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ガラスの天井、重ねたのは誰?

はじめに

 新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。今回のテーマはガラスの天井、重ねてるのは誰?と題しまして、起業環境におけるジェンダーギャップ、並びにジェンダーバイアスに触れながら、様々なバイアスの行方について考えていた事をnoteにしたいと思います。

このnoteを書くきっかけとなったのは下記のツイートに頂いたレスの中に興味深いものがあった為です。

このツイートに対して、頂いたご意見がこちらです。

“起業家では無いってことですよね。トンポリですよ。”
“女性起業家が男性に比べて、どれ位融資を受け難いか、ご存知で言ってますか?”
“女性の融資率が低いとされる母数は「起業したい女性」ですよね。”

 なるほど。主張したい事は判らなくもありません。企業の女性社長比率は 7.8%(帝国データバンク)によればタイトルの通り、個人事業主、非営利・公益法人などを除く約 120 万社を対象とした調査では、女性社長比率は7.8%しかないそうです。

しかし一方で、これらはジェンダーバイアスがあったからこの結果になったのだと信じている方が多くいらっしゃる事も分かっています。

さらには、ジェンダーバイアスによって女性は長く不遇の時代を送って来たのだから、法改正や女性支援でエンパワーメント(権限を与えること)されるべきだ、と言う主張をも耳にします。これに国会議員が少ない等と話を加えると、ジェンダーギャップ指数の話になっちゃいますね。

これに対して私の意見は下記noteにまとめましたよとお知らせしたのですが、どうも真意は伝わらなかったようです。

私の記事に下記のようなキャプションを付けられて紹介されてしまいました。

“日本男性のジェンダーバイアスが意図せず展開されています。”

 以上のようなやりとりをキッカケに生まれたガラスの天井、重ねてるのは誰?をお読み頂けましたら幸いです。

天丼か天重か何の話か判らない?最後まで読めばきっと分かります。笑

①トーンポリシングなの?

 こちらは明確に違います。女性起業家の優遇についてでも述べた通り、まず中小企業白書(2014年版P.192)に「関心なし」と分類され、明記されています。

さらに中小企業白書(2017年版P.94)では、起業希望者の定義も明確に添えられています(注:元のグラフに加筆しています)。男女比は明確です。

有業者の転職希望者のうち「自分で事業を起こしたい」又は、無業者のうち「自分で事業を起こしたい」と回答した者をいう。

これらの中小企業白書や帝国データバンクの資料を読めば女性は男性よりも起業に関心がない=だから女性起業家は男性起業家より少ないと読み解けますので私の見解だとするのもおこがましく当然の結論です。

これを斜め下の方向に掘り進んで、

いや違う、女性は身体的弱者であり出産も子育ても担わねばならない、また男性よりも給与が低く開業資金の貯蓄もままならないから起業に関心があっても関心がないと嘘をつかねばならないのだ。

と言う女性もいるでしょう。しかしその意見は起業希望者の統計結果には結びつかないと思います。何故ならここでは実際に起業できるかどうか?を質問してるのではなく、あくまであなたが起業したいと思うかどうか?という質問でしかないからです。例えば「10代まで戻って人生やり直したいですか?」という質問に対して、回答者は実際にそれが可能かどうかは考えませんよね?

また私の憶測が多少入りますが、単に希望を聞いてるだけ、起業したいと思うかどうか、だけの質問に今現在や将来の生活スタイルを考慮する人は多くないと思うんです。むしろ実際には無理だからこそ、やれるものなら起業したいですよ、と希望や願望を言いたいのではないかと。

今結婚してないけど、将来子沢山になって事業を継続出来ないかも?親が急病で介護が必要になるかも?だから私は起業したくないんですよねってアンケートに答える人はなかなかいらっしゃらないんじゃないでしょうか?

