年下の男性からクリスマスプレゼントをもらった話
この季節になると、必ず飲みたくなるものがある。
スターバックスの、ジンジャーブレッドラテ。
私はホット一択。
いつも、同時にホリデーメニューとして魅力的なドリンクが並ぶので、一瞬どうしようか‥と迷ったりもするが、ここでこの味を頼まなければ絶対後悔する、と思って、泣く泣く、キャラメルやメイプルやホワイトモカは諦める。絶対美味しいと思うけど。
メニューから消えてしまったらどうしようと毎年心配しているが、11月になるとちゃんと季節の定番メニューに登場するので、同じこと考えてる人が他にもいるんだなーと、嬉しくなる。
冬中ずっとおいていてくれたらいいのに‥とも思うのだが、ジンジャーブレッドは、=クリスマスの味 なのか、12月26日に行くともう飲めなくなってしまうのだ。
ところが、困ったことが一つ。
最近まで近所にスタバがなかった。
最寄りのスタバは、車で15分ほどの距離にある大きな商業施設の中である。
私の普段の交通手段は自転車かバス。いくら電動とは言え、ドリンクを飲むためだけに片道30分近くかけて行くのは、なかなか気合いと時間が要る。しかもバスだとその倍の時間!
独身の時には、実家からバイクで5分の距離にスタバがあった。そこに店舗ができる前にも、ちょっと足を伸ばせば行けるシネコンの一階にスタバが入っていた。本屋も隣接されていて、同じフロアに無印まであって。1時間でも2時間でもそこで過ごすことができた。
(今やボーイズのことやら積もる家事のことやらが頭に浮かんでしまい、1人コーヒーを味わいながら30分以上、優雅な気持ちで過ごすことができないのが切ない‥。)
でも、何と言っても、この季節に飲みそびれたら来年まで会えない味。どうしても年に一度、いや最低でも三度は飲みたいので、週末出かけた際、頼み込んで寄ってもらったり、もしくは平日の仕事休み、夫へのクリスマスプレゼントを買いにいく為と言う目的をくっつけ、要はジンジャーブレッドラテを飲むために、必死で自転車を漕いだりしていた。
そして。
なんと最近できたのである、スターバックスが。我が家の自転車圏内に。
どうやら今度できる店はスタバらしい、と分かった時、普段お洒落なコーヒー店に関心のない夫まで、あのクリスマスのやつ飲む時、買いに行きやすくなって良かったね。と言ってくれた。
ただ、めちゃめちゃ近いという訳ではない。そして普段通る道でもない。
11月、12月。平日は毎日仕事があった。新しくお店ができたことさえ忘れているうちに、バタバタと日が経っていた。
ある金曜日の夜。
その日、夫は飲み会の予定。私と子どもたちは早めの夕食を終えてのんびりしていた。夫から電話が入る。一度車を置きに帰るから、駅まで送ってくれたら嬉しいとのこと。
子どもたちはYouTubeを見て留守番しとくと言っている。
あれ、もしかしてこれチャンス。
駅までの道の途中、スタバがある‥!!
外はすっかり暗い。店があるのは、帰り道の反対車線。運転は苦手な私だけど、ここは夫を駅まで送った帰り、1人頑張って行くしかない!
駅までの道中、今日の仕事のことや、飲み会のメンバーのことをニコニコと教えてくれる夫に相槌を打ちながらも、頭の中は、温かなジンジャーブレッドラテのことでいっぱい。わくわく。
無事に夫を送り、心配していた右折もなんとか乗り切って、ドライブスルーレーンへ。注文を済ませ、商品を受け取るために車を前進させた。
‥ところで。
スターバックスの店員さんって、接客がとてもフレンドリーと言うか、知り合いのように、自然に話しかけてくれませんか?
今ではたまにしか行けない私、行くとしたら、一人で、あまり混んでない時を狙うことが多かったからかも知れないが。
例えば、商品を手渡してくれる時、「これ、私も好きなんですよ」という具合に、押し付けがましくなく話しかけてくれることが多い気がする。
何というか、ユニバ(USJ)のクルーさんにも同じ雰囲気を感じる。マニュアルっぽくは聞こえない、お客さんが親しみをおぼえるような、そんな自然な声かけ。〝I(アイ)メッセージ〟とでも言うのだろうか、主語が、お店から、ではなくて、店員さんの素顔が見えるような「私」の内容になっている。
その日接客してくれた店員さんは、若い男性だった。
サラサラの黒髪といい、色白の綺麗な肌といい。最近の若い人は皆、K-POP系のアイドルみたい。
私としてはちょっと緊張する。でもどっちかと言うと、もう私よりも、子どもの方が世代が近いんだよなぁ。
その若い店員のお兄さんは、注文を確認して、少々お待ちくださいね と言った後、こう聞いてきた。
「‥ところで、抹茶は、お好きですか?」
?
唐突な質問。
いや、唐突ではなかったのかも知れないけど、質問が若干ぎこちないような、まだあまり接客慣れてないのかな?と思うような、私よりも緊張してる様子。
自然な感じで‥を意識しながらも、お客さんとマニュアルなしのトークをするのにまだどこか躊躇ってるような、そんな感じが声ににじみ出ている。
抹茶‥。嫌いじゃない。けどそこまで好きでもないって言うか、いや好きだけど今は特にそんな気分でないって言うか。すいません、頭の中ジンジャーブレッドしか考えてなかったもので。
でもこちらには、アラフォーの余裕、もしくはお客さん側という余裕(?)があるので、とりあえずここは無難に
「あ、はい、そうですね、はい。」
と答えた。
お兄さんは、ホッとしたように、
「あ、でしたら、こちら、ぜひ試してみませんか?抹茶のシフォンなんです‥」
と、一口サイズのケーキを差し出してくれた。
「わ、ありがとうございますー」
予想外の試食に嬉しくなった。だったら、「抹茶大好きです!」って答えといたら良かったなぁ、なんて思いながら受け取ろうと手を出すと、お兄さんはぎこちなく、
「あ、じゃこれ、僕からの、クリスマスプレゼント、でございます。」
と、手渡してくれた。
初めて聞いたセリフ‥!
ございますって、執事さんですか!
え、このまま私プレゼントもらっちゃっていいのかな?
いいんだよね?受け取りますよ!
プレゼント、その場で食べるかしばらく悩んだが、結局、ドリンクを用意してくれている間にいただくことにした。
優しい風味でとっても美味しかった。
店員さんにも、美味しかったですと伝えた。今度は普通に「あ、良かったです!」と笑顔で返ってきた。執事さんじゃない、若い男子のナチュラルな会話だった。
多分さっきのあのフレーズ、言うかどうか迷った上だったんだろうなぁ。なんかでも、聞けて得した気持ち。もらっちゃいました。ありがとうございます。
という訳で、年下の男性からの思いがけないクリスマスプレゼントの話。
もちろん、ジンジャーブレッドラテは最高に美味しかった。このスパイシーな香りと味わい。口の中でほどけるようなクリーム。クリスマスが終わる前に、もう一度は絶対行こうと思う。
あ、あの店員さんに会う為ではないですよ。
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思い出というには新し過ぎますが、来年も思い出すような気がするので、フライングで参加します🎅