新元号「令和」を受けて 描く未来はどこか懐かしい未来

新元号が「令和」に決まった。出典は万葉集の

「初春の月にして 気淑く風らぎ 梅は鏡前の粉を披き 蘭は珮後の香を薫らす」

という句だそうだ。正直この句を読んでも全然意味が分からなかった…言葉が大好きだと自負しているのに、悲しきかな…

でも、万葉集が出典と聞いて、嬉しい気持ちになった。私は日本や日本語がすごく好きだし、日本語で思いを紡いでいきたい。万葉集は、貴族や有力者だけではなく、一般民衆の歌も入っている歌集だ。その歌集から元号が選ばれた。そこには深い意味があるだろうし、「過去は過去。古いものに意味はない」とせずに、文化や歴史を重んじることは素敵なことだと思うからだ。

新元号を受けて、先日取材した進化生物学の教授の先生が、こう仰っていたのを思い出した。

これは官僚である方が仰っていたことなのですが、『描く未来は懐かしい未来』という言葉があります。私はその言葉にどこか魅かれて。
もともと人間はどこか懐かしいものに心を魅かれるものだと思います。
進化を基盤に人間を見ると、もともとの「出どころ」や出典に目を向けさせてくれる。そこに進化生物学という学問の意義があるように感じます。
懐かしさを目指すというのは後退では無いと私は思っています。

この取材内容は、記事そのものの趣旨とは少しずれてしまったために、記事内での公開はしなかったんだけれど、私の心の中にずっと残っていた。

先日読んだこちら↓の本の中にもこんなことが載っていて、今回の新元号の発表を受けてすぐに頭に浮かんだ。

死を迎える人が少しでも安らかに最期を過ごせるようにと、ターミナルケアやスピリチュアルケアということが行われています。そこで患者さんに歌ってほしいと頼まれる歌でもっとも要望の多いのが「ふるさと」だそうです。
中略
「母なる大地」という言葉がありますが、日本人には「ふるさと」はどこか子宮のような、そこから自分が生まれてきた「もと」を思わせる。つまり「ふるさと」という歌を日本人が好きなのは、いのちの恵みのもとを感じ取れるからでもあるのでしょう

どんなにテクノロジーが進化しても、人の心は進化しない。テクノロジーの進化は日常をとても便利にしてくれるけれど、脅威でもある。きっと多くの人はそう感じているのではないだろうか。安倍首相が元号に込めた意味としてこう語っていた。

「悠久の歴史と香り高き文化、四季折々の美しい自然、こうした日本の国柄をしっかりと次の時代へと引き継いでいく、厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人一人の日本人が明日への希望とともにそれぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたいとの願いを込めた」

言い換えると、人々は今この時代に厳しい寒さを感じていて、希望を抱きづらい、ということだろう。日々の暮らしは昔と比べて便利になった。けれど希望を抱けない。そんな悲しいことがあるだろうか。

もしかしたら、未来では人と人とが対話することよりも、人とAIが対話することのほうが多くなるのかもしれない。でも、そうではなく、私は出来るだけ人と対話したいし、人と向き合っていきたい。

人と人との心が寄り添い合い、いのちの恵みや温かみを感じられるどこか懐かしい未来に

「令和」がそんな時代になればいいなと感じた新元号発表だった。


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