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世界美異識紀行 パリのアウトサイダー・アート Gilbert Peyre

都築響一さんのメルマガ
Roadsiders Weeklyで取材記事を読んでから
パリに来たら行くしかない!と思っていた
モンマルトル、サクレ・クール寺院のすぐそば、
アウトサイダーアートに覚えありの美術館
La Helle Saint Pierreに行ってきたよ。
ここではかつて、アールブリュット・ジャポネ展が開催され、大変な動員を記録したという。
日本では浦和の埼玉県近代美術館でやってたんだよ。観に行った。あれはあれで凄かった。

http://www.art-brut.jp/

そんなラディカルな美術館、現在はフランス人
アーティスト Gilbert Peyre
ジルベール・ペール
の大規模な展示が開催されていて、
全く素晴らしいのなんのって3回行ったくらい
至福の経験だった。
こんなのを公立美術館でやっちゃうなんて!
かぞえで20時間かけてパリへ来た甲斐があったよ。
全ての満ち足りない病気の人たちへ
このレポートを贈ります。

場所は超有名観光地サクレ・クール寺院
正面からみて右側!
すがすがしく晴れ渡る冬のパリ
のどかな風景、でもあちらこちらでいかつい兵士がマシンガンを実装して警備している。

いきなりのお出迎え

機械たちは、人間よりよほど人間らしく、とても優しく愛に満ちているように見える。それでいて命を持たない哀しみが漂う。

マダム!と呼び止められて手招きされ、何か変なことしたかな?と行ってみたら
学芸員のムッシュが観客を一カ所に集め
機械たちをひとつひとつ動作させ、ていねいに説明をしてくれる。(フランス語が理解できれば本当に良いんだけど・・)
なんとこの子たちは全て動き、
鳴いたり唄ったりするのだ。
それは悪夢的で、官能に溢れ、体が溶けそうな程
ロマンティックだった。
ぎこちない動き、だからこそ人間くさく、
意志を持っているように見えるのはなぜだろう。
巷にはびこる、なめらかなCGには
嫌悪しか感じないのに。
親しみが湧き上がる。昔、自分以外には見えなかった、頭の中の古い友達に会っているようだ。

これがほんとうのパーティ

死んだら、こういう生き物が
お疲れ様!って迎えに来て、背中に乗って別の世界へ連れて行ってくれる気がするね。
それなら死だって悪くない。

一通り説明が終わると、2階へ誘導された。
別のムッシュが待ちかまえている。
そこでは趣を少々変えた、ドリーミーなスペクタクルが展開されていた。

瞼が開閉する絵画

肉体もないのに繰り広げられるツイスト・ゴーゴー

決められた道を歩き続けることしかできない獣

頭と胴体を分離させながら、おしっこで火を消す熊

まだまだびっくりするようなことが次々に起こる。
お客さんたちはふんふん頷きながら真剣に観ている。この効率の悪さこそ、文化の成熟なのかもしれない・・かなわない。

ミュージアムショップも大充実してる。

本と、フランスアウトサイダー建築巡礼マップ(1ユーロ!)を買った。どちらもフランス語版のみ。

ジルベールおじさんは1947年、
南プロヴァンス生まれ。
現在はパリ郊外にアトリエを構え創作活動を行っている。作品を創りはじめたのは30歳頃からで、
美術や機械の教育を受けたわけではないそうだ。
ただ者ではない。ギラッ

フランス芸術界でどれほどの人なのか?
ここで展覧会が行われているということは、メインストリームではないのは間違いない。
凄いけどアレな人なのか。
でも芸術家は作品のなかで人と対話すればよい。
私は何を用いて人と向き合えばよいのか、まだ何も見つかっていないけれど。
愛によって、かりそめの命を与えられた
夢見る異形たちは今日もモンマルトルで観客たちを悦ばせている。

La Helle Saint Pierre

http://www.hallesaintpierre.org/

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