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書評~マンガでわかるWebマーケティング~

動機

こちらの記事の本を読んだ際に、行動経済学はマーケティングを理論化したものであるという見方を知ったため、マーケティングにも入門することにした。また、普段からGoogle Analytics(GA)によってQiitaのアクセスを観察しているため、マーケティングの中でもWebマーケティングに入門することにした。

書評

良い点
・マンガや実例が適切に含まれているため、状況を想像しやすい
・Webマーケティングを概観できる

悪い点
・文章の中に図が少なく、情報の整理をするのが難しい
・目次がないので、出てきた用語等を検索できない
・所々で説明のない用語が出てくる

感想
Webマーケティングだけでなくマーケティングの説明もあり、少しでも携わったことのある人なら読みやすい本ではないかと感じた。ただ、一部のマーケティング用語の説明が省略されているなど、全くWebマーケティングに変わったことのない人にとっては難しい印象を受けた。

要約

下記に章ごとの要約を示すが、説明の再構成や省略等を行なっている。また、この本の良さはマンガや実例にあると思うので、本要約をサポートとして用いるのが良いかもしれない。

序章 Webマーケティング?デジタルマーケティング?

・マーケティングとは?
マーケティング自体の定義は様々であるが、ここでは「売り上げが上がるための戦略、考え方、それを実現させるための仕組み・施策・運用手段の全て」と定義する。

・マーケッターとは?
マーケティングの仕事をする職種のことで、所属や機能といった観点から分類することができる。ただ、マーケッターの仕事は横断的であるため、職務領域は個人によってだいぶ異なる。また、所属としてはメーカーや広告代理店やコンサルティング会社など様々であり、機能としても営業や企画や分析など様々である。

・Webマーケティング vs デジタルマーケティング
前者はWebにおけるマーケティング活動全般を指すが、後者はWebマーケティングに加えてデータベースマーケティングの要素も含む(後述)。ただ、マーケティング戦略における目標の達成という観点では同じであり、本質的にそこまでの差異はない。

・Webとは?
Webの施策には、コーポレイトサイト、メディアサイト、SNS、ブログ、ECサイトなど様々なものが含まれる。また、IoTが登場したことからもわかる通り、Webの対象範囲は今後広がっていくと考えられる。

第1章 瞳を取り巻く環境とWebマーケティングで使われる指標

・PV(Page View)とは?
Webサイトのそれぞれのページの閲覧数のことである。GAの場合、ブラウザでそのページを読み込むたびにPVが増加する。また、ページへのアクセス数とも呼ばれる。

・UU(Unique User)とは?
Webサイトを訪問したユーザー数のことである。GAの場合、CookieによってユーザーIDを記録することでUUを測定している。ただ、複数のデバイスで閲覧している場合は重複したカウントとなる。

・セッション数とは?
Webサイトへのユーザーの訪問回数のことである。同じサイトのページを複数見ながら作業を行う場合、PV数はそれぞれのページで増えるもののセッション数としては1回である。GAの場合、セッションの区切りを「行動間隔が30分以上の場合」と「日付が変わった場合」として定義している。また、Webサイトへのアクセス数とも呼ばれる。

・1人あたりの指標を評価する
「1人(1ブラウザ)あたりのPV数 × UU = 全体のPV数」であり、一般には「1人あたりのPV数」が多いほど質の高いWebサイトと言える。したがって、「1人あたりのPV数」を指標として用いることも有効と言える。

・CV(Conversion)CVR(Conversion Rate)とは?
CVは購入数や申し込み数などのWebサイトの目的を表す数値のことである。また、CVRは顧客がWebサイトの目的に至った割合を表し、CVをUU数やセッション数などで割ることで求められる。一般のECサイトの場合は「CVR = 購入件数 ÷ セッション数」であり、一般の資料請求サイトの場合は「CVR = 資料請求者数 ÷ UU数」である。また、CVRを元にして効果予測を立てたり達成割合を評価できたりと、様々な使い方をすることができる。

