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きみは失敗作なんかじゃない


今日は読書感想文、と言うか絵本感想文です。
2000字越えてしまいました、感想文て、難しい‥。

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最近は、兄弟2人とも自分たちで本を選ぶ。
次男が入学してから、彼らは時々、休憩時間にも学校の図書室で会っているらしい。

「ママ!小学校って図書室があって、自分で本借りていいんやって!!すごいなぁ!」(長男が小1の時)
「お兄ちゃんは借りた本持って帰ってこれるけど、オレはまだ一年生やから教室でしか借りた本読めないねん(持って帰って家で読めない)‥」(次男小1・1学期)


自分の好みが出てきて、読みたい本を選ぶ楽しみが味わえるようになるとは、子どもたちも成長したと思う。

その一方で、まだまだ知らない本の世界を、好みに限らず幅広く読んでほしいと思うのは、親の勝手な願望かな?
なので、図書館に行くと、まずゾロリコーナーとサバイバル漫画コーナーに直行する2人のカートに、時々、私が面白そうと思った本を忍ばせている。

今日の絵本もその中の一冊。
絵本コーナーをウロウロしていた時、最初表紙絵が可愛いなと思って手に取ったのだが‥可愛らしい一方で、大人から見ると何やら不穏な空気も漂っている気がする。

絵がとても精緻なタッチで、まずそこにひかれ、
パラパラッとめくってみて、どちらかと言うと長男向けかも?と思いつつカートに入れた。

バーナバスは半分ネズミで、半分ゾウ。



それにしても、冒頭2枚目の街の風景からちょっとドキドキ。
コインランドリーや喫茶店、パン屋さんが並ぶ、ほのぼのした街なんだけれども、その中でも一際、人が集まっているお店の名前が、‥パーフェクト ペット。

どこにでもあるような通りの ここにしかない ペットショップ 「パーフェクト ペット」


お店の入り口には二重螺旋のオブジェがある。

よく見ると、店の周りに集まっているお客さんや、街行く人たちの中にも、ここで買ったんだろうなと思わせるペットを連れている人たちが何人もいる。


昔「ガタカ」って言う映画があったな‥。
〝完全な〟って、何となくこわい響きだと思いながら読んでいくが、子どもたちは当然そんなことは思いもよらないようで、絵を静かに見つめて読んでいる。

バーナバスは、このパーフェクト ペットでは売ることができない、つまり〈しっぱいさく〉なので、お店の地下深いけんきゅうじょのガラスびんの中でくらしている。

のっけから、衝撃的な設定!
ほのぼのした絵本世界というより、SF映画や近未来漫画のよう。
地下けんきゅうじょも、パイプが張り巡らされた中に、防護服を着込んで顔も見えない研究員らしき人が作業していたりして、どことなく不気味な雰囲気。


でも、その漫画のようなイラストのような絵のタッチが魅力的で、他にも、ガラスびんの中でくらしている人工ペットたちが、皆なんともユニークで、可愛らしい。

その中で、バーナバスは、外の世界を見てみたいと思いながらも、大好物のピーナッツを食べてくらしている。

そしてある日、ガラスびんに押される赤い「FAIL」のスタンプ。

この時、バーナバスが抱く葛藤が、何ともいじらしくて切ない。
友だちのピップには、ふわふわでかわいいおめめに作り直してもらえるぞ!となぐさめられるのだけれど、バーナバスは、「目はこのまま小さい方がいい」と言いながらも、本当にそうなのか自分でも分からなくなってしまう。
作り直されて、ピーナッツがきらいになってしまったらどうしようと、悩む。

絵本は、しばしば子ども向けじゃない、と感じる。
と言うより、素晴らしい絵本は、年齢を越えるということだろうか。

自分は失敗作だ、と判を押され、
もし、完璧な何か(誰か)に作り直してもらえる、と言われたら、
明るいショーウインドゥで、沢山の人にキラキラと見つめてもらえるよ、と言われたら。

そうでなくとも、生まれてから一度は、誰しもが、
何で自分はこんななんだろう、
もっと別の姿で生まれていたら、どんな風に生きていたんだろうと想像したり、悩んだりしたことがあると思う。
そんな時、

ぼくはこのままがいい、と、
このままの自分でいるために、バーナバスのように、この後の決断ができるだろうか?

絵本は、そんな難しいテーマを中心にすすむという訳ではなく、勇気だったり仲間の存在だったり、小さい子どもでもドキドキしながら、最後まで物語に入り込むことができるように描かれている。

怖がりで、「モンスターズ・インク」のテレビ放送でさえ、最後まで観ようとしない次男も、バーナバス、可愛い‥と言いながらその〝だいだっそう〟を見届けた。

そう、SF映画や最近流行りのCGアニメであっても違和感がないな‥と思ったこの絵本だが、
ラストに何も説教くさい(だから行き過ぎた科学の発展は‥と言うような)脅しめいた教訓も、
防護服の研究員や、パーフェクトペットを買った現代人がしっぺ返しをくらうというようなことも勿論なくて、

嬉しそうに、ピーナッツを食べているバーナバスの絵で終わるところが、いちばん素敵だった。


(これは好みの問題だと思うのだが、ファミリー向けのCGアニメ等を見ていて、最後悪役が主人公にギャフンと言わされて終わる結末、本当にあれは要るのかと思うことがしばしばある。)

小3の長男なら、この近未来的な世界も読んで分かるかもと思って借りたが、蓋を開けてみると7歳の弟が、その後何度も一人でめくって読んでいた。
バーナバスを応援したかったのか、沢山出てくる仲間の人工ペットたちが可愛かったからか、理由は分からない。
でも、だからこそ、本って面白いんだな。

著者はファン・ブラザーズ。
カナダの作家で、この作品は兄弟で作った絵本らしい。
絵本の表紙見返し部分の絵も、始めと終わりで異なっていて、見ていてとっても楽しい。ここに工夫がある絵本は、読んでいて得した気になれる。

原田 勝 訳 / 学研、2021年第一刷発行。


夏の読書感想文にも、間に合うかも知れない?!


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