視座を軸にした成長戦略

はじめに

自身と組織の成長を目指し、1年半の間にエンジニアのメンバーレベルからテクニカルプロダクトマネージャーやプロダクトオーナーに至るまで、様々な役割を経験しました。この過程で、視座を自身の成長軸として設定したことが経験の質を高める鍵であったと感じています。そのため、この記事では、事業会社でエンジニアが視座を軸にして成長するための戦略を紹介します。

視座とは

視座とは、対象を扱う際の立場や視点を指します。視座の向上には、2つの重要な側面があります。

1つ目は、思考対象の抽象度の向上です。局所的な問題解決から全社的な影響を考慮した全体最適の意思決定へと段階的に移行する必要があります。また、事業会社のエンジニアの思考対象の抽象度は、具体的な機能から始まり、ユースケース、プロダクト、事業、会社全体の順に向上すると考えられます。つまり、視座を向上させることは、同時に視野を広げることを意味します。

2つ目は、抽象度に応じた立場の向上です。抽象度の高い思考対象を実際に扱える能力を、業務の成果として示すことが重要です。また、立場が向上することで、コミュニケーションを取る範囲が広がり、考慮すべき対象事項が増えます。

参考:Engineering Career Ladder @ LayerX

視座の向上のための手順

1. 自身を客観視する

現在の視座と視野を客観的に見つめ直し、目標とする視座との乖離を認識するためには、戦略的に必要な行動を計画することが必須です。また、客観的な自己評価を行うためには、他者との対話が非常に効果的です。

自分の場合、会社内では1 on 1、会社外では転職活動での面談/面接が結果的にその機会となりました。実際、2023/04から2023/12にかけて10人と100回以上の1 on 1を実施し、2023/07~2023/12にかけて38社と61回の面接/面談を受けました。

2-1. 知識を獲得する

知識の獲得は、視野を広げるために必要な行動です。自分の場合、関心がある分野のLTや勉強会の参加、業務に関する調査などに加え、営業日あたり30分のインプットの時間を確保しています。

また、現在の視座だけでなく目標とする視座で必要な知識も並行して獲得することで、視座の移行がスムーズになります。また、より高い抽象度の情報処理能力を養うことができます。

2-2. 機会を創出する

現在の業務に集中して期待以上の成果を出すことで、新たな機会を創出する可能性を高められます。また、コミュニケーション上の工夫を通じて信頼関係を構築することも、機会創出のためには重要と考えられます。自分の場合、期待の1.5倍の仕事をすることを常に意識し、Slackでも積極的にコミュニケーションを取ってきたため、多くの機会を得られたと考えられます。

ただ、自分の目指す方向と組織の期待が常に一致するとは限りません。目標と期待の間に乖離がある場合、それを埋めるための努力はもちろん必要ですが、時には自分自身の成長と実現のために環境を変えることを選択することも必要になるかもしれません。自分の場合、より高い視座で挑戦できる機会を得るために、環境の変化を選ぶ決断を昨年にしました。

視座を軸にした成長例

自分の今までのキャリアを具体例として紹介します。また、対象のイメージを補填するために、背景と行動を追加しました。

2022/06 ~ 2022/10

  • 役割:フロントエンドエンジニア / バックエンドエンジニア

  • 業務内容:新規プロダクトの開発業務

  • 対象:機能→ユースケース

    • 背景:開発業務を実質一人で担当する必要があった

    • 行動1:POとのユースケースを考慮した仕様調整

    • 行動2:開発に関連する任意の資料の継続的なキャッチアップ

2022/11 ~ 2023/03

  • 役割:開発生産性向上エンジニア

  • 対象:ユースケース→プロダクト

    • 背景:開発チームの生産性を向上させる必要があった

    • 行動1:POを含めたプロダクト開発チームの生産性改善への着手

    • 行動2:ユーザー価値を考慮した機能開発への着手

2023/04 ~ 2023/11

  • 役割:テクニカルプロダクトマネージャー / プロダクトオーナー

  • 対象:プロダクト→事業

    • 背景:プロダクト開発を根本から変える必要があった

    • 行動1:組織設計や開発フローなどの見直し

    • 行動2:ユーザー価値や事業価値の見直しへの着手

※ 開発チーム:エンジニアのみ
※ プロダクト開発チーム:開発チーム+プロダクトマネージャーやデザイナー

まとめ

この記事を通じて、視座を軸にした成長戦略について探究しました。また、会社の提供する枠組みを利用しながら、個々人の目標、状況、価値観に合わせて成長戦略を計画すべきであると自分は考えます。この記事が成長戦略の計画の一助となれば幸いです。

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