・CTR(Click Through Rate)
ユーザーの表示した回数に対するユーザーのクリック数の割合のことである。Webマーケティングの施策がユーザーの心をどれだけ掴んだかがわかる指標とも言える。また、リスティング広告(後述)では「クリック数÷表示回数(インプレッション数)」により、メール配信では「クリック数÷メール配信者数 or メール開封者数」により求めることができる。

・CPA(Cost Per Acquisition)
1件の成果や顧客を獲得するのにかかった広告費のことである。販売サイトでは1人の顧客が商品を買うのに費やした広告費、資料請求サイトでは1人の顧客が資料を請求するのに費やした広告費のことを指す。また、CPAは業種、業態、商材、などによって目安とする金額が異なる。

・ROAS(Return On Advertising Spend)
広告費に対してどれだけ売り上げを得られたかを表す指標のことである。また、デジタル領域での売り上げを目標とする場合、CPAとROASのどちらをKPIとすべきかが問題となる(後述)。

・CVRの算出にセッション数とUU数のどちらを選ぶべきか?
CVRを求める際にセッション数とUU数のどちらを使うかは、Webサイトでのユーザーの動きを予測し、施策への効果を正当に評価できるかを元に判断する。ECサイトの場合は必要に応じて商品を買うことが多いのでセッション数を選ぶと良く、保険会社や銀行などの契約系または申し込み系のサイトの場合は1人1回が基本のルールとしてあるのでUU数を選ぶと良い。

第2章 KPIなしでは語れないマーケティング

・KSF、KGI、KPI、とは?
それぞれ、Key Success Factor(重要成功要因)、Key Goal Indicator(重要目標達成指標)、Key Performance Indicator(重要業績評価指標)の略である。KSFはKGIを達成するための要因であり、KGIは最終目標を数値化した指標である。そして、KPIはKSFに基づいて作成した施策ごとの目標を数値化した指標である。

・KPIの基本の策定方法
まず、KGIを設定する。「年間売り上げ目標」はKGIに相当する。次に、設定したKGIをKSFへと落とし込む。「(ECサイトにおける)セッション数」はKSFに相当する。そして、落とし込んだKSFに基づいてKPIを設定する。「(ECサイトにおいて、)月間セッション数を10000にすること」はKPIに相当する。一般には、設定したKPIを因数分解することでさらに細かいKPIを策定していく。また、KSFやKPIの策定の際には、これまでの経験等に基づいて要素を分析することが最も重要である。

・KSFやKPIの策定で注意すべきこと
 - 業態や業種などにより異なるので、KSFやKPIを真似するのは無意味
 - KSFには内的要因だけでなく外的要因も含まれ得る
 - 策を講じても変化のない指標をKPIとして選ばない
 - メディアや販路は手段であり、一気通貫のKPIを策定するべき

・CPAとROASのどちらをKPIにすべきか?
「マーケティング効率」という観点から比較するとわかりやすい。まず、顧客が一定の単価で一定期間購入する場合、新規の顧客獲得にマーケティングの費用をかけるため、CPA(Cost Per Acquisition)の方がKPIに適する。一方、購入単価の分散が大きく、購入時期や回数も不連続なECサイトの場合はROAS(Return On Advertising Spend)の方がKPIに適する。

第3章 お客様はどこからやってくるのか?

・アクセス解析の基本
ユーザーのアクセス解析はWebに限らずマーケティングにおける基本的な課題である。また、GAのようなアクセス解析ツールを使うことで、ユーザーのアクセス解析を行うことができる。

・オンライン広告の種類
オンライン広告のうち、リスティング広告、ディスプレイ広告、ネイティブ広告、リターゲティング広告、の4種類をここでは扱う。まず、リスティング広告(検索連動型広告)とは、検索エンジンの検索結果ページに表示される広告のことである。また、リスティング広告を除いた検索結果のことを自然検索結果と呼ぶ。次に、ディスプレイ広告とは、Webサイトやアプリの広告枠に表示される広告のことであり、バナー広告だけでなくテキスト広告や動画広告も含む。また、ネイティブ広告はディスプレイ広告の一種であり、Webサイトなどでコンテンツと同様の形で掲載されている広告のことである。そして、リターゲティング広告とは、過去に自社サイトにアクセスしたユーザーを追跡して別のWebサイトで再度表示する広告のことである。

