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実践!地頭トレーニング#8 トマト (問題編)

こんにちは、はりぼーです。本連載では2019年に会社の若手3人と一緒に行った地頭トレーニングの内容を公開していきます。初めての方は本連載の趣旨をご参照いただけると幸いです。

登場人物
はりぼー(私):地頭トレーニングの指導者、元外資系戦略コンサルタント
まひる (ま):若手同期3人組のリーダー的存在の女性、思考は少し苦手
良太  (良):入社3年目の営業マン、考えながら走るタイプの切れ者
修   (修):控えめな性格の開発者、時々独創的なアイディアを出す

売上アップのフレームワーク

さて、前回はビニール傘の売上アップ施策について、3人のロジックから出発して以下の3つの施策を検討しました。

・ 類似商品からの切り替え (一般傘や折り畳み傘のシェアを奪う)
・ 機会損失をなくす (雨宿りや濡れる覚悟で走る人達を取り込む)
・ ユニバースを広げる (業務用や海外の訪日観光客を対象とする)

これに加えて「競合からシェアを奪う」(前回のお題ではビニール傘を製造している会社は1社独占としましたが、通常は競合がいるため)の4つ方向性をまとめて売上アップのフレームワークと呼んでいます。これは私のオリジナルのフレームワークで以下のようなイメージで捉えています。

ビニール傘11

まず現在の市場全体を上記の赤枠で囲った中の部分とします。市場の中には自社のシェアの部分、競合にシェアを取られている部分、類似製品やサービスによって需要が満たされている部分、そして需要が満たされないままほっとかれている機会損失の部分があります。更に赤枠の外には潜在的に存在しているが、現在着目されていない市場が存在します。満たされていないニーズや潜在的なニーズという意味で英語でUnmet needs (アンメットニーズ)と呼ぶことがあります。この枠組みを基本として売上アップの施策を考えると発想が出やすいです。具体的には…

ビニール傘12

先ず売上アップを考えた場合、最初に検討するのは競合からのシェア奪取です。ビニール傘の課題では競合無しの前提だったので検討外としましたが、現実のビジネス、特に営業部門にとっての一番の関心分野はここで、価格やチャネルあるいは販売サポートなど様々な視点から施策を検討します。

ビニール傘13

次に考えるのは機会損失を減らす施策です。ビニール傘の課題においては雨宿りや濡れる覚悟で走るという機会損失をなくすための施策を考えましたね。機会損失とは、既に顧客のニーズは明らかになっているのですが(ビニール傘の課題では雨に濡れたくないというニーズ)「何らかの理由で顧客がニーズを満たす行動を起こさない」点に着目して施策を打ちます。類似製品・サービスからシェアを取るよりも簡単な場合が多いので、競合のシェア奪取の次は機会損失に着目して売上アップ施策を検討することが有効です。

ビニール傘14

競合のシェア奪取、機会損失の減少に着目したら、次に考えるのは類似製品やサービスのシェアを奪うことです。顧客のニーズが明らかになっている点において機会損失と同じですが、異なる点は「顧客は既に代替製品やサービスを利用している」ということです。従って、競合のシェア奪取や機会損失を減らす施策よりも、自社製品にスイッチするハードルが高いケースが多いと言えます。この分野において売上アップの施策を検討する際は、まず代替製品やサービスを徹底的に分析し弱点を見つけ、その点において満足していない顧客をターゲットとして弱点を克服した製品やサービスをぶつけていくことになります。既存の製品やサービスで対応できれば良いですが、大体のケースでは新しく製品やサービスを開発することになります。ビニール傘の課題においては、交換需要+サブスクリプションという新しい製品&サービスを検討していましたね。

ビニール傘15

そして、最後の施策がユニバースを広げて、これまで満たされていなかったアンメットニーズ需要を掘り起こすことです。ビニール傘の課題においては、海外の訪日観光客用のビニール傘を観光ツアー企業に販売するという施策でしたね。この施策の最も難しい点はアンメットニーズを発見することに尽きます。というのも、顧客の大半は自ら満たされていないニーズに気がついていないケースがほとんどだからです。少数の顧客のサイレント・ボイスを拾うことができればよいのですが、なかなか難しいです。寧ろ世の中のトレンドから今後こんなニーズが新しく生まれるだろうという大胆な仮説を立てて、その仮説を持って顧客にヒアリングした方がアンメットニーズを発見できる可能性が高いです。

お題2 「トマト」

(ま)「私達が考えてきたことを改めてフレームワークにすると、理解度が深まるし、何よりも今後使っていけそうな気がしてきますね」
(私)「そうだね。このように特定の状況や課題において必死に考えたことを、より汎用性の高い考え方に昇華させることでフレームワークが生まれてきます」
(良)「いわゆる定番の3Cや4Pのフレームワークもこうして生まれてきたのですね」
(私)「その通りです。なのでフレームワークをたくさん覚えること自体はあまり意味がありません。実践を通じてフレームワークを生み出せればベストですが、そうでなくても既存のフレームワークを実際に使って考えるという経験を何度もしてはじめて、フレームワークが身につけたと言えます」
(ま)「やはり思考する量をこなして、且つ師匠や同僚から気づきを得ることが地頭を身につける近道なのですね」
(私)「ふふふ、3人ともだんだんと言葉に実感が伴ってきているので、聴いてる私も嬉しいです。この調子で二つ目の課題に移りましょう」

(お題)「もしあなたが農林水産大臣だとして、トマトの売上を2倍にするにはどのような施策を打つか?」
 前提条件
• 内需消費拡大の観点から輸出の施策は無しとしましょう
• 生産側のボトルネックは無視し、いくらでもに生産量を増やせると仮定しましょう

 (私)「農林水産大臣の視点から、全国で消費されているトマトの消費量や金額を増やす施策を考えます。前回と同様、まずはトマトの市場規模をロジカルに推定し、その上で市場を拡大させる施策を考えてみましょう」
(修)「売上高を2倍にするという具体的な目標がある点が前回とは少し異なりますね」
(私)「その通りです。2倍となると実現が難しそうな思い切った施策も必要になってくるかもしれません。そのために、農家や企業努力のみならず国家的な取り組みも行えるよう農林水産大臣を主語としました」
(私)「先ずは現状の市場規模の推定から始めましょう」
(ま)(よし、今回は良いところを見せるわ!)

(表紙写真: ドイツ バーデン・バーデン)

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