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神のDB(025)

(025)ビビビッっとしてますぞぉ~|ω・)どうぞ~

前のお話:https://note.com/daikiha/n/n9a057eb3b6b6

後のお話:https://note.com/daikiha/n/nf60a8ccf1d64


【参】

心を揺さぶられる感覚に襲われることは、いつも突然だ。

そんな感覚に人はいつも戸惑う。
そしてその感覚を、
信じる人、信じない人。
信じる心、疑う心。

異なる二つの心を、それぞれ持つ人達は、
感じた感情は同じでも、
異なる行動をとる。

感じた感情に素直に動く人。
感じた感情に疑い動かない人

でも、もしその人の心が、
想いと関係ない力で決められているものだとしたら、
それに気付かず、自分の想いと信じてしまっている人の心は、

やがて創られた「感覚」に支配される。


【7】

『いいのぉ~。』

春がく~れば思い出すぅ~、遥かな

『胸~』

遠き空ぁ~

『想いも思い出す。うーん、詩的だねぇ~』『なんかウザイ』(パシュ!!)『ハブゥワァァ!』
綺麗なジャブがボクの左頬に刺さる。

『おう、相変わらずのいいジャブもってるじゃねぇかぁ、ますみよぉ~。目が覚めたぜ。』『そう、それはよかったわね。感謝しなさい、跪きなさい、土下座しなさい。』『おいおい、ますみ様。その辺で、』『そして、死になさい』『って!人の話を!』『虫が跳んでるわね、うるさいわ、潰そうかしら』『って、そうそう、マスターぁ』話をそらす。
でないと殺される。潰される(プチっと)

話を振られたマスターは『はい、なんでしょう、ダイキさん。』と律儀に返事をしてくれた(ありがとう!マスター!)
『いえですね。やっぱり人生、「出逢い」ってあるんですね。なんていうか、「ビビビ」って奴ですか?』『ああ、結婚3回している某有名な元アイドルが仰っていらっしゃいましたね、昔、そのようなことを。』
『そうなんです、感じるんですねぇ。そういう人とは。逢って直ぐですよ。はうぅ~』
と、そのままカウンターにぐでぇ、っと崩れるボクに、

『ダイキさん、今日は何か出逢いがあったんですか?』
『なに?また「出会い系サイト」で女でも買ったの?この素人童貞。』
『いや、それがですねぇ。マスター。今日はいい子に当たりまして、って! 違うわ!というか素人童貞じゃないわ!出会い系はみんな素人じゃ!』
『はぁ~、残念ね。ほんとに残念。出会い系が素人のみだと思っているあんた、残念だわ。殆どがどこかのヘルスやソープ店の定員が登録しているのに。』
『え!うそぉ!!!!! なに!素人じゃないの!そうかぁ。道理で洗い方がうまいと思ってたんだよ。くそぉ。。騙された。そういえば、待ち合わせ場所も日暮里とか鶯谷とか大塚とか巣鴨とか池袋とか、ええと、あとは・・』『もういいわ』(バキィ!!)『あぐぅ!!』今度は右頬やや下側に綺麗にストレートが入った。
『あおうぅぅ』このアマぁ~、綺麗に脳震盪まで起こさせやがってぇ~。
『ますみ様ぁ。。。すみませんが、突っ込みにプロの技を入れるのはご勘弁くださいませぇ~。意識が朦朧と・・』
『おやおや、ダイキさん。本日はそのような出逢いがあったのですかぁ。なるほど、さすが救世主様、お話が深い。感服いたしました。』
っと、マスターがよくわからん納得で頭を下げる。って
『いえいえ!!違いますよ!マスター! そんなんではないっすよ!ちゃんとした綺麗な純白で真っ白な出逢いですよ!今日、会社の打ち合わせで出会った人なんですよ。』
『はあ、なるほど、会社で、ですか。どのような方なのですか?』
と、マスターが普通に返答してくれる。
後ろではますみがこっちをみて「じっ」っとみている。・・まあ、やっと話を元に戻れるな。

『はい、それがですね、取引先の会社の人なんですが、いや~、会議に遅れて会議室に入ってきた瞬間から「ビビビ」だったんですよぉ。なんか、すべてがボクの好みで。ショートカットで、目は少し大きめで、少し身長低めで、なんか元気でやる気ある!みたいな、かわいい感じで、でもそれとアンバランスな、あの・・巨乳。最高なんですよ!!』
ボクは最後に思わず立ち上がり、右腕を上げていた。
『なるほど、確かにダイキさんの好みに近しい方のようですね。』とマスターが言う。って
『あれ?なんでマスター、ボクの好みの女性、知っているんですか?話しましたっけ?』
『いえいえ、直接はお話はお聞きしてませんが、その辺はこれまでの、これからのダイキさんのサポートで得られる情報ですから。はい。あらゆる手段を使っての。』
と、マスターは普通に笑顔で返答する。
『あはは、そうなんですかぁ~。いやー、すごいな!レジスタンスの情報収集力って。あははは!』
もう、一生、プライベートなんかない。

