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絶唱サロメを観てきた話

 人に読んでもらう為の文章にとらわれすぎると筆が進まないので、全部を日記というカテゴリーにしてしまえばいいんだなって気が付いた。日記、これは日記。推敲もしない一発書きで、ただ自由に、記録していく私の観劇日記。

 池田純矢さん脚本・演出の演劇、絶唱サロメを観てきました。チケットを取った理由は、鈴木勝吾さんの歌が聴きたかったから。あと、池田さんの脚本演出が気になっていたのと、2.5次元じゃなかったから。確かそういったことが頭の中にあったからだったと思います。

 2.5次元のこととても好きなんだけど、昔一瞬だけお話したことある方に「あなた(2.5次元を観る私のこと)と、わたし(その人)は興味の範囲が違うけれど、お話しできてよかった!」と言われたことが今もずっとずっと引っかかっているんです。なんでカテゴライズされてしまったのかなー?って。でも確かに偏っていたのは事実だし、大好きと思えるものを単純に増やしたいので、とにかくいろいろ観るようにしている。

 話をサロメに戻しましょう。
ネタばれの配慮は一切していません、未観劇で、DVDを待っている状態でこのnoteにたどり着いた稀な方がいらしたら、ご注意ください。

 原作のサロメのことを何も知らないで行ったんだけども、『絶サロ』はそんな不勉強者にも優しい作りで、冒頭に主人公のヨカナーンがしっかりと物語を解説してくださいました(サロメどころか、『絶サロ』のあらすじもちゃあんと見ずに行ったので、本当に私は失礼な奴だった)。生首にキスをするっていうのは漫画か何かで読んでいたので知っていました。

 絶唱というだけあって、よく歌う!歌う!!歌う!!!
絶唱なのに歌わなかった!!!などという批判は絶対に書かせるものかというくらい、歌う。そんな最初から最後まで歌ってたわけではないのですが、ちょろっと歌うとか、台詞を歌うんじゃなくて、しっかりと歌を唄う。

 何を言っているのかわからないとは思うんだけど、鈴木さんが歌うとクリムトの絵のような金色の世界が眼前に広がるんです。本当なんです。そういう声だなと思う。とかく、声で空気を変える人。大好きな声。

 鈴木さんが観劇の動機だったので鈴木さんの話をもっと記録しておくと、サロメの義理の父親の役でした。母親とサロメに血のつながりがあって、母親の再婚相手が、鈴木氏。鈴木さん演じるヘロデ王が、兄の王(サロメの父)を殺して、サロメの母と結婚して、王になったという。
 ヘロデ王が出てきて数分後にサロメが舞台上に現れるのですが、その時一言ヘロデ王が台詞を発した瞬間に
「(あっこの男、義理の娘に邪な感情しか持ってないんだな)」
って解ってしまう見事な、ぞっとする声の演技でした。うわ気持ち悪っ!!!男として父親として最悪!!!演技としては最高!!!!みたいな感覚ですね。
 誉め言葉として『気持ち悪い』を使うんですけど、本当に気持ち悪い!!!サロメをオンナとして、愛玩対象として、所有物としてしか見てない、私利私欲だけの人間の姿をちゃんと出すの。なにをどう稽古して、何を重ねたら、あぁいう演技があの若さでできるんだろうなと思います。

 途中で芋洗坂係長さんがアドリブでシンケンジャーの歌を唄い始めて、ヘロデ王が笑いこらえて係長さんのお腹ポンポン叩いてたのがとってもかわいかったです。

 サロメは、可愛くて、まっすぐで、でも全然ピュアじゃなくて、最高でした。自分が美しいこと、男が自分に惹かれることをちゃんとわかっているし、それを有効活用できる女性。無邪気さの中に、邪気をもった人。そんな感じがしました。歌唱力は、抜群。というかこの舞台、歌った人全員歌唱力が抜群(そりゃそう)。みんな群を抜いちゃってるので、全員それぞれが優勝していました。

 サロメがヨカナーンに惹かれた理由はなんとなくわかったのですが、ヨカナーンがサロメに惹かれた理由は、一度見ただけの私にはわかりませんでした。もともと夢で出会っていたというのは理解できたんだけど。これだ!っていうのがわからない。ひとりぼっちだったところに、力強く踏み入れてきてくれたから?

 池田さんは、『身軽さ』という概念が服を着るとこうなるんだなっていう方でした。別作品の映像では演技拝見していたのですが、生で見るとその運動神経にさらに圧倒されます。異質な存在として程よく世界観を壊す役割なのも良かったし、あの登場人物たちのなかで言えば一番、観客に近いところにいたのも良かったです。決してこちら側ではないけれど、メタなこともしてくれる、そういう役。映像にはあまりいないような、舞台ならではの役どころ。

 ヨカナーンは、主役だった。主役の存在感が出せる方だった。こちらも生で拝見するのは初めてのお方だったんだけど、シリアスもコミカルもこなせるし、歌も(これもそりゃそうっていう感じなのですが)間違いがない。納谷君がこの日劇場入りに遅刻した話を芋洗坂さんに暴露されていたんだけど、ヨカナーンの松岡さんが
「昨日俺が飲ませすぎたからだ」
ってひたすらフォローしていたらしくて、めちゃめちゃ良い方だなってあったかい気持ちになりました。固まっていた納谷君も可愛かった(笑)

 演技力も歌唱力も存在感も確かな人たちが、しっかり足並み揃えて作り上げたという感じのする舞台でした。全員素敵だったなぁ。

 読んでくださってありがとう。ではまた!

観た日:2019年10月27日(日)ソワレ公演

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