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映画『Dr.コトー診療所』を観て

先日、映画『Dr.コトー診療所』を観て来た。

映画を観た感想は、思っていたのと違うなと言う明確なものではなく、何とも言えないものだった。

テレビシリーズの終了から16年経った、現在の志木那島のDr.コトー診療所の話だったのだが、 スペシャル版としてテレビドラマでも良かったのではないか、というのが正直な感想だった。

もう少し、テレビシリーズの時のような空気感を映画にも持って行っていれば、また違ったと思うのだが、少しストーリーも雰囲気も全体的に重かった。

そうは言っても、私が一番嬉しかった出来事は、原剛洋役の富岡涼くんが、この作品に限って役者復帰を果たしたことだった。

映画を観た後に知ったことだったが、富岡くんはこの映画の出演を決めてから15kgの減量に励んだそうで、この作品への意欲というものがその減量に現れていると感じた。

幼い頃からぽちゃぽちゃとした体型だったから、もしかしたら生まれつき太りやすい体質だったのかもしれないが、16年経って30歳目前になった彼が、シュッとして研ぎ澄まされ、洗練された男に変身していたら、何だかそれはそれで現実味がないような気がして、私としてはリアリティを考えると、今現在の富岡くんの方がちょうどいい塩梅だったような気がしている。

ストーリーとしても、幼い頃の夢をそのまま大人になって実現したという、お決まりのパターンではなく、紆余曲折を経て、人生いろいろなことが起こった中で、また本来の自分の思いに気がつき、そこに向かって新たに歩み始めるという、 そこもリアリティがあって良かった。

この剛洋のストーリーが、この映画の中にきちんと入り込んでいたことで、テレビドラマではなく映画化する意義はあったように思えた。

何と言うか、娯楽的な要素が強い作品になった印象だが、とにかく、現在も現役で活躍中の役者が、そのまま時を経てこの作品に集結出来たということの意味を考えると、それだけでも凄いことであると、映画の公開前から抱いていた思いはそのまま変わることはなかった。

そして、Dr.コトーともう一人の主役である剛洋役を演じた富岡涼くんの、この作品と役への思いというものが、第一線を退いているにも関わらず出演を決めたことで、この作品がどれだけ彼の人生に影響を与えているのか、大切なものであるのかということも、観客に改めて伝わったのではないだろうか。

自分が思っていたストーリーとは違った内容ではあったが、富岡涼くんのこの作品に限っての役者業への復帰は、しつこいようだがやはり私にとって一番の見どころとなった。

これが一応のファイナルということではあるが、その後、コトー先生が還暦を迎え、やがて正式に医師となった剛洋が島に帰って来て、診療所の医師になるところまで観ることが出来たら、どんなにかいいのになと思うが、そこまで望んでは贅沢というものなのだろうか。

スクリーンを離れても剛洋が、富岡涼くんが幸せでありますようにと、私は中島みゆきの歌う主題歌『銀の龍の背に乗って』をバックに流れるエンドロールに映し出された彼の名前を見て、心から願ったのだった。

2022年12月21日・書き下ろし。

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