またグラフ中の79~97年に着目すると、それまでは起業希望者<起業家であった女性の割合が02~12年では逆転し、起業希望者>起業家とバランスが転換した事が分かります。すなわち、数十年前に比べてジェンダーバイアスやジェンダーギャップが意識される世情の中になったにも関わらず、本気で起業しようと行動する女性の割合よりも、出来れば起業してみたいなぁと思うに留まっている割合の方が大きいありさまが見て取れます。

こうして現実は7:3で男性の方が起業意欲が旺盛で、女性の方が起業意欲は低い、起業を目指す男性と目指さない女性との選択の差が、十数年経過して結果として表れている、との見解に至ったのです。事実の指摘を以ってトンポリと言われるのは甚だ心外です。

②女性起業家に対する手厚い支援

 先のnoteでも述べました通り、古くは女性起業家の廃業率が男性の2倍あるにも関わらず1,000万円の奨励金を予算したニュースもありましたし、内閣府男女共同参画局のホームページからは男女共同参画と銘打ちながらも女性向けのコンテンツがかなり手厚い事が見て取れます。

クイックアクセスも女性支援ばかり、令和2年度予算の概要も女性向けが大半、何よりも素晴らしいのは都道府県等の女性向け起業支援です。男性が男性オンリーでここまで予算を付けられて、手取り足取り起業相談を受けたなんて過去にありましたでしょうか?今起業を目指さずにいつ目指すの?って感じです。

これらの現状も踏まえ、私は起業したい女性に対して心よりエールを送りたいですし、この支援を以ってどんどん女性社長が増え、女性社員が増え、何なら旦那さんに専業主夫をして貰って高い給与を得たり、国会議員に立候補して欲しいと願っています。

一方で、

「女性の起業家が少ないのは社会が悪いせいだ!」

「女性の国会議員が少ないのは男のせい!男が何とかすべき!」

「私はやらないけど。」

と言う感じで社会や男性の責任に転化する光景が目に余れば、私も一言二言ツイートしたくもなりますよ。

③ジェンダーバイアス

 話題は少々戻りまして冒頭の頂いたレスポンスに触れますと、個別の事案ではあるものの、ホワイトペーパーでの調査結果と女性が抱くイメージに乖離がある事が分かります。

“女性起業家が男性に比べて、どれ位融資を受け難いか、ご存知で言ってますか?”
“女性の融資率が低いとされる母数は「起業したい女性」ですよね。”

 まず女性起業家は男性に比べて融資を受け難いとのイメージに対して、中小企業白書:小規模事業者のライフサイクル(2017年版P.149)をご覧ください。このコラムを読みますと、過去の事業を辞めてしまった理由がまとめられていますが、男性は全世代で資金繰り、資金調達が難しかったの回答が第一位となっています。女性はどうですか?

つまり、とある女性が融資を断られたと言う現実を元にすれば、当人にとって「女性だから融資が受けられなかった」と思われても仕方がありませんが、客観的な目で男女を比較したならば男性の方が難しいと感じていたと言うのが現実でしょう。

また、起業したい女性に対する融資率が低いと言う疑念に対しては、これは回答を探しようがありません。例えば男女が全く同じ事業計画書を作成し開業資金の融資を申し込んだケースで、男性には融資が下り、女性には下りなかったと言うならそれは明らかに女性差別であったでしょう。しかし過去にそんな比較実験があったとは思えません。

考えられるケースとしては、女性が持ち込む事業計画書が廃業率の高い事業だったり、計画書が杜撰だったり、指示された修正箇所を修正しなかったり、求められた資料を提出しなかったりーが考えられますが、これは男性も同じです。男性が何らかの理由で断られたとしても、女性同様にその理由は詳らかには分かりません。


女性が「私が女性だから」と感じたように、男性だって「私がハゲだから」「私がメタボでブサイクだから」「私の字が汚かったから」と感じたかもしれません。しかし見当違いの方向に思考を巡らせても融資が下りなかった現実は変わらないのです。

このように女性が女性であると言う理由で融資が受け難いと思い込む行為を一般的に(認知)バイアスと呼びます。前述の例でバイアスを取り除けば、融資が受け難いと感じているのは男性の方です。

また①で述べた通り7:3で起業意欲は男性が優位である事実の元には、起業を断念した男性もまた女性を上回ると考えるのが自然で、融資が通らかった男性と融資が通らなかった女性の絶対数を比較すれば前者の方が数が多いでしょう。しかしこれはバイアスの掛かった都合の良い私見に過ぎないと指摘されればそれまでです。

中小企業白書は男性や女性、どちらか一方に有利になるような母数や比率を恣意的に選びませんから、もし女性起業希望者の方が優位に男性よりも融資が受け難いと主張されるのであれば、中小企業白書よりもバイアスの掛かっていない資料を提示した上で主張すべきです。

④ガラスの天井、重ねたのは誰?

