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おさらい

「あなたが、よりよく生きていくため、楽になれる方法の一つになればいいんじゃないかな?」

初めて、他人に伝えた言葉。そして、当時の自分が欲しかった言葉なのかもしれない。


職場でのメンタル不調者の対応で、この2週間は心がザワついていた。きっかけは、「ペットロス」。見る人からすれば、そんなこと、で片付けられることかもしれない。価値観は人により違うから。

数日前から、勤怠が不安定になり、予兆はあったが、その日は違った。まだ人の少ないオフィスで小さくなって泣いて震えていた。本人なりに頑張って出勤してきたが、そうなってしまった。

丁度、個人的に労働安全について勉強をしていたこともあり、万が一を想定して頭の中はフル回転、優先順位を決めて、とにかく本人の身の安全を優先。場所を変え、話を聴き、とにかく心身の反応と発話がどうなのか、ひたすら注視しながら聴くに徹した。

人生で一人で看取った初めてのペット。精一杯頑張ったけれど、命は救えず、後悔と寂しさと、自分の心と現実の仕事と、イロイロ混ざって消化不良。頭で理解できても、心の根っこでくすぶっていた「不安感」が体に出たらしい。紐解くと、さらには現状の自分、未来の自分への不安、過去のイロイロな反応も「別のなにか」で誤魔化して、自分の心に気づけていなかったようだ。泣きながら、話題によって震える体。受け止めて、体を支えて撫でることしかできなかった。

この状況下でも、通常の業務は進めないとならないし、他のスタッフも救急車を呼ぶ準備、上長への連絡などやることはあり。そういった中、なんとか落ち着きを取り戻した本人へ、心療内科への通院を勧めることになった。

たぶん、ペットロスは「きっかけ」。今まで澱のように溜まっていたものが、やっと表面化したのだろう。と、個人的には思えた。他方、あくまでも職場で、個々人の事情をどこまで汲み取り、業務を回すのか。非常に難しいものだとも思った。

実際、関係のない他のスタッフからは、今回のことに関する「そんな状態で仕事を続けられても、困るし、辞めて欲しい」という意見ももちろん出た。現場の当事者として受けた「ショック」もメンタルダメージになった。職場全体が、「事故」にあったのだ。上長はこれにより、緊急時の連絡方法や、今後の進め方など振り返り、改善するきっかけにもなった。

今まで、自身の経験から「メンタル不調」の当事者の景色は見れていたが、他方、どう感じどう動くのか、会社はそういう時に、どのような立場で判断するのか。そういったことを実地で経験することができたのは、非常に大きかった。なかなかに、現実の社会はメンタル不調に厳しいし、救ってもくれない。時短勤務や復職も、個人への配慮と、他のスタッフの理解がないと進まないし、理解したとしても「他方の不安感」が大きければ、またそこで対応していかないとならない。答えは直ぐには見つからないし、全員が納得することも、たぶん難しいだろう。

他人は、自分の主観や経験してきた範囲でしか理解はしずらいし、理解しようと努力するしかできない。それすら、個人の範疇で、理解できない。とつっぱねるのも自分を守る方法である。正解はない。


ただ、個人的には、メンタル不調を起こした本人が、これをきっかけに自身の特性と向き合うこと、通院と言う「方法・手段」があって、それは恥ずべきことでもなく「自分が、よりよく生きるため」のスタート地点に立った。と、いつか感じることができたなら、いいな。と思う。

そして、当時の自分を振り返り、あの時、どういう状況だったのかが、本当の意味で理解できたような気がする。多面的に物事を俯瞰して見れたことに感謝すら覚える出来事だった。

余談ながら、今回のことで、別のスタッフの心根が見えることがあった。それは、どうしようもない自分の揺れる心を、他人を攻撃するような発言で収めようとする、と言うこと。何もしていない、ただの傍観者である人間なのに、こんなに差別的な発言をサラッと口に出してしまうものなのか。と。

正直、ドン引き。ただ、理解はしている。どうしてこういう発言をしたのか。は。ただ、世の中こんなもんだ、もし、自分が同様に不調が起きたとき、今までの発言や態度がどう影響するのか、少し自覚しながら生きていかないと。とも、感じた。


なんというか、心に寄り添いすぎても境界線は崩れるし、自分の心を保つことも難しくなる。俯瞰で見ることのできる、もう一人の私と、「そうは言っても傷つくし疲れた」私。ここのバランスがうまく取れるようになれば、もう少し生きやすくなる。


「あなたが、よりよく生きていくため、楽になれる方法の一つになればいいんじゃないかな?」


まさにそれ。笑




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