『それで、ダイキさんはその方とご一緒にお仕事をされるんですか?』
『はい、これからボクがやっている仕事が忙しくなるんで、そのサポートとしてついて貰うようになるんです。』
『そうなんですか。それはつまり、ダイキさんにとっては「チャンス」になりますね?』
『そうなんです!!これはホンにチャンスなんです!ボクにもやっと彼女ができる可能性が・・・きましたぁ~』と少し涙目でいう、ボク。
そんなボクにマスターは微笑みながら『そうですか。がんばってください。ちなみに、その女性の方のお名前は?』
『あ、はい、確か及川育子(いくこ)さんです。28歳なんで、ちょうどいいんですよぉ。少しだけお話したんですが、話も合いそうで~。』
すると、そんな満面の笑顔のボクはキッチンの奥から視線を感じる。ますみがこっちをみて「じっ」っとみている。

・・・まだ見てたんだぁ。

そんなますみはこちらを見ながら、ジャガイモを包丁で切っている。まったくジャガイモの方を見ず、ずっとこっちを「じっ」とみて。
すると、今度はボクの右側から違う視線を感じる。

『・・・・・・』

唯ちゃんが無言のまま「じっ」とみている。
これまた唯ちゃんはこちらをみながらグラスとお皿を拭いている。まったく手元を見ずに、ずっとこっちを「じっ」とみている。

・・・・視線が痛い。

ボクが唯ちゃんに笑顔を向けようとした時、
『ふ~ん。それで、ダイキは、その女に、告白でも、するの?』
と、ますみの方から感情が感じられない声がキッチンから聴こえた。・・・ジャガイモをとんでもないスピードで切りながら。
ボクがますみの方を向いて話そうとした時、
『え~。ダイキさん、告白、するん、ですか?』
と、今度はテーブル席から唯ちゃんの普段では絶対考えられない感情がまったく感じられない声が聴こえた。・・・高速で皿を拭きながら。

・・・なんじゃ、この状況。
ここはマスターに助けを・・・って、いない!どこ行きやがった!あの髭メガネ!

完全に孤立無援の四面楚歌。こんな時にあのウザイ、仁君が店内に入ってくればいいものの・・・

ボクがそのままの静止画の如く止まっている。無音な空間が支配する。この緊張感は・・・と、ガマンできずに声を出そうとした時、

『ダイキさん、楽しそうですね』
(ピキーーーーン!)ゾクゥ!!寒気が!!

『そうね、ダイキ、楽しそうね』
(ピキーーーーン!)ゾクゥ!!って、殺気がぁ!!

ますみと唯ちゃんに、笑顔を向けられながら、ボクはただただ。。。作り笑いをしていた。


【8】

2012年2月7日、火曜日。節分の鬼が4日も遅れてやってきやがった?次の日。仕事が終わった平日、悩みや愚痴があるサラリーマンが繰り出す夜。

『ボクはこの先、生き残れんだろうかぁ。。。』
あの二人の殺気から。。
なんか知らんが、すんごく怒っているみたいだ。
なんかしたか?ぼく。

『なに言ってるんだ、ダイキ。』
と、ボクの隣で焼き鳥に喰らいついている頭ツンツン野郎、新次郎こと『辰巳新次郎(たつみしんじろう)』。
こいつもレジスタンスの一員であり、昔からの呑み友達でもあったりするちょっと変ったヤツである。

『いやね。。なんか鬼がいるんだよ。』『鬼?なんだそりゃ?』
『いやね。。ボクが幸せを噛みしめていると出て来るんだよ。』『?よくわからん』
『いやね。。ボクの行きつけの店で、』『クエリだろ?』
『幸せを語っているとだね、そこで働いている子』『ますみと唯だろ』
『が、なぜか不機嫌になっているようでね、ボクに笑顔を向けながら』『完璧な嫉妬だな』
『殺気を含めて話しかけて来るんだよぉ~、って!ばれてる!!!』
と、ボクは驚きつつ新次郎をみて『なんでわかった、店もますみも!って嫉妬って』『だって、お前が一人で行く店ってクエリしかないじゃん。引篭もりだし』『おうおうおう!新次郎、この野郎、ここで泣くぞ!こりゃ!』『なんだ、その情けない脅し』
と、何食わぬ顔をしながら日本酒を呑んでいるその姿。
くそ~、このザ・社交性が。
確かにボクは新次郎とは違って、あんまりひとりで色々なお店に行かないけど・・・、こいつは色々知っているよなぁ。店。
友達も多いし。男女問わず。。。妬むぞ~妬むぞ~。
っと、ボクが妬む光線改め呪いを送っていると、
『ふーん、相変わらずだな、オイ。羨まし過ぎる。』
と、とんちな返答をする新次郎に
『いやいや、どこだが!このままいくとボク、殺られるって!』
真剣に思い悩んでいるボクに少し引きつつ、
『・・・まあ、気付いていないならいいけどな。傍から見ていると面白いし。』
これまたザ・他人事な回答をしやがりましたよ。
この野郎、人の不幸を酒のネタにしようとしてやがる。。。

