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劇団鹿殺し『雑踏音楽劇 ネオンキッズ』を観た話

2022年の初演を観てずっとメモ帳に残したままだった書きかけの感想です。書き上げられなくてごめんなさい、の気持ち。当時の自分の心に対して。
せっかくだからここにそのまま載せます。諸々間違っていたらすみません。


あらすじ

眠らない街、トーキョー。
繁華街にそびえ立つ 怪獣ビルの下、
家や学校、社会で居場所を失った若者が肩を寄せ合い生きている。
彼女たちは「ネオンキッズ」と呼ばれ、
自由気ままにダンスを踊り、
SNSを介して輪は広がっていった。
怪獣ビルの表と裏、
「表界隈」と「裏界隈」と
呼ばれる派閥の闘争、
「夜光虫」と名乗る大人たち、
いつしかネオンキッズたちは
犯罪に手を染めることになる。
「まるで水中にいるみたい。
なんで苦しいんだろう」

雑踏音楽劇 ネオンキッズ 公式サイトより

見た日:2022年3月20日(日)

会場のこと

初めての伊丹アイ・ホールでした。
小ぶりな劇場で、座席や舞台のレイアウトは使用者ごとにアレンジされる(座席が固定じゃない)タイプ。
数えたわけではないので派手に間違えている可能性は高いのですが、今回は100~200席規模の会場になっていたように思います。おかげで舞台と客席がかなり近く、演劇に対し大きな没入感を得られる贅沢な時間となりました。

このアイ・ホールはJR伊丹駅から出てすぐという非常に好立地な場所にありアクセスは抜群。劇場前の通りには路面店が立ち並んでいて覗いて回るのも楽しく、イオンモールもあったので昼公演と夜公演の間の3時間弱も退屈せずに過ごせました。

劇場横にあるキツネイロというお店のどら焼きを昼公演後のおやつに食べましたが、とってもおいしかったです。

ネオンキッズという作品について


鹿殺し初のミュージカルとのことでしたが、これまで観てきたストレート作品でもオリジナル楽曲が歌われる場面が多く、それらがいつも楽しかったので期待値は高かったです。

公演は【点滅Ver.】と【消灯Ver.】という2パターンがあり、
ラスト15分の流れが変化してそれぞれで別の結末を迎えるという演出になっていました。どちらも気になったので両方のチケットをとりました。

大学生でありながらも学生生活の全てを犠牲にし、週六でバイトをして生活費を稼ぐ美幸(ミユキ)。自分と母のために朝食を用意していた時に魔が差してしまい、包丁を握りしめてしまった美幸は、すがるような気持ちでSNSに助けを求めます。

全国大会まで行けるほどのテニスの実力者だったにも関わらずケガで続けられなくなり、自身の若さと可愛らしさのみを武器にして派遣コンパニオン業で生きていた短(ミジカ)。派遣先の正社員との不倫が周囲にばれて後ろ指を指され、自暴自棄になっていたところネオンキッズに出会います。

「あれはダメこれもダメ」とあらゆる行動を親に制限され、ついには初めてできた彼氏とも別れさせられてしまった透子(トーコ)。彼氏からの『別れよう』というメッセージをアプリごと消去し、耐えられなくなった様子で家を飛び出します。

そんな3人がネオンキッズと呼ばれるダンスグループに出会い、絆が生まれる様子が前半で描かれます。

ネオンキッズは、行き場を失い、生き方に迷う半端者たちが繁華街のビルの前で踊るようになって生まれたグループで、ビルの正面側に集まる『表』と裏側に集う『裏』の2つの勢力が存在しています。『表』は問題を抱えながらも必死で明るく楽しく踊ろうと努めている人たちで、『裏』は水商売をしていた女性たちの集まり。

拠点となるビルは1時間に1回恐竜が鳴くことから『恐竜ビル』と呼ばれており、そばにはメンバーがよく寝泊まりをする安ビジネスホテル『ヒーローズ』が建っています。

美幸の母親は旦那と別れたあと、男に貢ぐため美幸が必死に稼いだ奨学金にまで手を出したことがあるのですが、
点滅Ver.では、母に貢がせていた男がラマさんであったことに気付いた美幸が、ヒーローズの非常階段踊り場(柵がセットで表現されていたので、おそらく屋外にあるタイプの非常階段)でラマさんを追い詰めて包丁で刺し殺そうとします。
この時点でラマさんは売春斡旋業の主犯という濡れ衣を着せられているのですが、この騒動の中で黒幕が判明。美幸はラマさんを刺さずに済みますが、捕まりかけて悪あがきをした黒幕を刺すことになります。
騒動の最中駆け付けた仲間たちは美幸の手を引き逃がそうとしますが、美幸は自主をすると言って提案を断り、警察所へと向かう素振りを見せたのち、自害をします。

消灯Ver.だと黒幕が捕まり、登場人物たちが手を取り合い頑張って生きていくことを決意する終わり方をします。

消灯Ver.の方が分かり易く救いのある結末でしたが、どちらのバージョンであっても登場人物たちの抱える息苦しさ(生き苦しさ)がどろどろと足元に溜まっているのが見えるようで、良い意味で観ている間も観終わった後も心が抉られ続ける作品でした。

家庭環境や生い立ちの苦しさって、そんな簡単には明るい方向に切り替えられないと思うのです。
毒親も、若さと容姿しか構えられる武器が無いことも、親の愛を得られなかったことも、身体を売るしか生きる術がなかったことも、下手したら、下手をしなくても死ぬまで自分に付きまといます。そんなしんどさから人がたやすく解放されることなんて、絶対に容易いことじゃあない。もっともっと、本当はえげつないんだろうなと思います。

物語の冒頭で
「殺しちゃうかも、お母さんか自分を」
とSNSに書き込んだ美幸が最後に実際に殺そうとしたのは、そのどちらでもない、「お母さんを自分から奪った男」でした。それがとても苦しかった。


舞台には、演者同士がアドリブで遊び合う時間や客席の反応を楽しむ時間など、テレビドラマや映画にはできない『生ならでは』のおふざけタイムがよく見られますが、ネオンキッズでもそんなシーンがちゃんとありました。

脚本演出の丸尾さん演じるラマさんがネオンキッズたちに「何か相談事はないか」と持ち掛け、登場人物たち…もとい役者さんたちが挙手をして、ちょっとした悩みをそこで打ち明けます。私が観た2回ともシルク姉さんが当たっていて、無駄遣いをしちゃう悩みと、セブンイレブンの略し方で悩んでいる話をしていてとってもかわいかったです。
コミカルなシーンは多いですが土台の部分が重く苦しい物語なので、わずかな時間でも役を離れた役者さんたちの笑顔がいっぱい見られてうれしかったです。仲の良い座組だったんだろうなぁ。
個人的にはグダグダにもならず丁度いいところで舞台の本筋に戻っているように感じられて、そういったメリハリがちゃんとついているところもいいなぁと思いました。


自分のメモはここまでで止まっていました。ここから先何を書こうとしていたのか…。反省ですね。

読んでくれた方がいたらありがとう。久々のnoteでした。ではまた。

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