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【文化財紹介】大大阪時代の誇り ~大阪市中央公会堂~

【2024年1月1日/新年のごあいさつ】
明けましておめでとうございます。大阪歴史倶楽部です。本年も何卒よろしくお願いいたします。


大阪市中央公会堂
今月は大阪市北区にあります、大正時代に建てられた壮麗な赤レンガ造りの「大阪市中央公会堂」(大阪市民は「中之島なかのしまの公会堂」とも言います)をご紹介いたします。

大阪市中央公会堂は、1918(大正7)年に建てられました。平成14(2002)年に修復および耐震補強等のリニューアル工事が行われました。国の重要文化財に指定されています。

設計したのは東京駅や日本銀行本店・同大阪支店などの設計で有名な建築家の辰野金吾たつのきんご氏です。

【豆知識】
辰野金吾(1854~1919年)
近代日本を代表する建築家で「日本近代建築の父」「建築の神様」と言われる。工学寮造家学科(現在の東京大学工学部建築学科)の第1期生。

英国人建築家のジョサイア・コンドルに師事し西洋近代建築の技術を学ぶ。後に東京帝国大学工科大学長に就任。東京帝国大学工科大学長を退官した後の1905(明治38)年には大阪の名建築家である片岡安かたおかやすし(東京帝国大学工学博士)とともに大阪にて辰野片岡建築事務所を開設。

辰野金吾の建築は、東京駅に見られるような赤レンガ壁に石製の白色帯を組み込むデザインが特徴で、「辰野式」と呼ばれる。代表的な建築には石造の日本銀行本店(1896/明治29年)、日本銀行大阪支店(1903/明治36年)、レンガ造りでは東京駅(1914/大正3年)、大阪市中央公会堂(1918/大正7年)、木造では南海電鉄浜寺公園駅駅舎(1907/明治40年)などがある。


外観の写真
以下は大阪市中央公会堂の外観の写真です(2022年6月 大阪歴史倶楽部 撮影)。

大阪市中央公会堂正面(東から)
大阪市中央公会堂(北東から)
大阪市中央公会堂(南から)


建物の特徴
大阪市中央公会堂は、鉄骨レンガ造り地上3階、地下1階建の建物です。ネオ・ルネッサンス様式を基本としたデザインにバロック建築風の豪壮さや躍動感が加えられています。

この公会堂は、我が国における西洋式レンガ建築の完成形であり、東京駅などとともに日本のレンガ造り建築の最高峰をなす建物のひとつであると評価されています。

この建物は赤レンガの外壁に花崗岩の白色帯が入る典型的な「辰野式」デザインの建築で、正面中央に大アーチを設け、その下には柱頭様式をもつ四本の柱が配され、その両側に突き出した階段室には四角い大きな窓と最上部には丸窓が設けられ、頂上部にはクーポラ(小ドーム)が載せられています。

全体的に非常に美しく整った、壮麗な赤レンガ造りの建築だと言えます。


大阪市中央公会堂への行き方
大阪市中央公会堂へは、大阪メトロ堺筋線および京阪けいはん電車の「北浜きたはま」駅26号出口から北西へ約400m(徒歩約4分)です。

行き方の目安は簡単です。「北浜」駅26号出口を出て目の前の信号(北浜1交差点)を西側へ渡り、そこから北へ向かって難波橋なにわばしを渡ると(渡っている途中から)左側に美しい赤レンガ造りの大阪市中央公会堂が見えてきます。

【文化財データ】
大阪市中央公会堂
大阪市北区中之島1丁目1-27
1918(大正7)年 竣工
鉄骨レンガ造り地上3階、地下1階建
設計:辰野金吾・片岡安・岡田信一郎
※国の重要文化財
写真:2022年6月 大阪歴史倶楽部 撮影


おわりに
今回ご紹介した大阪市中央公会堂は、大阪市が最も繁栄していた「大大阪時代だいおおさかじだい」(大正時代の後半~昭和ひと桁代)の幕開けを告げるにふさわしい壮麗な赤レンガ造りの建築であり、その存在は今も大阪市民の誇りとなっています。

大阪市中央公会堂の建築計画の端緒は、1911(明治44)年に大阪・北浜の株式仲買商であった岩本栄之助いわもとえいのすけ氏が大阪市へ寄付(当時の金額で百万円)したことにより計画が始まりました。

1915(大正4)年10月8日には岩本栄之助氏や辰野金吾氏などを招いて定礎式が行われ、その定礎式において「定礎」の文字を揮毫したのは渋沢栄一氏でした。

その後、1918(大正7)年に大阪市中央公会堂は竣工(完成)しましたが、岩本栄之助氏はその2年前の1916(大正5)年にこの世を去っていたため、彼はこの壮麗な赤レンガ造りの公会堂が完成した姿を見ることはありませんでした。

南側の栴檀木橋から望むと非常に美しく壮麗な佇まい

なお、大阪市中央公会堂の建物を見学したり写真や動画などを撮影されるときには、管理者さんや周辺の方々に不快感を与えたりご迷惑にならないよう充分なご配慮をお願い致します。

また許可なく他の人の敷地内や公会堂内の立入禁止の区域内には入ったりしないようお願いいたします。

大阪市中央公会堂は公共の建物ですが、建物内部の撮影はセキュリティの関係もありますので、できれば管理者さんの許可を得てくださいますようお願いいたします。撮影禁止の区域では絶対に撮影しないようお願いいたします。

今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。


【大阪市中央公会堂の公式サイト(大阪市運営)】


【参考にした資料】
◎高岡伸一 他『大大阪モダン建築』青幻社 2007年
◎建材情報交流会 『大阪市中央公会堂の保存・再生工事について』坂倉建築研究所 2007年
◎上山信一『中央公会堂の活用検討について 』大阪市 2015年
◎『大大阪モダニズム 〜片岡安の仕事と都市文化〜』(大阪市中央公会堂開館100周年記念特別展図録)大阪くらしの今昔館 2018年
◎『国指定文化財等データベース』文化庁 2023年版
◎『文化遺産オンライン』2023年版(WEB版)
◎「辰野金吾」『大阪文化財ナビ』大阪府建築士会 2023年版(WEB版)


(『大阪歴史倶楽部』第3巻 第1号 通巻21号 2024年1月1日)

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※次号は2024年2月1日に投稿する予定です。

《次号予告》
【文化財紹介】
(内容未定)
いつものように近代の文化財をご紹介させていただきたいと考えています。

(※予告内容は変更する場合があります。ご了承ください)

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