絵画歴史のイノベーション その4コンセプトアートの誕生
これまで絵画の歴史におけるイノベーションとして、印象派、キュビズム(1907年)、抽象絵画(1910年)と見てきましたが、いよいよ作家が作品自体をつくらない時代が到来します。
既製品がアート作品?
はい、これはなんでしょうか?
男性諸君なら分かるかと思いますが、これは男性用トイレを上から見た写真です。
これはマルセル・デュシャンが1917年に発表した「泉」という作品で、レディメイド(既製品)と呼ばれる作品で、男性用小便器を横に対して、デュシャンが偽名「R.MUTT 1917」と署名したものに、「Fountain(泉)」とタイトルを付けたものです。
ちょっとウィキペディアの解説も参考にしてみましょう。
ウィキペディアの解説を読むと、ほうほうと思うところもあるかと思いますが、出展当初は展示を許可されませんでした(笑)当たり前と言えば当たり前の対応ですね。
しかし、今から見れば、この作品が現代アートの出発点と呼ばれるぐらいに価値があるものとなっています。
コンセプトアートの誕生
私はこれはコンセプトアートなんだと思います。一般的に使われているコンセプトアートという言葉ではないのですが、コンセプト(概念)自体を作品にしているのだと思います。(一般的には「コンセプチュアル・アート」と呼ばれていますが、なぜかしっくりときません。)
要は、R.MUTTを記載されたトイレ自体は作品のようで作品ではなく、既製品を作品に応用するという考え(コンセプト)自体が作品なんだと思います。
目の前にある男性用トイレはあくまでもそのコンセプトを形にしたものであって、作品であるようでないということですね。ややこしいですね(笑)
これも私の独自の解釈なので受け流してもらっていいですが。
しかし、これ以降、コンセプト(考え)自体が作品で、展示会で展示されているモノはこのコンセプトを形にしただけというものが結構出てきます。要は、目に見えるモノ(一般的な作品)が重要ということではなく、それをつくろうと思った考え方(コンセプト)が大切ということです。
現代アート(ファインアート)の難しさはここにあると思います。もちろん、絵画(展示品)だけを見て、素晴らしいというものもたくさんあるのですが、絵画(展示品)だけも見てもよく分からないものも多々あります。
また、現代アート(ファインアート)においては鑑賞者側も観るためのトレーニングが必要と言われますが、それは目の前にある絵画(展示品)だけ見ていても分からず、これまでの芸術の歴史や作者の考え方など、展示品が生まれたコンセプトを理解しなければならないということだと思います。
これはデュシャンの考えでもあったそうですが、「鑑賞者自体が芸術をつくる」ということにもなります。
デュシャンの生い立ち
作品を理解するには作家の人生を理解しておく必要がありますので、簡単にマルセル・デュシャンの生い立ちを振りかえっておきます。
デュシャンは1887年フランスに生まれ、初めは油絵画家として活動します。しかし、1910年頃に油をやめて、今回のレディメイド(既製品)という芸術表現形式を提唱します。デュシャンは1968年に亡くなりますが、今回の泉以外の作品はあまり残っていません。
通称大ガラスと呼ばれる作品もありますが、未完成のままのようです。
絵画はキュビズムですね。ピカソが1907年に「アビニヨンの娘たち」を発表した時期で、ちょうど作家たちがキュビズムで描いてみようとしていた時期なんだと思います。女性が階段を降り姿を描いたそうですが、これはこれでなかなか良いですね。
デュシャンの特徴で言えば、アメリカで活動したところでしょうか。1913年に作品「階段を降りる裸体No.2」をニューヨークの展示会に出展して、注目されるようになります。その上での、偽名を使った「泉」の発表となるわけです。それ以後は目立った芸術活動はしていないようです。「泉」のインパクトが大きすぎたのでしょうか・・・
次は、「絵画歴史のイノベーション その5アクション・ペインティングの誕生」を紹介します。
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