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時に海を見よ

 最近、色々と思うことがあるので、本棚にあった古い本を取り出してみた。10年以上前の本なのでかなり年季が入っていた。私は悩んだ時は必ず本から入る。悩み事は自分の頭の中だけで考えていてもしょうがない。思考するにはある程度の情報が必要だ。しかし、自分の頭の中にある情報は極めて少ないので、本を読み、偉大な方々の言葉を情報として頭に入れて、思考しなくてはならない。

 本書、「時に海を見よ これからの日本を生きる君に贈る」(渡辺憲司、双葉社)は2011年6月19日に第1刷が発行されました。著者は立教新座中学校高等学校の校長。その3ヶ月前の3月には例年同様卒業式が行われる予定でした。しかし、2011年3月11日の東日本大震災の影響で立教新座高校の卒業式が中止になったため、卒業生へのメッセージを学校のHPに載せたところ、それが反響を呼び書籍化されたものです。

 この本は、できれば大学生になる前の高校生に読んでいただきたいです。本書の中で著者は大学に入ることについて以下のように語っています。
 
 「大学に行くというのは、遊ぶことでも友人を得ることでもない。海を見るという自由を得ることだ。海を見るとは、孤独を直視することである。海原の前に一人立って、自分の夢が何か、海に向かって問え」

 大学生でいられる時間は限られています。決してその時間を無駄にするなと強い言葉で語られています。

 また別の節で渡辺氏は、原発事故に対して、これからを生きる高校生に対する自責の念を述べています。

 「原子力発電所の事故をみて、私自身が何をしてきたのかと問う。高度成長の時代に身を任せ、必要を越えた豊かさを求め、私たち大人は若者に大きな負の遺産を残してしまったのではないか。」

 もちろん、原発事故は著者自身の責任ではありません。しかし、原発は安全なものだとたかを括り、危険な部分には見向きもせず、恩恵ばかりに目がくらんでいた。そして、その被害を受けるのはこれからを生きる若い者たちであって、自分たちではないことに対する申し訳なさを伝えています。しかし、この教訓からは私たちも学ぶべきです。この事故は過去に起きたものだと捉えるのは浅はかです。やるべきことがあると発起するべきです。これからもこのような事故が起きる可能性は十分にあります。これからを生きる人達が尻拭いをしなくてはいけないことが起きるかもしれません。地球温暖化はまさにそうでしょう。私たちは未来を生きるものたちのために地球温暖化を解決しなくてはいけません。

 元東京大学教授の養老孟司氏も自身の著書「自分の壁」(新潮新書)で似たような問題に対して意見を述べています。

 「議員は選挙で票を取ることに必死になるので、長期的な議論ができない。であれば、長期的に考えるべきテーマを参議院が担えばいい。政局と関係なく、長期的にエネルギー、海や山など自然の問題を考えるべきだ。

また、別の節では、

 「頭が良くなりたいならば、自然のものを1日に10分でいいから見るようにしなさい。それでどうなるかと聞かれても、やればわかる」

 このように1日に自然を一度も見ることがない都会の人たちに対する危機感、また自然を見ることの大切さ、重要さを述べています。

 台湾のデジタル担当政務委員のオードリー・タン氏は自身の著書「まだ誰もみたことのない『未来』の話をしよう」(SB新書)では以下のように述べています。

 「我々は100年後の世界を生きる人々が、自分たちでさまざまなことを決めることのできる可能性を奪ってはならない

 やはり渡辺氏や養老氏と本質的に同じことを言っています。

 他にもあります。以前に紹介した本「パパラギ」の中でも以下のような言葉があります。

 「物がたくさんなければ暮らしていけないのは心が貧しいからだ

 人間はこれ以上の豊かさを求めていいのか、また、求めなければならないのか、考えなくてはいけない時が来てると思います。その時が来てると言ってもこの本は100年以上も前からある本なので、約100年を無駄にした結果、2011年の事故が起きてしまったのではないでしょうか。その事故の尾ひれは現在、「中国の日本からの海産物の輸入規制」となって日本を叩いています。

 先日、日経主催のセミナーで国連の根本かおる氏が示した「SDGsの達成状況」を示したデータをみたのですが、到底順調とは言えないものでした。未来を生きる人たちのために何をしなければならないのか、逆に何をしてはいけないのか、温暖化に関しては今年の猛暑を経験した今、改めて考えなくてはいけないと思います。

参考文献:
 「時に海を見よ これからの日本を生きる君に贈る」(渡辺憲司、双葉社)
 「自分の壁」(養老孟司、新潮新書)
 「まだ誰もみたことのない『未来』の話をしよう」(オードリー・タン、SB新書)
 「パパラギ」(立風書房)

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