ノーベル学者の日本人英語
ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英先生は、2008年にストックホルムで行われた授賞式の講演で、開口一番、こう言いました。
“I am sorry, I cannot speak English.”
https://nobelmedia.akamaized.net/flashcontent/lecture_2008_phy_maskawa_01_496.mp4
この後の講演は全て異例の日本語。益川先生が英語を話さないことは有名でした。この授賞式のときが初めての海外渡航。それでも英語の論文を読みこなし、会食では誰かが通訳してくれる。専門の肝心なところでは数式を書く。つまり内容で勝負してこられたのです。
さて、あなたなら、なんと言いますか?
こう「日本語」でおっしゃってもよかったのではないでしょうか?
「英語ではメッセージをお伝えできませんので、日本語で失礼致します」…
いかがでしょう? どうせ同時通訳されるのでしょうから。
英語で言いたければ例えば…
Forgive me for addressing you in Japanese as I cannot convey my message to you in the English language.
“I am sorry, I cannot speak English.”の時よりも、もっと大きな拍手喝采が起こりそうですね。
「英語が話せなくてすみません」という、大変失礼ながら、やや子供じみた印象とは大きく異なり、成熟した大人の話し方となります。プロの集まる国際的な場面では、優れた内容を持つ人が英語下手を自己卑下的に述べる必要はひとつもないのです。
初回コラムでも言いましたが、誰も、本人の英語を聞きにきてはいないのです。内容を聞きにきているのですから。
このコラムの2回目「I’m sorry I’m a Japanese」(日本人ですみません)と通底するようなことがノーベル財団の受諾演説でも起きていた。世界最高峰の学者をおいても、英語になると、自虐的になられたようです。
もうこれはやめにしませんか。
私たちが、世界の様々な舞台に立った時、数人の会議でも、チームを前にした挨拶でも、国際学会でも、海外メディアのテレビ取材でも、自身の信じるメッセージだけをみる。集中する。そして、素直に一番自分の気持ちが乗っかっていく語彙とスピードで、語り始めましょう。
実は、素直に…そのことは、私もまだ出来ないことが多いことを告白します。十分な準備をして臨むウェビナーや研修などではゆったり大丈夫なのですが、ぶっつけ本番で最近始めたYouTubeなどになると構えてしまうことがあります。胆が据わってません。
近々、「正しい日本人英語の話し方」というシリーズを始めようと準備中なのに:)。これはいずれ書籍化したいコンテンツでもあります。タイトルどうでしょうか?
英語になりますが、私のYouTubeを覗いてみて下さい。自然体で出来ているかどうか、お知らせ頂くと励みになります。
Winning Together with Japanese
*初出「侍イングリッシュ」河谷隆司・産経新聞を加筆修正
●外国人に日本のビジネス文化を発信しています "How to Speak Japanese Cross-culturally" https://www.udemy.com/course/how-to-speak-japanese-cross-culturally/?referralCode=A66CD0BB2C5C7E90D27F
●アセアン異文化前10カ国・速習講座<基礎編> https://www.udemy.com/course/10-onoku/?referralCode=7A31C8D458D9920A959C
●日英バイリンの拙著の試読をどうぞ
"Winning Together at Japanese Companies"
https://www.winningtogether.jp/
●河谷隆司の活動は:
https://www.diversityasia.com/
●河谷への連絡先: kawatani@diversityasia.com