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Stormy Monday 〜 そのベストスリーを選ぶ

前説, そして歌詞について

この歌の「正式」タイトルは "Call It Stormy Monday (But Tuesday Is Just as Bad)", それと、「ベストスリー」と言っても、ブルーズ「愛聴」歴46年の拙者の嗜好によるということに過ぎないけれど。長く聴いてりゃ分かるなんてもんでもないからナンタラ歴ナン年なんて書くこともないんだろうけど、そもそも書いたように別に音楽「評論家」が書くようものをいま書こうとしてるわけじゃないし、ただわりと長いこと聴いてきたけど、結局やっぱこれだなと言いたい程度のことで。

さて、この曲のヒット(1948年)によって B.B. King などの数多のギタリスト達をそれまでのアクースティック・ギターによるブルーズからエレクトリック・ギターによるブルーズに向かわせた、その偉大な影響力に敬意を表し、投稿タイトル上の写真はこの歌の作者であり最初の演奏者であるテキサス出身のブルーズ・マン、ギタリストでシンガーの T-Bone Walker (May 28, 1910 – March 16, 1975) ♫

歌詞は以下の通りなんだけど(この段落の次の次の段落の下!)、荒れ模様あるいは嵐の月曜日から始まる「一週間」が歌われていて、同じく「一週間」の歌でも、このアメリカ合州国のアフロ・アメリカンによるブルーズの歌の歌詞は、拙者のような旧世代の日本人なら誰でも知ってるあのロシア民謡のあれとは大違い。つまりあれです、「日曜日に市場へ出掛け, 糸と麻を買ってきた, テュリャテュリャテュリャテュリャテュリャテュリャリャ... 月曜日にお風呂を沸かして, 火曜日はお風呂に入り」(なんで翌日に入るんだよ、笑)、それから「水曜日に友達が来て, 木曜日は送っていった」(泊まってったのかよ、彼氏かよ、笑)、そして「金曜日は糸まきもせず, 土曜日はお喋りばかり」、そのうえ「友達よ, これが私の一週間の仕事です」(ってどんな仕事なんだ、笑)、最後にまた「テュリャテュリャテュリャテュリャテュリャテュリャリャ, テュリャテュリャテュリャテュ〜リャ〜リャ〜!」ってな調子で(日露戦争ではなく第二次世界大戦後の!)戦後日本でもそんな日本語で歌われた、元々はロシア人女性の「一週間」の様子を歌ったものだという19世紀に作られたロシア民謡 ♫ .. あれとは大違い。因みにあの歌の日本語歌詞、あれは元歌のロシア民謡の歌詞にかなり忠実なものだったらしい。

ロシア民謡のあれの「一週間」はのどかな日曜日に始まって何やらほんわかとした一週間が過ぎていくのだが(ただしどうやら日本で日本語にして歌われたあれはロシア語の元歌と土曜日のみ異なっていてロシア語の元歌は「土曜日は死んだ人みなを追想するの」ってな意味らしいのだがまぁそれでも歌全体はほんわかムード)、アメリカン・ブルーズのこれの「一週間」なんかあれとは段違い平行棒ぐらいに違っていて(しかも段が大きく離れてる!)、嵐の月曜日に始まって火曜日もやっぱ悪い、水曜日はもっと悪い、木曜日は引き続き悲しくて、金曜日に給料が出たので土曜日には憂さ晴らし(遊び)に出掛けたんだが、日曜日には教会に行ってひざまずいて祈る、そして最後は「おお神よ, ご慈悲を。おお神よ, 私にご慈悲をお与えください。おお神よ, ご慈悲を。私はあまりの惨めさに打ちひしがれています。あの娘に夢中なんです。気が狂いそうです。あの娘を私のもとに戻してください」で終わってる。これがとにかく締めなんだから, "Lord have mercy, Lord have mercy on me. Lord have mercy, my heart's in misery. Crazy about my baby, yes, send her back to me." ♫ 

曲調だけでなく歌詞にも細かいところに違いがある様々なヴァージョンがあるが、でも歌詞は大筋としてはどのヴァージョンも同じ。以下はこの曲の作者 T-Bone Walker による、後で紹介するヴァージョンの歌詞。

