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1. 旅行の準備

回数は少ないけれど、最初に自分で手配して海外に旅行したのは2000年の9月。もう20年、目眩がする。インターネットはあっても、手配はまだまだアナログ。

飛行機のチケットを購入したのは、アリタリアのコールセンターだった。「イタリアに行くなら、アリタリアだ」と周囲のイタリア旅行経験者はほぼ一致。でも、飛行機がその日に飛ばないかもしれないんだ、と笑い、JALの客室乗務員は本当に素晴らしい、と言う。深いイタリア愛を見た。

TripAdvisorやBooking.comのようなポータルサイトはもちろんなかった。ホテルが自分のサイトすら持っていないのが当たり前。ホテルにメールで問い合わせられれば、進んでいる!と感じ、ほとんどが電話やFAX経由。国際電話なので初めて請求書をみるときは、まず深呼吸をした。たぶん、1分何百円。

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snail mail🐌

これは、イタリアブーツのヒール部分、プーリア州にあるホテルのパンフレット。ホームページがあったのに、画像サイズが大きすぎるため、待てども待てども表示されない。それをメールで伝えたら、お手紙🐌で届いた。メールに圧縮ファイル添付という方法もあったけれど。これが正解だったかも。インターネットに接続すると、ピーガガガという音がしていた時代。

一泊の値段はユーロでなく、まだリラ。切手と消印が今は逆に新鮮。

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ガイドブックなどで見つけたホテルに直接FAXで、予定日の空きと部屋の種類や値段を問い合わせて、返信を待つ。丁寧にFAXを送る前に電話を入れてくれるホテルもあった。いつも通りに「もしもし」と出ると、受話器の向こうでイタリア人らしき2人の男性の声。「どうするんだよ?」「お前出てくれよ!」といった感じで揉めている。今度は「Pronto?  Hello!」と言い直してみたが、この声は届かず、切れた。

旅行会社を通さずにホテルや観光地の情報を集める方法の一番は、やはりガイドブック。その頃もう個人自由旅行の味方『地球の歩き方』は存在していた。帰国した旅行者からの情報が載っているのが面白かった。「はみだしぴあ」みたいだ。知らないか。「地球の迷い方」と呼ばれたりもするが、『〜南イタリア編』の交通手段の情報はとても役立った。これとは全く逆の方向に徹底されたガイドブックがイタリア旅行協会公認の『Guida rapida d’Italia』。写真は一切ない。巻末にあるホテルやレストランのリストは、コンパクトに文字とマークだけ。各街の説明文に施設の説明はあるが、開館時間や値段はほぼ載っておらず、見どころや歴史、名物料理とワインなど、古びない書き方である。一番の魅力は、他のどれにも載っていない小さな街の解説と、道路地図。移動にどれくらいかかるか、何キロあるかを知るのにいい。GoogleMapはなく、レンタカーにカーナビもなかったから。モデルコースの紹介文は、文学的な香りすらする。この翻訳はとても大変だったと伝え聞いた。

その他には、雑誌、友人の情報、Niftyのテキスト通信サービス内のグループ「イタリア旅行」会議室。旅行帰りの方が最新情報を書き込まれ、それが最新の頼りになる情報だった。あの教会は修復で入れなくなっている、とか。交通手段の乏しい小さな街に行く場合、お目当てが閉まっているのを現地に到着してから知るのはダメージが大きい。テキスト通信とは、画像がないということ。すべて文章で説明されていた。私はROM(死語!)だったが、見ず知らずの人々と文章だけで、清々しく会話が進むのを見て、旅行への期待は高まっていった。

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冒頭の写真は、『Guida rapida d’Italia』から。他にも写真アップしたかったけれど失敗するので、これだけ。このガイドブックは絶版、大学によっては図書館に置いてあるようです。ぐぐりませ。

「はみだしぴあ」とは
以前は「ぴあ」という映画、演劇、コンサートなどのカルチャーイベントの雑誌がありました。ページの横の欄外に、編集部に送った映画などの感想などが小さな文字で掲載されていて、結構面白かった記憶。今のTwitterみたいな感じかもしれませんが、制限文字数内でまとめて、面白くなくてはいけないので、掲載された方には文才があるのではないかと思います。




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