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いのちの反抗

眠らなければいけない
身体を休めなければいけない
こんな小さな箱に閉じ込められて
こんなにも虚しい群衆
こんなにも切ない交流
こんなにも満たされない食事
こんなにも癒されない眠り
いますぐ
逃げ出したい祈り

食べなければいけない
読まなければいけない
書かなければいけない
愛は誓わなければいけない
死は悼まなければいけない
命は尊ばなければいけない
苦しみは耐えなければいけない

詠わなければいけない
自然を
愛を
自由を
いのちのよろこびを

いつからかわたしが決めつけた
誰もなにも言わないのに

あの子に嫌われてはいけない
嫌い返してはいけない
あの子が好きだから

わたしの弱さが
選択が
生き方が
縛られたくないと願う心が
誰かのご機嫌を損ねないだろうかと
不安に押し潰されそうで

どうして
わたしはわたしの選択を
考え方を
生き方を
自由を守るために
がむしゃらになって
そうした後で
どうして
誰かの評価を気にしてしまうのだろう

どうして
わたしはわたしの小さな檻を
自らの手で作り出してしまうのだろう

いのちは自由で
いま、わたしの髪に触れた落ち葉のように
気まぐれで
なのに運命というものが確かにあって
出逢いというものがあって

この蟻や
シロツメグサや
名前の知らない木々たちは知っているのに
いのちに身を委ねる術を
みずからのいのちだけではない
もっとひろい
もっとおおきい
空のような
宇宙のような
神様のような

わたしは三十八年生きても
いまだいのちを知らずに
それこそが生きづらさなのだと
夜中に家中の甘いお菓子を食べ漁るとき
ひとりでいることが不安になるとき
いのちはいつもひとりなのだと

いのちに反したとき
わたしの不自由なこころに
忍び寄る
わたしの隠された反抗
悪夢となり
過食となり
不安となり
病となり

けれど反抗しているもうひとりのわたしの方が
もっとつらいのかもしれない
かなしいのかもしれない
叱って
決めつけて
わたしという
檻の中に入れて
そうすれば
わたしの小さな反抗は
嵐の海のように
荒れ狂ういのちの闘いとなる

SOSの合図が止まないから
なにが不安なのか
なにが不満なのか
尋ねてもだんまりで
ただ、青い空の下
たったひとり
何も考えないときにだけ
答えを教えてくれる

また閉じ込められやしないかと
まだ怯えている
わたしのちいさないのち

2022.05.20

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