絵画歴史のイノベーション その8スーパーフラット(村上隆)の誕生
村上隆さんはご存じでしょうか。こんな感じの髭ズラ、ちょんまげの方です(笑)
初期の作品はフィギュアが多かったように思うのですが、当初はオタクなアーティストと思っていました。ただ、村上隆さんは東京藝術大学を卒業し、さらに東京藝大で博士号まで取得したちゃんとしたアーティストなんです。今回紹介するような作品だけではなく、過去は作品らしい作品を作成して発表していたと思います。ちなみに、弟の村上裕二さんは最近ゴジラをモチーフにした日本絵画を作成してブレイクしています。
村上隆はオタク?
村上隆さんの作品を観てみましょう。
なんかフィギュアがいやらしい感じがしますね(笑)だから、当初何かオタクなアーティストと思うのも無理ないでしょ・・・
しかし、現代アートを理解するには観る側の知見も不可欠と言われます。当初の自分はそのような知見がなかったのだと、今の自分からみてようやく理解できました。とはいえ、現代アート(ファインアート)を理解するのは本当に大変で、当然ながら今でも何が言いたいのかが分からないアートもたくさん目にします(笑)
16億円で落札されたフィギュア
村上隆が注目されるきっかけになったのは、村上隆さんの作品「マイ・ロンサム・カウボーイ」がニューヨークのサザビーズのオークション(2008年)で16億円で落札されたことでしょうか。
これがなぜ16億円もの価格で落札されたのかがみなさん分かります?
村上隆のすごさ
村上隆さんがすごいのは本人はアニメ好きだったのはそうなのですが、どのような作品であれば売れるのか(評価されるのか)から考えて、アーティスト活動をしているところだと思います。通常は、アーティストは内なる声から突き動かされ、作品を作るのでいわゆるプロダクトアウト型なのですが、村上隆さんがマーケットイン(マーケティング)型のアーティストなのです。
そこで、『スーパーフラット』なる概念を生み出します。スーパーフラットについては、以下を参考にしてください。
さかのぼると、浮世絵もスーパーフラットの概念の1つで、浮世絵が印象派(ヨーロッパ絵画)に大きな影響を与えたことはこれまでに述べ来た通り(参考「絵画歴史のイノベーション その1印象派の誕生」です。
日本のオタク文化(アニメ)をスーパーフラットというキーワードで読み直し、浮世絵から続く、日本絵画のイノベーションを海外に打ち出したということになります。このように考えると村上隆さんはすごいですね。さすが東京藝大の博士号まで取った人は違います。
つまり、サザビーズで落札されたフィギュアはその模型が評価されたのではなく、スーパーフラットという概念が評価されたわけです。なんせ、第二次世界大戦敗戦後における日本文化全体の構造にまで関係するようですから(笑)
さらなる村上隆のすごさ
さらに村上隆さんがすごいのは、アートを組織化(会社)したことです。通常、アーティストは個人活動であり、アーティストがアトリエに籠って、作品作りをしていきます。しかし、村上隆さんは1996年にヒロポンファクトリー(現在はカイカイキキ)をいう組織をつくり、若手アーティストを正社員やアルバイトとして雇用し、村上さんの作品作りを手伝わせます。
以前、テレビでその模様を放送されていましたが、本当に作品をつくる工場のようなものでした。
また、GEISAI(ゲイサイ)と呼ばれる若手アーティスト向けのアートイベントも主催されており、日本のアート界に大きな貢献をされています。
組織だった動きで作成された作品ですごいなと思ったのは、東日本大震災の鎮魂のために作成された「五百羅漢図(公式サイトはこちらです。)」です。
これが紹介されたときは、なぜか、観に行かないといけないという気持ちになり、わざわざ東京に行ったことを思い出します。いやー、本当に圧巻でした。。。作品自体は確かシルクスクリーン印刷で作成されたものなので、技法などは大したものではないのですが、コンセプトとスケール感がとにかくすごかったのです。
その後もベルサイユ宮殿で作品を展示したり、ルイ・ヴィトンのようなハイブランドやKYNEのような若手アーティストなどとコラボレーションをしたり、積極的にアーティスト活動をしています。やっぱり、村上隆さんは単なるオタクではなく、日本を代表するアーティストの一人だと思います。
次回は、自分が好きなゲルハルト・リヒターを取り上げました。こちらです。(笑)
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