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後記「Japan IP Law Summit」

2022年10月に椿山荘で行われたイベント「Japan IP Law Summit」に登壇した。
このイベントは、今の僕の考えに大きな影響を与えたトリガイベントの1つなので、少し時間が経ってしまったが、当時の記憶を綴ろうと思う。

招待

2021年の秋頃だったと思う。
1通の招待状が届いた。
ピクシーダストテクノロジーズの村上さん(COO)宛に1通の招待状が届いた。
Japan IP Law Summit」の登壇依頼だった。

おそらく、CEOの落合さんの知名度と、同年に受賞したIP BASE AWARDによる会社のブランド向上が寄与したんだと思う。
聞いたことのないイベントだったし、オーディエンスが「大企業の知財部長」とあったので、スタートアップには場違いかもしれない、と思った。

村上さんからは再三にわたって「もっと表に出よう」と背中を押されていたが、当時はなぜだったか「あまり目立たないようにしよう」と思っていて、そういった僅かなオファーですらやんわりとお断りしていた。

とはいえ、会社の知名度向上(コーポレートブランディング)への貢献もスタートアップの知財家の仕事だと思い、恐る恐る引き受けた。

2022年4月(発明の日だった気がする)に予定されていたイベントは、コロナウイルスの自粛の機運も手伝って、半年も延期された。

まさにサミット

参加者は錚々たる豪華メンバーだ。

例えば、僕が登壇したパネルディスカッション。

  • 荒木 充さん(株式会社ブリジストン)

  • 川名 弘志さん(KDDI株式会社)

  • 山本 飛翔さん(弁護士・ストックマーク株式会社)

他の登壇者もとにかく豪華。
名前の列挙は公式に任せるが、1人だけ白黒写真の無名な若造が混じっている違和感が見て取れる。

この登壇者の他に、登壇者と同等クラスの大企業の知財責任者がオーディエンスにいる。

なんとも場違いなところに来てしまった。

パネルディスカッション「戦略的知財活動 の本質:新規事業開発へと展開させる方法」

僕が登壇したパネルディスカッションのテーマは「戦略的知財活動 の本質:新規事業開発へと展開させる方法」だ。

知財戦略なるものは持ち合わせているが、「戦略的知財活動」という感覚で日々の業務を咀嚼する余裕はなく、自分で作った知財戦略というボールを、汗かきべそかき自分で拾う毎日だ。

これを「戦略的知財活動」と呼んでいいかどうかわからなかったが、とにかくスタートアップの知財の実態を可能な限り大企業の方に知って貰おう、というモチベーションだった。

記憶があやふやなので、他の登壇者の話は割愛するが、「大企業がスタートアップとオープンイノベーションを成功させるために必要なことは?」という趣旨の質問(だったと記憶している)に対して、僕は以下の2点を答えた。

  1. 契約担当者がキックオフミーティングから参加すること。

  2. パワーポイントの2ページ目にプロジェクトのコンセプトを書いて、ミーティングの度に見返すこと。

「契約担当者がキックオフミーティングから参加すること」とは

大企業の契約担当者がキックオフミーティングに参加しないといけない、という文字通りの意味ではない。
ただ、大企業の契約担当者がミーティングに参加するタイミングが早いほど、プロジェクトも契約もうまくいく、という趣旨の話だ。
キックオフミーティングで契約の話なんてするわけがない。
契約の話を大企業の契約担当者に聞かせることが目的なのではなく、大企業の契約担当者もプロジェクトの進行をそばで見守ることが重要である、という意味だ。

「パワーポイントの2ページ目にプロジェクトのコンセプトを書いて、ミーティングの度に見返すこと」とは

プロジェクトの理念・GOALといったコンセプトは、端から見ている以上に重要だ。
もちろん、コンセプトだけでモノが売れたら苦労はない。
しかし、モノを売るためのハードルは様々だ。

うまくいっているときは良いが、うまくいかないときだってある。
オープンイノベーションは、ただでさえ、未知のプロダクト・未知のマーケットへの挑戦だ。
心が折れるシチュエーションが幾度も訪れる。
そんなときに、プロジェクトを遂行する意味・意義が、個人を、チームを支える。

逆に言えば、プロジェクトのコンセプトを全メンバーが念頭に置いたまま行動しないと、プロダクトローンチのテーブルにすら付けないと思う。
目の前のものをただ売るだけなら、スタートアップでやる意味はない。
それがスタートアップの新規事業であると僕は思っている。

円卓会議

ホールでは、パネルディスカッション以外にも大企業の知財責任者の方から様々な話が聞けた。
その中で、円卓を囲む形式のディスカッションがあった。
僕も発言機会を頂いた。

大企業の知財責任者の方とは僕のキャリア上ほとんどご縁がなかった。
住む世界も違うし、求められている役割も違う。
見ている景色が違うのだから、参考になる話はあっても、ナレッジシェアの効果は限定的だと思っていた。

ところが違った。

大企業の知財責任者の方が抱える課題は、スタートアップに4年以上座した自分が抱える課題と共通しているし、スタートアップと呼べない規模になりつつある僕の環境が近い将来直面する課題でもあった。

こんな大先輩も同じ景色を見ていたんだ、ということがわかった。

むすび(外海に出る)

イベントに登壇したことで、僕の中で大きく変化したことがある。

それは「人見知り癖」だw
あまり信じてもらえないのだが、結構な人見知りである。

そしてもう一つ。
実は年上が苦手だw

日々忙しく働いて4年以上が経って、どこか慣れていたのかもしれない。
危機感がなかったのかもしれない。
大企業の知財責任者に上り詰めてもなお抱える課題と僕も戦わないといけない。
とすれば、諸先輩の知恵を借りないことにはどうにもならない。

人と会おう。
先輩の話を聞こう。
ネットワークを広げよう。

これが一番の収穫だった。

閑話休題

このイベントは、marcusevansという会社が主催するイベントだ。
椿山荘を2日間抑えて開催された。
登壇者特典は、椿山荘1泊食事付き宿泊券だった。
2023年の会にもしスタートアップのインハウスの知財関係者にお声がかかったら、躊躇なくオファーを受諾すべきだ。
たくさんの学びと非日常体験が得られることは保証する。

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