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記憶転移と手塚治虫

本日は記憶転移のお話です。

元になった図書は、クレア・シルビアとウィリアム・ノバックの共著「記憶する心臓」です。その中に「記憶転移」の話が出てきます。

記憶転移(きおくてんい)とは、臓器移植に伴って提供者(ドナー)の記憶の一部が受給者(レシピエント)に移る現象のことです。

具体的なお話は、こういった実話です。

50代後半の米国人女性に起きた事象です。『クレアシルビアは重篤な「原発性肺高血圧症(PPH)」に罹り、1988年、米国コネティカット州のイエール大学付属ニューヘイヴン病院で心肺同時移植手術を受け、成功した。ドナーは、バイク事故で死亡したメイン州の18歳の少年だということだけが彼女に伝えられた。その数日後から、彼女は自分の嗜好・性格が手術前と違っていることに気がついた。苦手だったピーマンが好物に、またファーストフードが嫌いだったのにケンタッキーフライドチキンのチキンナゲットを好むようになった。歩き方が男の様に。また以前は静かな性格だったが、非常に活動的な性格に変わった。夢の中に出てきた少年のファーストネームを彼女は知っており、彼がドナーだと確信した。
ドナーの家族と接触することは移植コーディネーターから拒絶されたが、メ
イン州の新聞の中から、移植手術日と同じ日の死亡事故記事を手がかりに、
少年の家族と連絡を取ることに成功し、対面が実現した。家族が語るところ
によると、少年のファーストネームは彼女が夢で見たものと同じだった。彼
はピーマンとチキンナゲットを好み、また、高校に通うかたわら3つのアルバイトをかけもちするなど活発な性格だった。シルヴィアは1997年、自身の体験を出版した』

この本を読んで思い出したのは、大昔、手塚治虫先生の漫画「ブラックジャック」で、角膜を移植した若い女性が、その角膜に焼き付いた男性の映像を見ているうちにその男性に恋をしてしまう、というストーリー。「瞳の中の訪問者」というタイトルです。

有識者の方々は角膜に、移植前の人の記憶や見た映像が残るはずがない、と否定されています。しかし、内臓であれば、記憶転移の実例があるので、まんざらないとは言い切れないのでは、とも思います。

移植した心臓や肺に記憶があることは西洋医学では否定されていますが、東
洋医学では5臓に精神、魂、意志が宿ると考えられていて、決して突拍子も
ない話ではないと受け止められています。

ブラックジャックの「瞳の中の訪問者」ですが、ラストは衝撃的です。

角膜に映っていた男性は実はその女性を殺した殺人犯で、その男性は殺人を知られたと思って、移植された女性を再び殺害しようとするのですが、見破ったブラックジャックが寸前で助けるというストーリー。手塚治虫先生のストーリーテラーの見事な作品です。

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