分から助けてと言っていないのに、こんなに助けてくれる人達がいるのか?東京…!

ただただ受け取って感謝する私に、「こういう時はお互い様だから。ね!」と声をかけてくれた女性もいました。

今書いて気づいたんですが、全員女性でした。

なんだか信じられない30分間で、母は誰が助けてくれたのか全然見えてなかったそうですが、私は全部覚えてます。
皆さん、助けていただいて本当にありがとうございました。


飴と一緒にもらったもの

その後、怒涛の援助フィーバーに続くようにして2人組の警察官が駆けつけてくれました。巡回と思い込んでましたが、もしかして誰か呼んでくださったんですかね。有難うございます…
警察官の方がすぐに救急車を要請してくれて、呼んでよかったのかと反省。

救急車を呼んで良いラインがわかるマニュアルが欲しい…。
(後から調べたところ、意識があって水も飲める場合は5-15分で回復する可能性が高く、その場合は救急車要請に慎重になっても間違いではないようでした)

肝心の母は救急車を待つ間に上体を起こせるようになり、顔色も良くなっていきました。

見通しが立ってもう大丈夫そうだということで、近くで心配してくれていた方々に御礼をお伝えすると、最後まであたたかな応答が。

救急車を呼んだ方が良いよと助言してくれた女性は、私と目を合わせて「大丈夫だからね!」と励ましてから行ってくれました。

そして最後の最後まで見守ってくれていたご婦人2人組のお一人から、飴を手渡されました。

「娘さんも糖分とってね!!」

こういう"力強い言葉"のもつ力はなんだろう。

心から湧いてくるジワ〜ッとした感情、感謝の念と…ここで受けた恩はいずれどこかへ還元しなければ、という気持ちになりました。

救急車到着からの流れ



要請した救急車は1時間後に到着しました。
同じ日に、同じように倒れた方が多かったからじゃないかと思います。


ワインバーのご主人は、お店準備があるだろうに最後まで気にかけて下さり、救急車が出発する前にも声をかけてくれました。
(西荻窪のオポッサムというお店です。親切にしていただき、本当にありがとうございました)

仕事終わりの夫も一緒に救急車に同乗し、その後は近くの病院に緊急搬送、そこで点滴と血液検査を受けて、静養して帰宅となりました。

1時間かけて来てくれたのはなんと世田谷区の救急隊員の方々で、本当に感じがよく、心ある対応をしてくださいました。

テキパキと母の血圧など測っていく救急隊員さんは格好よく、それをみて支援者としては思うところも…。

こういう時、心の支援者は無力よなぁと。
身体のことは自分にはどうにもできないし、身体が土台にないと何もできないんだよな、という自分の職の限界性も久々に味わえてよかったです。
それと同時に、やはりなにか本当に困ってしまった時に助けてくれる場所や人があることは必要で、自分の支援のあり方ついても考え直しました。

杉並区の親切な皆様、警察官と救急隊員の皆様、母を助けていただき本当にありがとうございました。

皆さん、熱中症に本当に気をつけて!



今回の件で、熱中症をなめたらアカンということがよく分かりました。
母は水分を摂っていたのですが足りておらず、おそらく塩分も足りていなかったのだろうし、例年の感覚で出歩くにはこの夏は暑すぎるのだと思います。

夏は熱中症に気をつけないとね〜と言いつつ、本当に自分が熱中症になったり、熱中症になった人を目の当たりにしなければ、その危機感を感じにくい部分がありませんか?

後から知ったのですが、東京で既に700人くらい亡くなっているそうですね。

今日も別の駅でお爺さんが倒れていて、警察官3人が氷を脇に入れる対応をしていました。
昨日のことがあったから、私にとってはもう他人事じゃない。
でも、近くで見ていた若い男の子は、連れの女の子とこんな会話をしていました。

「あれって熱中症?熱中症って倒れんの?」
「あー頭打ったりしたら大変らしいよね」
「で?倒れて?どうなんの?」
「え。わかんない」

わかんないよな…!わかる、わかるぞ若者よ。
自分が倒れたことなかったら、近くの人が倒れたことがなかったら、想像つかないよな。

私も、昨日、熱中症の一部始終を初めて間近で見るまで、わかんなかったのです。

熱中症になって、倒れて、その後どうなんの?
考えたことなかったのです。

私と母の場合は幸いにも倒れた場所や運がよかったけれども、こんなに親切な人達が居ない所で倒れる可能性も大いにあるわけですよね。
もしそういうケースだったら、母もどうなっていたか分かりません。


熱中症に対する認識の甘さ

昨日までの私の熱中症に対する認識は、恥ずかしながら以下の程度でした。 

いうて水分不足とヒートアップでしょう。
→水分とって冷やしたらええねやろ?と。

違うんです。
こういう軽さじゃ、なかったです。

歩けなくなるって、すごい不便。
帰れない。自分も母も、どこへも行けない。
誰かが運んでくれなければ道路に一生立ち尽くすことになるって、恐ろしくないですか?

誰か身内が倒れたり、自分が倒れたことがある方ならその怖さ、余裕でわかると思います。
だから、自分は倒れたことがなくてこの先もないと思ってる、そういう方ほど気をつけて欲しいなぁ…と思いました。

それと、ああいう"なす術なし"の心境をたまに味わっておくのは、大事ですね。
頼らねば生きていかれないことがわかります。

ある意味、まだ安全に倒れてくれた母に感謝。
これから自分にも周りにも気を配れます。
そして杉並区に住みたいと心から思いました。

改めて今回助けてくれた民度の高いみなさまに御礼申し上げ、全国の皆さん、熱中症に本当に気をつけてください!


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