『まあ、それはともかく、だ。』
と、新次郎が冷酒をボクのお猪口に注ぎながら言った。

『どうだ。会社は。』

実は彼とは結構古い付き合いだ。そう、あの11月の「告白」の前からボクは新次郎を知っていた。

新次郎とは今の会社で出逢った。もうかれこれ5年前ぐらい。
ボクはその前から中途で入っていたんだけど、彼は新事業のサービス立ち上げメンバーとして入社してきた。
最初はそれほど仕事上でも付き合いはなかったが、ボクが新事業のプロジェクトに異動になった時から、一緒に仕事をする「同僚」になった。
その当時、何かと仕事への考え方が同じだったのと、真逆な人生観で何故だか意気投合していたボクらは、様々な新規プロジェクトを共に担当し、それぞれ色々なサービスやシステムを立ち上げた。
その時のボクは、彼のことは「同僚」プラスαぐらいの認識で、仕事以外はまったく深い付き合いはしていなかった。ただ、仕事が出来るヤツ、一緒に仕事をしていれば面白いことができるだろう、な感じを持って、付き合っていた。
それから2年ほどたって、プロジェクトが一通り事業化された頃、ボクは前から考えていた「独立」に向けての準備し、会社を辞める算段をつけていたが、結局はそこまでの才能は無かったためだろうか、独立の目処がつかず、諦めかけていて少し、「腐って」いた。
傍や新次郎は、今の会社に入る前に起業の経験があったこともあり、且つ、それまでの色々なツテもあったりと、これまでやってきた成果を社外のスポンサーに提示&新事業の提案が認められ、会社を辞めて、見事に自分の会社を立ち上げた。そう、ボクがやりたかったことを。
彼からは一緒にやらないか、と誘われていたが、ボクはミジンコのようなプライドが邪魔し、彼の誘いを断り、結果、その当時のプロジェクトの進め方に反発を持っていた人達に会社の主導権を握られてからは、リサーチ部門のいちスタッフとして追いやられ、今だ会社は辞められずにいる。そう、世に言う典型的な「窓際族」になった。

ボクは彼に「嫉妬」していた。

だから、あの11月の出来事で彼から自分がレジスタンスだと告白された時、ボクは「嫉妬」の上に、さらに彼に「疑心」を持った。
あの頃、ボクと一緒に色々なプロジェクトに誘っていたのはボクが救世主だったから。ボクの「能力」を認めていたんじゃなくて、ただ「護る」だけの存在として近づいてきたんじゃないのか。
そんな「嫉妬」や「疑心」は、「猜疑心」をボクの心に産んだ。

でも、
それはしょうがないことだとも、思うもうひとりの「ボク」がいる。
たとえ真実がそうだとしても、それでもボクにとって彼との出会いは、一緒にやった経験は、ボクのビジネスマンとしてのレベルを飛躍的に上げてくれたし、仕事の「おもしろさ」を教えてくれた。

そう、かけがえのない「経験」を与えてくれた。

まあ、ある意味、割りきりがいいのか、それとも彼を信じていないのか、それとも。。。
こんな風に考えてしまうようになったのも、ボクの、これまでの人生で得てきた経験からだから。

そういう風に「創られた」、「今」のボクだ。

だから昔のことは気にしていない。今の彼との関係は。
むしろ、前よりも。。。

『おい!聞いてるか?』
と、新次郎がボクのデコを箸で突っついてきやがった。って
『おう!!って、にゃんじゃい!聞いてるよ、聞いてる。お前が金に物言わせて色々な女の子を泣かしているんだろう?そんな話は聞き飽きたよぉ~』
『おう!おう!、聞いていないじゃないかぁ~。そんな話というか、ウソ出鱈目並べているんじゃねぇ~』だから、箸でほっぺにぐりぐりするなぁ、こいつは酔うとめんどくさい。

