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日本のドラマのスポッティングという仕事

字幕翻訳家を志した中学生のころから、せっかくなら勉強にもなる海外の作品を観ようと思い、できるだけ英語の作品ばかり観ていました。

そして大人になるつれてどんどん離れてしまったのが邦ドラマ。

すっかり離れてしまうと、やはり「慣れ」というのがあるらしく、日本語の演技がどうにもこそばゆくて見ていられなくなってしまった。

ストーリーに引き込まれて、演技についてなんて全く気にならずに観られる作品もあるので、全部が全部そうではない、けれど…どうしても言葉遣いや動きがわざとらしく感じられてしまって、共感性羞恥で目をそらしてしまう。

じゃあ洋画はそれだけ素晴らしいんかと言うと、きっと下手な演技も、その文化圏をよく知る人から見たら「そんな動きしねーよ!」と思うものもたくさんあるんだろう。でも、やっぱり「そういうもの」として観ることに慣れているから、こそばゆいというよりは、違和感を笑い飛ばすことができる。

翻訳にだってコストがかかるし、他言語の国に輸出される作品という時点で多少のふるいにかけられるので、なかなか駄作を観る機会がないというのも1つあるのかも。

スポッティングのお仕事

そんな「目指せ翻訳家」の位置にいる私ですが、日本のドラマをハコ切りと、スポッティングするお仕事をやらせてもらっています。

※ハコ切り…セリフのどこからどこまでを1つの字幕のかたまりとするか決めること
※スポッティング…字幕のハコが現れるタイミングと消えるタイミングをソフト上で決めること

私がハコ切り&スポッティングをした後に、海外の日本語→英語や日本語→その他の言語の字幕翻訳家さんが、ハコにそれぞれ翻訳を入れていくわけです。

字幕が出るタイミングには色々とルールがあって、セリフが始まる2F前(1F=約0.016秒)だったり、制作会社によっても違うそうです。
映像のカットが変わるところにセリフがかかっていたら、その変わる瞬間に字幕の出る・消える瞬間が近すぎると、映像も変わるし字幕も動くしで、目がチカチカするので、カット変わりから数Fずらしてみたり、など。

英語だと、SHやWHなどの「スー」「シュー」「フワ…」といった感じの、パキッとしない音で始まるセリフは、1Fずつ映像を動かしながら、音の始まりを探る作業があります。SheとかWhatとか頻出なので、けっこう大変ですね。

字幕翻訳の学校でこれを勉強したとき、気が遠くなる作業で絶望しました。少しずつは早くなってきたものの…。

日本語のスポッティングをしていて気づいたこと

日本語は50音がハッキリしているから、そんな苦労も少ないかしらんと思いきや、やっぱりサ行・ハ行はゆっくり聞き取らないと始まりは難しい。

そして、久しぶりに日本ドラマをじっくり観て気づいたのは、セリフの前にちょっと笑ったり息を吐くようなモーションをする役者さんが多いなぁということ。

YouTubeやインタビューを見ていてもたまに気になる部分なので、私が気にするポイントなだけなのかもしれないが…。こう、自信なさげにちょっと笑ってみたり、語尾をあいまいにしてみたり、笑った勢いで話し出してみたりするような、そんな印象。

あと、相槌も多い。話の進行に関係のない相槌(明らかに話に反応しているだけと分かる「はい」とか「へぇ~」とか)はあえて字幕にしないので、その部分はスポッティングしないんだけれど、メインのセリフと音が被るので、聞き取りにより集中しないと難しくなる。

ドラマの台本を読んだことがないので、そういう表記ってどうなっているんだろう、と気になった。相槌は役者さんの匙加減で入れているのかな?より自然になるように。

日英じゃ相槌文化も違うし、自然な演技や演出を目指せば、これだけ違いも出るよなぁと思った。

好きな日本ドラマ

これを機に、学びにもなるし、邦ドラマも観直そうと思った。今気になっているのは「大豆田とわ子と三人の元夫」。あと、今更すぎる「逃げ恥」。「コウノドリ」も漫画を読了したので観たい。

これまでに好きだった日本のドラマは

Dr.コトー診療所
ガリレオ
篤姫
ライアーゲーム

この辺なんですけど、実家でお母さんと観てた思い出。


翻訳の学校の先生に、映画の日英翻訳がやりたいからって英語の映画ばっかり観てても強くなれないよと言われた。

強くなるためにも、楽しみとしても、邦ドラマを見直そうと思います。

スポッティングも修行します。

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