*一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)より「著作権を有する音楽著作物の著作権を侵害している」旨, 指摘を受けた為, 当初 私の誤認識によりここに掲載していた歌詞・全編を削除し, 歌詞の一部のみの掲載に改めました。歌詞・全編に関心のある方は, 公式サイト等に掲載されているものを確認してください(2022.9.1 加筆/削除/編集)。

They call it stormy Monday, but Tuesday's just as bad ..
Yes, the eagle(*) flies on Friday, and Saturday I go out to play
Eagle(*) flies on Friday, and Saturday I go out to play
Sunday I go to church, then I kneel down and pray
Lord have mercy, Lord have mercy on me ..

* "Eagle" はアメリカの 1ドル紙幣の裏に描かれている Eagle つまり鷲を指していると思われ、flies となると「金が飛んでいってしまう」イメージになりがちな気もするが、後に続く "and Saturday I go out to play" から察するに、ここは「金が飛んでくる」ということだろう。おそらくは金曜日が(週給制の労働者である)この歌の主人公にとっての給料日で、金曜になれば「給料が入る」ってことなんだと思う。

Robert Jr. Lockwood

一番はなんと言ってもこれ。我がブルーズ「愛聴」史上最高のブルーズ・アルバム、今も燦然と輝く歴史的名盤 "Robert Jr. Lockwood & The Aces BLUES LIVE!" (1974年11月の日本公演でのライヴ音源, リリースは 1975年 *)に収録されたこれ。The Aces のギター(Louis Myers)のカッティングに(ってかあそこは Louis Myers が弾いてると思えばいいんだろうか.. )ロバート・ジュニア・ロックウッドがキーを叫ぶ声が重なり、ロックウッドのギター・ソロが続いていくイントロで始まる、ロックウッドの流麗なギター・プレイと哀愁を帯びたヴォーカルによる逸品。絶品。

Stormy Monday 〜 Robert Jr. Lockwood (March 27, 1915 – November 21, 2006) & The Aces LIVE in Japan 1974, from their 1975 album "BLUES LIVE!"

*一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)より「著作権を有する音楽著作物の著作権を侵害している」旨, 指摘を受けた為, 当初 私の誤認識によりここに掲載していた英語歌詞を削除しました。歌詞に関心のある方は, 公式サイト等に掲載されているものを確認してください(2022.9.1 加筆/削除/編集)。

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* 収録アルバムの全曲はこちらで(ってか YouTube 上にもあるけど、笑)。

The Allman Brothers Band

2番目はこれ。こちらも歴史的名盤、日本だけでなく本国・アメリカ合州国における知名度の上で、そして世界的な知名度の上で、前章で取り上げたヴァージョンの収録アルバムよりも遥かに有名なアルバム、オールマン・ブラザーズ・バンドの 1971年3月のニューヨーク・フィルモアイーストでのライヴを収録して同年7月にリリースされた 2枚組ライヴ・アルバム "At Fillmore East" に収録されたヴァージョン(以下にリンクを貼るのは 1992年リリースの完全ヴァージョン)。

悲しいかな, バイク事故で早逝した兄の Duane Allman (November 20, 1946 – October 29, 1971) だけでなく、今や弟の Gregg Allman (December 8, 1947 – May 27, 2017) まで亡くなってしまっているが、キーボード・ヴォーカルの Gregg Allman はもちろんのこと、スライド・ギターの名手(の二文字では形容しきれないけれど)Duane Allman も、Duane がバイク事故で他界した1年後にその事故現場の直ぐ近くでやはりバイク事故により亡くなってしまったベースの Berry Oakley (April 4, 1948 – November 11, 1972) も、このライヴの時は健在だった。

拙者、1991年1月11日に昭和女子大学人見記念講堂で妻とともにオールマン・ブラザーズ・バンドのライヴを観聴きしているが(ど迫力かつエンディングが延々ディングであるかのように延々と続く情念と魂のサザン・ロック, うまい修飾が思いつかない、笑)、その時はまだ Gregg Allman は元気いっぱいで、喉の奥を絞りきるようなあの独特の唱法による熱唱を間近で味わうことができた。

