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文学をいかに広めるか?『ネオポップブンガク.inc』代表UI(うい)さんインタビュー

2022年6月現在『蜂屋うい』さんというお名前で活動されています。

文学の定義は難しい

 『文学』の定義がとても難しいと感じるのは私だけだろうか。私は『文学』と言うと、文豪が書いたものをイメージする。例えば、夏目漱石や川端康成の作品などがそうだ。では、「なぜ文学の定義が難しいの?」と言われると、『文学』とう文字を辞書でひいてみると『言語によって表現される芸術作品。文芸』ときたからだ。詩、小説、戯曲、随筆、文芸評論など、これらは狭義の文学の意味になるようで、私にしてみると定義はかなり幅広いように感じてしまう。

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(写真は秋田県仙北市の新潮社記念文学館で撮影した【雪國】のモニュメント)

 難しいことは置いておいて、「文学を読みたい」という気持ちがある人は今どれくらい日本にいるのだろうか。日販営業推進室出版流通学院「出版物販売額の実態2020」の出典をもとにしたガベージニュースさんのグラフによると、文芸の出版物の売上は2006年度に1471億円ほどあったが、2019年には768億円となり、半分ほどに落ち込んでいる。


 一方、青空文庫のアプリを入れておけば簡単に文学に接することができるし、文豪をモチーフにしたアニメも一躍有名になり、意外にも現代と文学はマッチしているようだ。

 『まだ駆け出し』というと失礼かもしれないが、草の根的に文学を新しい活動で広めようとしている人に話を聞くことができた。
 

 きょうは、#ブンガクアート で文学作品イメージをつくりつつ「教科書とは違うカタチでかわいく文学を楽しむ」をテーマに、『ブンガク』をポップに発信している、『ネオポップブンガク.inc』代表のUI(うい)さんに、文学を広める野望について話を聞いた。

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UIさんインタビュー

――活動を始めた理由・文学を融合させようとした理由を教えてください。

UIさん「『私自身が文学ネイティブファンだから』というきっかけではありません。『友人の目的を手伝うこと』がネオポップブンガク.incのスタートです」

――ご友人がきっかけ。
「ずっと短歌が好きな友人が、ネットを介して短歌を広めるための活動を個人でしていました。彼女は「短歌のオタク」を名乗って、「既存の文学ファンとは違った層に短歌の面白さをアピールできないか」と考えていました。「もっといろんな人が歌集を読んで、短歌というコンテンツが盛り上がればもっと好みの歌集に出会えるじゃん!」と」
「彼女は思うように『届け切れていないこと』に悩んでいて、時々活動について相談を受けていました。私が短歌に詳しいわけではなかったので活動のやり方、意義、インパクトといった、本の話よりも方法の話がメインでした」

――文学を広めるにも課題があったのですね。
「話を聞くに彼女の感じている問題の根っこには、文学ライト層が持つ『文学を好きになるハードルの高さ』があるようでした。『既存の文学ファンとまた違った層』にアピールすることの難しさに直面していました。話を聞きながら「普段から能動的に小説や詩集・歌集などを読んだり書いたりする人でないと、文章を楽しむという趣味自体がややクローズドでハードルが高いことに感じてしまう可能性があるな~」と感じました」
「そこで、彼女の野望を叶える手伝いをさせてほしいという話をしました。文学にこそ明るくなかったものの、不特定多数の誰かに何かをアプローチする行動や施策に興味があったし、画像作りやものづくりが好きだったので、「一緒に勉強しながらやっていこう!」という感じで『ネオポップブンガク.inc』立上げとなりました」

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「友人の野望を手伝う」という目的から生まれた物語。UIさん自身は、文学のコアなファンでないからこその視点を活動に生かしているようだ。

――文学を広めるに当たって意識していることは?
「今は活動を通じて少しずつハードルが低くなっている気がしますが、私も文学ファン、というわけではなく寧ろハードルを感じる側の一人です。だからこそ、アプローチしたい相手目線でいろいろ考えています。読んだり書いたりすることにハードル感じている層でも『直感的に楽しめるアプローチ』を。例えば、動画、画像、音楽、料理、ファッションを提案して、出来るものから実現しています」
「コンテンツの掛け合わせって面白いし。大仰(おおぎょう)な言い方になってしまうんですが、『読む+αの楽しみ方』を提案して、今まで以上に色んな人に「文学って面白いな~好き!」と思ってもらう。そしてそれを口に出せるきっかけを作って、その刺激から誰かが作品を生み出して――のサイクルができたら最高だな~と思います

「皆で共有して楽しめたらサイコー」

 インタビューを文字にすると、語尾に「だな~」などの波線や感嘆符がつくので柔らかい印象になるが、内容はマーケティングやデジタルを組み合わせて文学を広めようという、実は現実的なアプローチに感じる。2月末にひらいたショップについても教えてもらった。

――ショップ開店について。
「『ファッション』という分かりやすく直感的に楽しめる形で作品の世界を共有できるのはワクワクします。デザインによって色々な層へアプローチできるポテンシャルがあるし。本を全く読まない人がグッズを見かけて、「かわいいアイテムだな、あれ?これ何かの作品イメージなの?どんな作品だろう」と思ってググって(検索すること)もらえたら最高です!

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――3作品を選んだ理由は?(女生徒(太宰治)、吾輩は猫である(夏目漱石)、智恵子抄 レモン哀歌(高村 光太郎))
① ポピュラーな作家と作品②印象的なモチーフがあること③それらが視覚的に可愛く見えるものであることです。あえてそこまで深く考えずに選んでいます。あくまで「ライトに楽しもう」が核にあるので、こっち側で壮大なストーリーを用意しすぎなくてもいいかなと思っています」

――アピールポイントは?
「目的から逆算すると、既存の文学ネイティブファンから見てだいぶライトな発信をすることもあると思います。ただあくまで作品の一ファンとして作品自体を軽んじたくないと思うし、自分なりの作品への愛をもってイメージをつくっています。「皆で共有して楽しめたらサイコーだな」というのが本音です

――今後の展開について教えてください。
さりげなく日常で使えるものがメイン。トートバッグやステッカーとか、いろいろデザインで遊べそうなので楽しみです。読書に使えるアイテムも考えています」
ショップをオープンしましたが、今後のテーマが完全に文学グッズ販売に移行するわけではなく、あくまで文学を直感的に楽しんでもらうための取り組みの一部に過ぎません。ショップのテーマは、ライト層でも文学の世界の一端に触れられる機会をつくることです。基本の活動スタンスは変えず、引き続き #ブンガクアート で作品を作ったり、様々な形で「ネオポップブンガク」をお届けしたいと思っています!

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UIさんからの伝言板:


こちらのnoteも読んでいただけたら嬉しいです。
https://note.com/ui_chang_/n/ne06bcab8132d

N.P.Bのオフィシャルサイトに載せたコンセプトも、お目通しいただければ幸いです。
https://npb.buyshop.jp/about
(以下引用)
格式高く文学を楽しまなくてもいい。


読んだことないけど表紙がかわいいから、

つらいときに偶然見たあのポエムが刺さったから、

授業で読んだあの作品が思い出の片隅にあるから。


ネオポップブンガク.incはそんな微かな

「この作品すき!」

という気持ちを大切にしたいと思っています。


だから、

敢えて「本らしいデザイン」にはこだわっていません。

(文責 デイリーチャンネル編集部 取材協力 UIさん)

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