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社会人デビュー

オーストラリアから帰国して3カ月、僕は東京池袋の小さな会社に就職をした。従業員は10名程度だったと思う。

その会社は海外研修、インターンシップ、ビザの手続き、留学等の斡旋を行うエージェントだ。海外で働きたい、留学したい、と言った人達の相談を連日受けていた。まだグローバル化という言葉が流行る前の話だ。

まあ、簡単に言うと、どうしようもない会社だった。

社長はいつも会社にいないし、上司にあたる人達からは、この会社をどうしたいのか、何を目指すのか、そういった話は一切出てこなかった。後で分かった事だが、彼らはそれぞれ自分の個人ビジネスをやっていて、元々、この仕事に対して情熱は無かったそうだ。そんな環境なので、僕が入社してからすぐに管理者(上司)VS社員の対立が起きて、従業員の半数以上が辞めてしまった。僕も彼らから退職の誘いがあったけど断った。

僕はこの会社はさほど嫌いではなかった。

僕は上司から何かを学んだ事も、彼らを凄いと思った記憶もない、けれど、唯一良かったのは、僕にあまり干渉して来ない事だ。最低限の数字を挙げていれば何をしてもOKで、自分がやりたい事ができる風通しの良さがあった。彼らのやる気の無さが、逆に僕にとっては追い風だった。といっても、人によっては耐えがたい職場環境であることは間違いない(#^ω^)

前にも書いたけれど、僕は基本的に誰かに指示をされたり、お世辞を言ったり、言われたりするのが嫌いだ。ここでは、そのような事を求められなかったので、僕はこの仕事を続けられたんだと思う。僕にとって「環境」というのはとても大事だ。これは僕に限った話じゃないと思うけど。

仕事のやりがいはあった。

大きい会社になると、自分が今何をしていて、それが会社にどのような貢献をしているのか分かりにくい。それが小さい会社になると、自分のパフォーマンスが、会社全体にモロに影響するので、自分の存在意義みたいなものを強く感じる。

自分が発案したプランが商品となり、売上の軸にまで育った。HPを作る際の基礎的なhtmlプログラミング、photoshopやIllustratorといったソフトの基本操作を覚え、自分一人で業務を回せるようになった。これらの経験が自信になり、俺はやれる、という自己肯定感を高めていった。まあ、だいぶ調子に乗ってたな( ͡° ͜ʖ ͡°)

あっという間に2年が過ぎた。

通勤ラッシュを避け、毎日昼の12時に出勤し、21時に退勤する。そして、当時付き合っていた彼女と、東武東上線のホームで待ち合わせをして、一緒に地元へ帰る。そんな生活が2年ほど続いた。

ちょうど僕はこの頃、転職を考えていた。

この会社で自分がやれる事はすべてやった気がした。上司らも相変わらずなので、ここにいても未来は無いのは誰でもわかる。

そんな時、大きなニュースが入ってきた。
この会社が買収されることになったのだ。

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