見出し画像

せかい

ただ、生きてきただけなんだ
これまでどおり、それまでどおり
地に足をつける
大地にふれる
遠く昔から受け継がれてきたことを
疑いなく
続けてきただけなんだ
せかい、なんて言葉に縁がなく
あるのはわたしと
大地と
お日さまと
愛しい人たち
言うなら、それがわたしのせかい
けれど、外にもせかいがあったらしい
わたしのせかいが
ちっぽけなせかいが
わたしの生まれる前から続いてきて
そしてわたしが生まれたときに
父さん母さんから受け継いだせかいが
どんどんと遠くまで
どんどんと未来まで
繋がっていると思っていた
けれど、いつのまにか
わたしのせかいは
わたしのすぐ先で
ぷっつりと切れてしまっていたらしい
外のせかいはべつのせかいで
時間の流れがとても早いらしい
本物だったわたしのせかいは
小さくなって
居場所を失って
外の世界がどんどん、どんどんと
ここらにも入り込んできて
村の風景も変えてしまった
今は外のせかいが本物で
わたしのせかいが嘘みたいだ
子どもも孫も
もうわたしのせかいにはいない
わたしのせかいはわたしと共に
もうすぐ、おしまいになるらしい

2023.03.27

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?