【文化財紹介】大正時代のハイカラなビル ~新井ビル~
【2023年10月1日/大阪歴史倶楽部】
大阪歴史倶楽部です。今月は大阪市中央区にあります、大正時代に建てられたハイカラなビル「新井ビル」(旧報徳銀行大阪支店ビル)をご紹介いたします。
この新井ビルは、もとは報徳銀行の大阪支店ビルとして1922(大正11)年に建てられました。現在は所有者が変わり「新井ビル」としてテナントビルになっています。
また、現在この新井ビルは国の登録有形文化財となっています。さらに「生きた建築ミュージアム/大阪セレクション」にも選出されています。
外観の写真
以下は新井ビルの外観の写真です(2023年9月 大阪歴史倶楽部 撮影)。
建物の特徴
新井ビルは、1922(大正11)年に旧報徳銀行の大阪支店ビルとして建てられました。鉄筋コンクリート造り地上4階、地下1階建で、当時の大阪市のメインストリートであった堺筋に面して建っています。
建物の外観は、1階部分は重厚感のある花崗岩の石貼りで南北の両側に入口を設け、その間にはドリス式の柱を4本並べています。2階より上は軽快感のあるタイル貼りとしています。全体としてシンメトリーなデザインで凝った装飾はあまりなく、シンプルで安定感のある印象となっています。
この建物を設計したのは神戸を中心に活躍した河合浩蔵で、施工は清水組です。竣工当初からエレベータが設置されていましたが、戦時中の金属回収令によってエレベータは供出されたと伝えられています。
新井ビルへの行き方
新井ビルは、大阪メトロ堺筋線または京阪電車の「北浜」駅3号出口を出て目の前(堺筋を挟んで向かい側)にあります。
おわりに
今回は大阪市中央区の新井ビルをご紹介いたしました。この新井ビルは、1階部分は当時の銀行建築らしく重厚感のある石貼りにドリス式のオーダーを持ち、2階より上は軽快感のあるタイル貼りとなっています。全体的にあまりコテコテしていないスッキリとした洗練されたハイカラな印象を抱きます。
このような鉄筋コンクリート造りの構造や外壁に石貼りやタイル貼りを用いているのは当時の銀行建築の特徴のひとつで、耐震・耐火性を重視したものだと言えます。
また、この新井ビルから堺筋沿いにさらに南へ100mほど行くと高麗橋野村ビルディング(1927/昭和2年竣工)が、さらに南へ250mほど進むと生駒ビルヂング(1930/昭和5年竣工)があり、その生駒ビルヂングから西へ500mほど行って御堂筋に出た所には大阪瓦斯ビルヂング(1933/昭和8年竣工)があります。
これら新井ビル、高麗橋野村ビルディング、生駒ビルヂング、大阪瓦斯ビルヂングはともに大正時代の後半から昭和初期にかけて大阪市が最も繁栄していた大大阪時代に建てられた建物で、いまなおその美しい佇まいがとても印象的です。この付近の近代建築めぐりもお勧めです。
なお、新井ビルをはじめ、高麗橋野村ビルディングや生駒ビルヂング、大阪瓦斯ビルヂングなどの建物を見学したり写真や動画などを撮影されるときには、所有者さんや管理者さん、周辺の方々に不快感を与えたりご迷惑にならないよう充分なご配慮をお願い致します。
また許可なく他の人の敷地内に入ったりしないようお願いいたします。とくに建物内部を撮影される際にはセキュリティの関係もありますので必ず所有者さんや管理者さんなどの許可を得てくださいますようお願いいたします。
今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。
【新井ビルさんの公式サイト】
【参考にした資料】
◎高岡伸一 他『大大阪モダン建築』青幻社 2007年
◎「大阪府の近代化遺産」『大阪府近代化遺産(建造物等)総合調査報告書』大阪府教育委員会 2007年
◎『国指定文化財等データベース』文化庁 2023年版
◎「新井ビル」『大阪文化財ナビ』大阪府建築士会 2023年版(WEB版)
◎「新井ビル」『生きた建築ミュージアム大阪実行委員会』WEBサイト
(『大阪歴史倶楽部』第2巻 第10号 通巻18号 2023年10月1日)
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※次号は2023年11月1日に投稿する予定です。