 実際には目に見えないものの、女性の活躍や昇進を妨げるような障壁をガラスの天井と呼び、私が生きてる中で最も大きく目にしたのはヒラリー・クリントンが米大統領選でドナルド・トランプに敗北した後の事でしょうか。

確かにこれまでガラスの天井だと思われるような事例は多々あり、今でもあるでしょうが、ここ数十年の動きを見ていると、女性の起業に対して起業が難しいというバイアス=ガラスの天井を二重にも三重にも重ねてしまった人々がいます。

それは女性自身です。

女性が「ガラスの天井がある!」「ジェンダーバイアスがあって男性よりも融資が通らいない!」と声高に叫び続けた事で、さらに後発の若い女性達が「そうか、ガラスの天井があって、女性が起業しようとしても融資が下りないんだ」と思い始めます。そして前述のように責任を他者に押し付けては、

「女性の起業家が少ないのは社会が悪いせいだ!」

「女性の国会議員が少ないのは男のせい!男が何とかすべき!」

「私はやらないけど。」

と言うポジションに居座る。

自らは起業せず、リーダーを目指さず、女性の起業はガラスの天井に阻まれている、融資が受けられない、と声高に叫び続ければ、後発の起業を目指す女性にさらにバイアスが掛かり、今度は起業を目指す前から諦めてしまう。悪循環に陥るのは当然でしょう。ガラスの天井を何重にも重ねて、より強固なものにしたのは誰でしたか?

⑤まとめ:ジェンダーバイアスをブチ破ろう

 私は以前は漠然と考えていただけでしたが、今はバイアスだと騒ぐやつが、一番バイアスの強化に加担していると明確に感じています。何か失敗したり思い通りにならない度に不平不満を言っても何にもならないし、何も変わらない事も経験しました。そんな事をしているよりも失敗した原因を探り、反省し、次のステップに踏み出す方が遥かに建設的だと身に染みたのです。

そして何より恐ろしかったのは、その不平不満をエコーチェンバー(閉鎖的空間内でのコミュニケーションを繰り返すことによって、特定の信念が増幅または強化されてしまう状況の比喩)のように拡大し続ければ、それがより大きなバイアスとなって自分自身の首を絞めてしまうとの想像に至った事です。

具体的に言えば、非モテが非モテである事を崇高だとしてSNSで拡大させたとしましょう。非モテはさらに内に籠もり、異性とのつきあいを避け、非モテ同士で傷を舐め合いながら、折角のチャンスをも断るのが崇高な行為だと互いに讃え合い、自慢し合う。

もし私がこの方向性で非モテを賛美し、ツイッター上で非モテアライアンスを結成し、同調圧力の基点となっていたならば、今の結婚も子宝に恵まれる事もなかったでしょう。

 それに気がついた私が日々蓄えた私論をまとめたのが非モテこそ結婚しろです。非モテが非モテバイアスから解き放たれる事を願い、私の恥部も堂々と公開しながら、非モテ男性に対して結婚を提案する内容です。多くのスキを頂けて、少なからず非モテによる非モテバイアス形成の悪循環化に楔(くさび)を打てたのではないかと自負しています。笑

 最後になりますが、これらを総括して、私は女性起業家や女性に対してこう提案したいのです。

 女性起業家は融資が受け難いと言うジェンダーバイアスをこれ以上広げるのは得策ではありません。これを言い続ければ言い続ける程、ガラスの天井は重なり、より厚く、強固になります。後発の女性起業家にさらなるバイアス、同調圧力を掛けかねません。

内閣府男女共同参画局のホームページを良く見てください。女性を応援するコンテンツばかりじゃありませんか?今こそ起業のチャンスです。バイアスに囚われる必要は何もありません。

以上だ。

#フェミニスト #フェミニズム #ジェンダー #起業

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