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HOTELブルーローズの99の部屋 【デザイン制作秘話】 この設定の解釈は見る側に委ねます〜 ※ネタバレあり

「ようこそ、夢が叶う夢の館へ。HOTELブルーローズの99の部屋」のUIデザインを担当した加嶋です。

『HOTELブルーローズの99の部屋』は、謎解きを通して参加者が「物語の登場人物」になったかのような体験ができるリアル脱出ゲームの企画、運営を行うSCRAPさんから発売された「オンラインリアル脱出ゲーム」です。

私が担当したデザインの一部はこちらです↓

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ありがたいことに、サバンナ高橋さんやこじるりさんなど芸能人の方たちにもプレイしていただいたようです…。感謝!

このオンラインリアル脱出ゲームは、2022年2月17日より配信がスタートし、さらにリアル脱出ゲームとしては本来タブーなネタバレ投稿が公式に解禁され(※投稿に関するガイドラインを守る必要あり)、開発者目線でネタバレ記事を書いてみようというのが、この記事の趣旨になります。

ファミ通.comさんに取り上げていただいた、SCRAPさんとゲーム開発を担当したTAMとの対談記事はこちら↓

謎解きゲームを作ることで、また別の謎を解いている

さて、本題に入りたいのですが、少し別の話題に。
皆さんは映画やドラマを制作した監督が「この設定の解釈は見る側に委ねます」と言ったようなコメントを聞いたことがありませんか。

今回、私はSCRAPさんから受け取った謎解きシナリオを読み解き理解し、それがどうしたら人に伝わるか、ストーリーや世界観のつなぎ目を自分で想像しながらデザインを考えました。
自分の感覚としては、謎解きゲームを作ることで、また新しい別の謎を解いているような、ゲームを作りながら「謎の謎を解く」。そんな入子構造的な楽しみを持って、デザインをしていきました。
もちろん、私の想像だけでは誤った解釈をしてしまうかもしれません。なので、ある時は議論や検討をしたり、またある時は自分だけの裏設定を持っていたり。そして、またある時は実は解釈が分かれていたり…といったこともあったのかもしれません。全てを答え合わせしたわけではないので、ゲームが発売された後でも、その楽しみは自分の中で今も続いている気すらします。

それでは、前置きが長くなりましたが、いくつかのシーンを紹介したいと思います。

①誰から送られてきた手紙なの?

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このシーン、一度プレイした人には見覚えがありませんか?
プレイしたことがない方に説明すると、ゲームスタートした最初の画面に登場するシーンです。

「ある日、あなたの元に送り主不明の手紙が届いた。」
具体的にはどんな手紙なのか、詳しい情報はここでは伏せておきます…。
少しだけお話をすると、この手紙はゲームそのものにアクセスするために必要な道具なんです。

さて、ここで本題。この手紙を送ってきたのは誰なのでしょうか。
答えはこのホテルの秘密を知っている"誰か"です。

ある者は「遺産が隠された部屋を見つけて大金持ちになった」と言いました。またある者は「聖なる部屋で祈りを捧げたところ、神と交信できた」と言いました。
更には「悪魔と取引し、魔術を手に入れた」という者まで。
しかし、その後このホテルを調べた探偵は告げました。
「『このホテルのおかげで願いが叶った』と言った人物は皆いなくなっている」と…。

「HOTELブルーローズの99の部屋」公式Webサイトより引用
https://realdgame.jp/hotel-bluerose/

公式Webサイトには、このようにヒントになりそうな内容も書かれています。だけど、このゲームの結末を知っている私にも、この"誰か"が一体"誰なのか"わかりませんでした…。なので、最終的にこの"誰か"は、誰かわからない=顔がわからない人物で表現することにしました。

②エピソードの最後に出てくる、ちょっと怖い質問、誰がしてるの?

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このシーン、一度プレイした人には見覚えもあるではないでしょうか。各エピソードの最後に何度も出てきましたよね。

さて、このちょっと怖い質問を"誰が"しているのでしょうか。
これも答えは一つ目と同じで、このホテルの秘密を知っている"誰か"なのではないでしょうか。
この質問がなぜ怖いのかというと、謎を解き終えてホッとしている時に、不意に懐をつかれるようなドキッとする質問が出されます。
真に受けてきちんと答えるのか、斜に構えてなんとなく答えるのかはプレイヤー次第。だけど、最後にはアッ…と驚く"何か"で表現されるんです。一度プレイした人は知っていると思いますが、プレイしていない人はぜひ体験してみてください…!

このシーンで使われている背景イラストについて、解説します。
上にも書きましたが、ゲームをプレイしている中で、急にちょっと怖くて怪しげな質問が出てくるわけです。あれ?答えるごとにちょっとづつ色が背景の色が変わっているような…(プレイした人にはわかる)。
これがゲームの本編自体かというと、そうではないのかもしれません。
このシーンでは、怪しげに歪んだホテルのイラストを背景に使うことで、プレイヤーがゲームの中で、少し別の世界に迷い込んでしまったのかもしれないということを表現しました。

③「設計図」は誰が削除したの?

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そして最後は、ゲームも最終盤こんなシーンが出てきませんでしたか。
設計図というのは何でしょう?プレイしたことがない方に説明すると、これはホテルの設計図のことです。
その設計図をダウンロードするか、削除するか、プレイヤーは選択を迫られるわけです。一度プレイした人にとっては、一番悩ましい選択だったかもしれません。

削除を選択した人はもうお分かりでしょう。削除と言っても、設計書がまるまる消えてなくなってしまうわけではありません。「設計書を削除」を選択すると、「設計図をダウンロード」を選択すると見ることができたはずの設計図がズタズタに壊されて、中身が何もわからなくなってしまいます。

さて、ここで質問です。「設計図を削除」は"誰が"削除したのか?
これはプレイヤーである"あなた自身"です。最初の手紙にも書かれていた通り「HOTELブルーローズの99の部屋」を調査する権利をあなたは得て、自分の意思で謎を解き終え、そして"自分の意思で"設計図を削除したんです。
もちろん、このゲーム自体がこの設計図をあのように壊したことになるのでしょうが…。削除すること決めたのは"あなた自身"だからです。
これはぜひ、ゲームをプレイしたことがない人、「設計書を削除」を選択しなかった人も、設計図がどのように削除されたかを自分の目で確かめていただきたいと思います。

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最後まで記事を読んでくださり、ありがとうございました。
私は普段、企業が提供するデジタルな"何か"を作っています。
デジタルには馴染みがあり、ゲームデザインには馴染みのない私が、今回SCRAPさんが企画された「オンラインリアル脱出ゲーム」に携わらせていただき、とても光栄でした。
「ユーザーにどういった体験を届けるのか」を考えることは、どんなものを作るにも共通することだと、改めて実感する機会になりました。

「HOTELブルーローズの99の部屋」チケットの購入はこちらから↓
※リアル脱出ゲームはSCRAPの登録商標です。

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