・GAにおけるアクセス方法の分類
GAの画面の「集客」メニューからユーザーのアクセス方法を調べることができる。「集客」メニューの項目名には、Direct、Paid Search、Display、Organic Search、Referral、Social、Email、Other Advertising、(Other)、がある。また、下記にそれぞれの項目についての説明を付与する。
- Direct:ブラウザのブックマークやURLの直接入力などからのアクセス
- Paid Search:リスティング広告経由でのアクセス
- Display:ディスプレイ広告経由でのアクセス
- Organic Search:自然検索結果によるアクセス
- Referral:他のWebサイト経由でのアクセス
- Social:SNSやブログ系サイトを含むソーシャルメディア経由でのアクセス
- Email:Emailに含まれるリンク経由でのアクセス
- Other Advertising:他の項目に分類されない広告経由でのアクセス
- (Other):他の項目に分類されないアクセス

・アクセス解析によりわかることは?
アクセス解析によってカスタマージャーニーおよびWebサイトへの流入経路を高い精度で推測することができる。また、カスタマージャーニーとは顧客が商品やサービスを知って購買する中で辿る一連の感情や思考や行動のプロセスのことである。

・LPO(Landing Page Optimization)とは?
LP(Landing Page)には広義のものと狭義のものがある。前者の場合はWebサイトにアクセスしたユーザーが最初にアクセスするページのことであり、後者の場合はユーザーのWebサイト上での行動を誘導することに特化した1枚の縦に長いページのことである。そして、LPOとは狭義のLPをユーザーの興味の強さや対象に合わせて最適化させることでCVRを上げる手法のことである。アクセス解析により推測した流入経路のパターンを用意し、リアルタイムでユーザーの流入経路を識別することで、それぞれのユーザーに最適化されたLPを表示することができる。また、自動化されたLPOツールやAIを用いたLPOツールも近年は登場している。

第4章 クライアントとコンサルタントのすれ違い

・コンサルティングの仕事の進め方
2,3本の案件を一人で同時に回すことは一般的である。ただし、大きい予算をクライアント企業から任されている場合は場合は専任のチームを作って対応するケースも多い。また、競合企業が重複しないための工夫等も行う。

・コンサルティングと広告代理店の違い
コンサルティング会社は「コンサルタントの稼働時間に応じた報酬+施策の実施費用」が費用となるフィー型のビジネスであり、クライアント企業の抱えている課題を解決するための戦略の立案や施策の提案を行う。広告代理店は「販売する広告の枠代+営業手数料+クリエイティブ製作費」が費用となるコミッション型のビジネスであり、クライアント企業の広告活動を代理で行う。したがって、課題解決のための分析等を行えていない場合はコンサルティング会社を利用すると良く、分析等を終えて施策が決まっている場合は広告代理店を利用すると良いと言える。

・コンサルタントの価値について
コンサルタントの能力としては、業界や分野に関しての専門知識や場を調整し遂行する能力等が挙げられる。コンサルタントの価値が理解されないことも多いが、コンサルタントとクライアントの間で「どこにお金がかかるのか」についての認識を共有することが最も重要である。

・コンサルティングは問題を必ず解決できるのか?
コンサルティングは組織を対象にした医者と言える。つまり、医者と同様に、問題解決のための施策を行うことはできるが、必ず解決するとは限らない。しかし、シミュレーションや効果予測をその都度行うことにより、解決する確率をできるだけ上げていくのがコンサルティングのあり方である。また、コンサルタントとクライアントの間で信頼関係が必要であるという点も医者と同様である。

第5章 デジタルマーケッターたちの今

(本章は独自性が多く含まれるため、割愛している部分が多い。)