『ああ、会社な。まあ、何事も無くやっているよ。円さんのサッドぐあいが増しているぐらいで、それはそれで。。。な!(ニコ)』『なに爽快な笑顔向けているんだ、このドM。そうじゃなくってだなぁ。』
と、新次郎が箸をテーブルにおいて少し真面目顔をこっちに向けてきた。
『そろそろお前もあの会社から出たほうがいいんじゃないか?お前の能力を発揮できる環境を与えてくれるとは思えないし。それに言ってじゃないか、お前、会社、嫌いなんだろう?』
と、少し興奮気味に言ってきた。

まあ、確かにその通りだけどね。
ボクは会社が嫌いだ。
そもそも他人との付き合いが、嫌い。
そもそも他人に命令されるのも、嫌い。
そんでもって他人に自由を束縛されるのが、一番嫌い。
そんな要素満載の代表例である「会社」にいることなんて、耐えられない。

『特に、お前の得意分野はデータマーケティングだろう?リサーチだけやっているなんて、つまらないだろうし。お前さえ良ければ外注でも契約でもいいから俺のところで仕事しないか?今、結構デカメの案件がきているだよ。前にお前とやったプロジェクトの一つに近いヤツでな。DWH(データウェアハウス)の再構築と社内BI(ビジネスインテリジェンス)環境の整備だ。これに教育を加えての逆提案で、結構な契約料を貰おうとしているんだ。』
と、新次郎はお猪口を持ちながら少し興奮気味に
『どうだ?』
こちらに迫ってきた。
『こりゃ、暑苦しい。』
と、新次郎の頭を手でぐーって押し返しかえす。ツンツン頭がうっとおしい。

ボクは少し考えた。
確かに凄く魅力的な誘いだ。
もう昔のようなミジンコなプライドもない。
今の仕事が楽しいとは思っていない。
会社が嫌いなのはずっと変らない、はず。
断る理由は、ない。むしろ誘いに乗るべき好条件だ。。。だけど、それは

「表の日常」ではの話だ。

『ありがとうな。感謝するよ、新次郎。』『じゃあ、決まりだな。それじゃぁ』
と、乾杯の仕草をしようとする彼に手をかざし、
『でも。うーん、まだ厳しいかな。』
とボクが言うと新次郎は詰め寄った感じで
『おいおい、なんでだよ。お前が前から言ってたビジネスライフにぴったりじゃないか。なんだ、まだ独立に不安なのか?踏ん切りがつかないんなら、俺が暫くサポートするし。それに、お前なら絶対うまくいく。大丈夫だ。だから、』と、言ってくる新次郎にボクは首を横に振る。
『そうじゃないよ。ボクは今でも独立することを諦めていなし、ボクが理想としている仕事スタイルはぶれてないよ。それに、お前の会社の仕事を手伝うことも忘れてない。約束だからな。でも、』
と、ボクはお猪口を口につけ、少し酒を舐めて口をぬらす。そして、少ししっかりとした語気で
『今の「日常」でボク自身がまだ落ち着いていないから。ボクのこれからの人生の、新しいことまで頭がいけないんだよ。そんな状態じゃ、おまえに迷惑かけちゃうよ。』
と、少し真顔で彼に向かって言い、そして
『ごめん。』と頭を下げた。

そんなボクを見ていた新次郎はお猪口の酒を一気に空けた。
『ふぅ、そうか。まあ、そうだな。うん。わかったよダイキ。でも、』新次郎は少しふっきれた顔で『待っているからな。絶対、一緒に面白い仕事、しような』
笑顔で言ってくれた。

ボクの体に「風」が吹き込んできた。
心地よい風。
これまで体に、心を縛っていた蟠り(わだかまり)の様な思いが消えていく感覚。
ボクは前から彼に対して感じていたことを、
ボクは今日、
いま、
この瞬間に、
思えるようになったんだと思う。
「只の同僚」から、信じきれる「親友」に

『ああ、もちろん!その時はよろしくな。給料高め、よろしくな(ニコ)。』『出来高契約な(ニコ)。』
『あははは!』『あはははは!』『あははははは!』『あははははははは!』
『この野郎!最後の手羽食ってやる!』『あ!オレの手羽、てめぇ』
と、ボクは新次郎の手羽先を奪って喰らいつく。そんなことも少し嬉しく思いながら。

・・・・ん?そういえばこいつ、さっき見当違いのことを言っていたようなぁ。。


->

新次郎は酒を傾きつつ、手羽先に喰らいついている彼の姿を見ながら思う。
思っていた通りの彼らしさに安堵した自分と、そして信じられる自分がいる。そのことに安心する自分は、彼に誓えると。

『護りますよ。最後まで。どんなことからも絶対。我、主』

前のお話:https://note.com/daikiha/n/n9a057eb3b6b6

後のお話:https://note.com/daikiha/n/nf60a8ccf1d64

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