ではでは ... 因みに、最初のギター・ソロは Duane Allman, オルガン・ソロはもちろん Gregg Allman, そして後から聴けるギター・ソロは Dickey Betts によるもの。また、1971年の "At Fillmore East" リリース時は当時の LP レコード収録時間の制約からかこの曲演奏中のハーモニカ・ソロ(Thom Doucette, 筆者はこの人についてはよく知らない)がカットされていたのだが、 "At Fillmore East" の expanded version として 1992年にリリースされた CD 2枚組セット "The Fillmore Concerts" には、そのハーモニカ・ソロを収めた完全版が収録された。

Stormy Monday 〜 The Allman Brothers Band LIVE at the Fillmore East in New York City on March 13, 1971, from their 1992-release-CD set "The Fillmore Concerts" (originally included on their 1971 album "At Fillmore East")

*一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)より「著作権を有する音楽著作物の著作権を侵害している」旨, 指摘を受けた為, 当初 私の誤認識によりここに掲載していた英語歌詞を削除しました。歌詞に関心のある方は, 公式サイト等に掲載されているものを確認してください(2022.9.1 加筆/削除/編集)。

T-Bone Walker

T-Bone Walker の "Call It Stormy Monday (But Tuesday Is Just as Bad)", たいていの場合 "Stormy Monday" と略称されているけれど、とにかくこの歌はブルーズのスタンダードとしてトップクラスの有名曲で、実に色んな人が歌い、演奏している。名を挙げたい衝動に駆られるが、それやったら正真正銘、キリがないのだ。で、かなりいいカヴァーがいくつも存在するわけだけど、ここはやはり作者、最初の演奏者・歌唱者、御大 T-Bone Walker に登場してもらう。

しかしながら、ブルーズ大好きオヤジを自称する拙者、T-Bone Walker (May 28, 1910 – March 16, 1975) については CD を 1枚持ってはいるものの、超ド級に有名なブルーズ・マンなので当然のように知ってはいても、実際のところそれほど詳しいわけではない。

これがオリジナル ... かな。というのは、YouTube はじめググると色んなヴァージョンが出てくるのだが、これがオリジナルだろうというのは演奏時間がオリジナルの演奏時間にほぼ一致しているから!

*一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)より「著作権を有する音楽著作物の著作権を侵害している」旨, 指摘を受けた為, 当初 私の誤認識によりここに掲載していた英語歌詞を削除しました。歌詞に関心のある方は, 公式サイト等に掲載されているものを確認してください(2022.9.1 加筆/削除/編集)。

付録: 極私的 「ブルーズ」 元年1975年, そして遡って

付録というかおまけというか.. ♫

1) 極私的「ブルーズ」元年は 1975年。オールマンの "At Fillmore East" は既に聴いていたけれど、それとはまた別の話。

2) そのバディ・ガイから、当時9歳の我が息子がバディ・ガイ自身がその1, 2秒前までそれで弾いていたギター・ピックを手渡された日。

3) 我が息子がバディ・ガイからギター・ピックを直接もらった2002年の前年2001年(誕生日を過ぎてたので同じく9歳、笑)、その我が息子がハーモニカとタンバリンとコーラスで ブルーズ した日。拙者のギターとヴォーカルはともかく(ギターは下手くそ、ヴォーカルはフツー、「さておく」ことにする)、しかししかし、妻のピアノと息子のハーモニカ、タンバリン、コーラスは大したもんだぞ ♫

4) 今日のこの note 投稿の Robert Jr. Lockwood の章でもリンク貼ったけど、この付録 1) に(時系列的に)続くものとして欠かせないこれ。

5) 1) から遡ること 5年。「洋楽」なるものを聴き始めた頃の話。それとおまけのショッキング・ブルー「悲しき鉄道員」(日本でヒットした当時の邦題)の歌詞の拙者による拙訳ならぬ良薬(口に苦し)ならぬ自虐ならぬ自訳自賛の良訳(口に甘い, かどうか知らないが苦くない, まぁ歌詞の内容は苦いかもだけどね!)。というわけで 2点。


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