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週刊わたしの映画と舞台メモ 『飲める醤油』『悪は存在しない』

今週は、前半全然映画を観られませんでした。理由は、体調を崩しかけていたから。発熱とか喉が痛いとかまではいかないけど、恐ろしく眠たくて多分体が睡眠を欲している…という日が数日。なので活動時間以外はずっと寝てました。風邪を引いてしまう前の体調不良は、とにかく睡眠と、あとはビタミンとヤクルトを摂取することで治ります。私は。ヤクルト飲めばいいと思ってるフシがかなりある。おすすめです。

そんなわけで今週は映画1本と、舞台を1本です。


あひるなんちゃら
『飲める醤油』at下北沢駅前劇場

しょっちゅう遊んでいただいている大好きな木村はるかさんがご出演される、というキッカケで前作『真夜中にコライダー団地で』から観に行かせていただいている劇団のあひるなんちゃらさん。今回もはるかさんが出演されるから、というのはもちろんあるんですが、すっかりツボにハマってしまってシンプルに新作を楽しみにしておりました!

今回の舞台は、老舗の醤油醸造会社。社長である父が亡くなったことを機に実家に戻ってきたのは、東京でそこそこ売れない役者をやっていた長男のショウタさん。弟を始めとしたそこで働く社員たち、伝統の醤油のレシピを知る?パートの女性たち、妹が最近始めたこども食堂、それを手伝う外人…?な女性、お客としてやってくる小4……?な女性、、、が繰り広げるさまざまの図です。

あひるなんちゃらさんの作品は会話が面白くて大好き。面白い言葉を並べているというわけではなく、何かを大げさに言ってるわけでもなく、普通の言葉をそのときの気持ちに従って言ったら出ちゃった温度や質感みたいなのが、まぁ~毎回私のツボにはまってしまう。真似して言いたくなっちゃう。

あともう一つ大好きなのが前説の優しさ。スマホとか、もちろん鳴らさないようにするのがマナーだし、役者さんもお客も集中が削がれるから避けたいものではあるんですが、「まあ鳴っちゃっても、みんな友だちだと思って気にしないで。仲良く観てください」って言ってくれるんです。トイレも基本行けないけど、最悪の場合は行っていいし、周りの人もそれ気にしないでねとか、前作のときは「お子さんがぐずっても親は気にしないでいいし、ぐずっていいよ」みたいなことをおっしゃっていた気がします。やさしい。楽しい舞台を観に行ってるんだから、楽しい、やさしい、おおらかな気持ちでその時起こる全てを受け入れたい。そんな気分になります。その前説のおかげで、笑いたい時には笑っちゃえる空気になるのもさすがです。

今作でとにかく気になったのは、新商品として生まれてしまった「飲める醤油」の味。すんごい美味しい、らしい。見た目は真っ黒な醤油だけど、みんな舞台上でゴクゴク美味しそうに飲んでいきます。どんな味なんだろう、本当にあったらちょっとおもしろいかも…という気持ちと、役者さんたちは実際何を…?コーヒーか?黒烏龍茶的なものなのか?黒い…色水…?!という気持ちと。観終わってすぐ聞いちゃいました。そういう裏話的なものがどこかで公開されることがあるといいな~と勝手に思います。

上映時間が80分くらいなのも本当に最高。映画も舞台も70~100分くらいだと私は非常に嬉しいです。それはそれは、嬉しいです。今日(5/19)が千秋楽だったそうですが、もう次回作を楽しみにしています!配信の映像が5月いっぱい観られるとのことなので、ぜひに!見た人は私と好きなセリフの言い合いっこしましょう

『悪は存在しない』
監督:濱口竜介

この作品、どこでも観られるだろうと思い込んでいたら都内では渋谷と下北沢のみ(これから増えるみたい!)。どちらもなかなか行かないので観られずにいたんですが、あひるなんちゃらさんを観るために下北沢に行けるぞ!となったためようやく鑑賞。

お話の舞台は長野県の自然豊かな高原にある町。そこで町の便利屋的な仕事をして暮らす巧と、娘の花。薪を割ったり湧き水を汲んだり、そうこうしている間に花の学童の迎えの時間を過ぎてしまったり、慣れっこの花は一人で歩いて帰っていたり、そんな暮らしの様子を映しています。ある日、東京の芸能事務所がコロナの助成金目当てに、この町にグランピング場の建設を計画。住民を相手に説明会が開かれるが…というお話です。

あまりにも静かで淡々とした映像に「眠くなってしまうのでは」と不安になったのですが、全然でした。一瞬も眠たくならなかった。私は「生活」を見るのが好きなのかもしれないな。

巧が薪を割る姿をちょっと離れたところからひたすら映しているシーン、ストーリーは動かないし景色も変わらないけどとても印象に残っています。力いっぱい振り下ろすとかじゃないんだなあ…当たりが良いと薪もいい大きさに割れるんだなあ…これ毎日やるのかなあ…どのくらいあればじゅうぶんなのかな…と同じ動作を見てるだけでも結構思うことがある。

そこに暮らす人には当たり前でも、私には新鮮な映像なので見入ってしまいました。以前教えていただいた想田和弘さんの『港町』を観たときも似たようなことを感じたな、と思い出しました。

あともう一つ思い出したのは、最近観たばかりのゴダールの『軽蔑』。私は映画のどこでどんな音楽が流れていたかあんまり覚えていられない記憶力の持ち主なのですが、同じ悲しげな音楽がいろんなシーンでかかるんだなあと印象に残っていました。『悪は存在しない』も印象的にテーマ曲が使われていて、あとからインタビュー記事を読んだら制作にあたって『軽蔑』の話も度々出ていたそうです。たまたま最近観たから繋がったんですが、気がつくことができてちょっと嬉しかったです。自分の中に、観てきたものがちゃんと残ってるんだなということが。いろんなことすぐ忘れて生きてるから、、、

お話については、映画が終わった時に、なんていうか、放り投げられたような、急につまみ出されたみたいな、「……え?!」となる感覚がありました。今年は映画館でそうなる確率が高い。そしてそうなるときって、しばらく思い返しては考えてしまう。それから「あれって実はこういうことなんだよね」と人に言われるのもなんかちょっと嫌かもしれないという感覚。私が観て私が感じた、言葉になりきらないモヤッとしたものを、まだしばらくもしゃもしゃと味わいたいと思います。

タイトルがかっこいいし、観たあとは余計引っかかる。「悪は存在しない」。悪は存在しないんだ。


そんな2本でした。こんなにおもしろいものを、こんなにすごいものを、作っている人たちがいるんだなあ…と本当に尊敬です。作るってすごい。素敵なものを見ると、舞台に立ったことも映画を作ったこともないのに、なんか私も作りたいぜという気分になってくる。

どちらの作品も、万人受けはしなさそうというか、それを求めてもいないと思うんですが、私にはこれらを楽しい素晴らしいと思う感性みたいなものが備わっていて、それってラッキーだ!と思います。ひとそれぞれに向きがあるとおもうんですけど。私のセンサーはこっちを向いてて、ラッキーでした。いろんなおすすめも取り入れつつ、私のセンサーで作品を選んで、来週もメモメモしたいと思います。


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