・企業がWebサイトを作る際に意識すべきこと
 - 目的や狙いを持つ
 - PDCA(後述)を回して常に最適解を模索する
 - 顧客の反応を適切に反映する
 - Webサイトはブランディングに繋がる

・デジタル分野と経営層の関わり
「デジタル」を導入するには金銭コストだけではなく心理コストもかかるため、経営陣が「デジタル」の重要性を認識して導入するのが重要である。また、本業とは異なる部分にも力を入れることで競合他社との差別化を図ることもできる。

第6章 Web、デジタル時代のトラブル。正しい付き合い方

・トラブルの分類
 - Webサイト:サイトのダウンやリンク切れ、第三者による改竄、など
 - メール関連:メールの誤送信、ウイルス感染、など
 - SNS等:SNS等での炎上や誤記、など
 - コンプライアンス:個人情報の流出、規約の内容、など

・トラブルへの対処
トラブルが起きた時、迅速かつ正確に状況および原因を把握して対処することが一般には最重要である。また、労働災害における経験則であるハインリッヒの法則でも述べられているように、1つのトラブルが起きた際にはそれよりも軽微なトラブルが複数起きていることが常である。したがって、そのトラブルの再発防止のために原因を分析する必要がある。ここで、業務をフローチャート化するとと分析はスムーズである。なぜなら、フローチャートによって業務が可視化され、個人の責任の領域を明確にできるからである。

第7章 デジタル時代のデータ活用マーケティング

・データベースマーケティングとは?
データベースマーケティングとは、顧客の行動履歴や属性データをデータベース化し、これらの情報を元に顧客の嗜好等を分析してサービスを提供するマーケティング手法のことである。

・ビッグデータとは?
企業の事業活動において生成される任意の大量のデータのことである。そして、ビッグデータは事業に役立つ知見を導出するデータとして期待される。また、テクノロジーの進化によって、取得できるデータの数が増え、データ管理や保存のコストが下がり、短時間で大量のデータを処理できるように変化したため、ビッグデータが脚光を浴びるようになった。

・DMP、DWH、とは?
DMP(Data Management Platform)とは、ビッグデータを管理して分析することで効果的なマーケティングを実現するためのプラットフォームのことである。また、DWH(Data Warehouse)とは、経営の意思決定やマーケティングに利用可能な状態でデータを格納するためのプラットフォームである。つまり、データの管理という点では共通しているものの、前者の場合はマーケティングへの活用という点を重視し、後者の場合はデータの利用可能な状態での管理という点を重視する。

・2種類のDMP
DMPにはプライベートDMPとオープンDMPの2種類がある。プライベートDMPは自社が保有する顧客情報などのデータ(1st Party Data)を管理するプラットフォームであり、オープンDMPは他のWebサイトのデータを含む自社では収集の難しい外部のデータ(3rd Party Data)を管理するクラウド型のプラットフォームである。この2種のDMPと後述のMAを組み合わせることで、効果的なマーケティングを実現することができる。

・MA(Marketing Automation)
マーケティングの施策を自動で行うためのツールやプラットフォームなどのことである。また、業務要件が整理されて自動化したいことが明確であることがMAの導入条件となる。

第8章 成功と失敗の間で 

・マーケティングの成功要因
マーケティングで成功するには、顧客視点に立ってカスタマージャーニーを想像し、顧客の体験設計をすることが重要である。また、カスタマージャーニーを図解化したのがカスタマージャーニーマップであり、作成することで課題解決への道筋を立てやすくなる。

・PDCAを回す
PDCAとは、事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の一つである。Plan→Do→Check→Actの4段階を繰り返すことで業務を継続的に改善することができる。PDCAをスキーム化して継続することはマーケティングに限らず任意の業務において重要である。

第9章 Webマーケティングからデジタルマーケティングへ

・マーケティングの本質は変わらない
Webでもデジタルでも方法が異なるのみでマーケティングの本質は変わらず、これから先も変わらないという意識を持つことが大切。また、広告の種類もテクノロジーの進化により増えているが、伝え方が変わっているのみ。

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