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神のDB(028)

(028)新キャラの深堀開始ですぞぉ~|ω・)どうぞ~

前のお話:https://note.com/daikiha/n/n48392b4ec0f2

後のお話:https://note.com/daikiha/n/nbef4f78945b9

【Ⅲ】

ヴゥーン

無音の空間に響く音。
本来ならありえない音が響く空間。
そんな空間に佇む影。

その空間に、
ブゥーン
光が射す。

『ご報告いたします。ステージ「ルクスリア」。セカンドプランに移行致しました。』
声のみが響く。そしてその声に
『そうか。』
影が反応する。

『そのまま続けろ』『御意』
ブゥーン
再び無音の空間が流れる。
音も、温度も、光も感じられない世界。

そんな世界に「微笑み」と「狂気」の感情が流れる。
『そう、そのままじっくり溺れさせてやれ。色欲の渦にな。』

そして、再び沈黙に戻る。


【11】

2012年2月10日、金曜日。週末。
一般ぴーぷるな方々は、色々あった平日の日々を、其々な方法で清算しないと週末を迎えられない、今日この頃なこの日。

ボクはクエリからの帰り道、
『あーいい風だ!』『もう、仁君。近所迷惑だよ、もう遅い時間なんだから。』『お!そうだ、そうだな!もうこんな時間だもんな!いやー、今日も呑みましたね、兄貴!』
いい近所迷惑を振り舞いている仁君と、そんな仁君を嗜む唯ちゃんと、そんな仁君をウザイと思いつつ唯ちゃんをお兄ちゃんの心で見守るボクの3人は、夜の住宅街を歩いていた。
時刻は夜の9時過ぎ。

昨日、及川さんにデートのオッケーを貰ったボクは、あの後からまったく仕事に手がつかず、今日に至っては及川さんが笑顔を向けてくるたびに興奮と幸福がダブルパンチな気分に浸って、30分ほど呆けている始末。
(その度にきちんと円さんから腹への膝打ちと脳天への肘打ちのダブル制裁がついてきましたけどね~(・_・、)ホロッ)

そんなお腹と頭をさすりながら、この痛みと興奮を収めるべく、
いつもの週末、
いつものお店で、
いつものメンバーで軽め(仁君はお酒が弱いのでコレくらいで酔っ払うらしい)に呑み、
そんな興奮(と痛み)を少し落ち着かせつつ、まだ寒さ残る雲ひとつない冬独特な夜空を見上げながら、ボクは家に向かって歩いていた。

そんな気分に浸っているボクの傍らにはさっきからうざったい仁君。
『おお!兄貴!見て下さい!』『うーん、なに~』『犬がしょんべんしてますよ!凄いっすよ、あの犬の足の上げ方!こんな感じですよ!ちんこと尻の穴丸見えっすよ!』
うーん、ホントだー、なんて言うか。気分、台無しである。

『もう!仁君、そんなこと大きな声で言わないでよ!恥ずかしい~』
うーん、かわいー、これは声に出して言いたい。気分、回復(呪文でほんわか指数、回復~)

そんなやり取りを見ているといつも思うことだが、この二人は仲がいい。
なんでもお互いの家同士の付き合いも合って、幼少の頃からの幼馴染みらしい。
仁君のお家の「近森家」は、唯ちゃんのお家である「河合家」を守護する役目を持っている、とのこと。そんなこともあるのか、仁君や唯ちゃんがボクの近くに居る時は、大体いつも一緒に居て、こんな感じのやり取りをしていることが多い。まあ、なんというか、こういうのを
『仲良きことは美しきかな、だね。』
ボクは口に出していた。
『はい?なんですかぁ?ダイキさん。』唯ちゃんが可愛く首を少し傾げながらボクの方をみる。
『あはは、ううん。なんでもないよ。唯ちゃん』ボクは唯ちゃんに笑顔を送る。
『うぉ!なんっすか?兄貴!!』仁君が前のめりにこちらに向かってきてボクをみる。
『あはは!いんや。なんでもねぇよぉ。仁君』ボクは仁君にこれでもかのしかめっ面を送ってやる。
『なんすか!兄貴!オレに対する態度が唯と全然違うじゃないっすか!オレ、ショックっす!マジ、ショック死っす!』
うん、そのまま御臨終、お願いします。
『もう、仁君!なにバカなこと言ってるの!死ぬなんて言っちゃ駄目なんだよ!』
おお、唯ちゃん。まじめにアホな仁君の言葉に返している。。素直な子なのか、天然なのか・・。
『ああ?唯。誰が死ぬってぇ。オレが兄貴を残して死ねるわけねぇだろう!オレが死ぬ時は、兄貴が救世主としての使命を成就する時か、兄貴の危機に身代わりなる時か、二つに一つだ!!』
ああ、仁君。キミはどっちみち死ぬのね。
『仁君!すごーい!すごいよ!私、感動しちゃったよぉ。私、仁君が死んだら、一生お墓のお手入れするね。』『おう!頼むぜ、唯!墓石はオレを模した像にしてくれい。毎日、ぴっかぴかに磨いてくれよ!』最高の笑みを唯ちゃんに向ける仁君。
ええぇ。。なんだこの天然の天然によるかぶせ芸は。て、いうか仁君。キミは唯ちゃんの中では死亡決定しているぞ。。

と、過去の偉人の名言が、現在の若者の死亡フラグを確定するに至ってしまったこんな会話は、いつものこと。
ボクは目の前の光景を少し目を細めながら、心地よい気持ちで見つめていた。

それから少し歩いていると、近くの公園が見えてくる。
入り口が広くて立派なこの公園は、花火大会で有名な大きな川に沿った、やや縦長な形をした公園だ。広場はもちろん、図書館や野球場、テニスコートなども設置されている結構施設も充実している。
川からの湿気を含んだ風と、緑多い木々の匂いを含んだ風が入り混じった独特の雰囲気を持つ。
ボクはこの公園が結構気に入っている。

ふとそんなことを思っていると、
『思い出すね。仁君。覚えてる?』
唯ちゃんが仁君に声を掛ける。
『ああ、当たり前だ、覚えているぞ。この場所が、兄貴との「出会い」だからな。』
仁君は公園を見ながら目を大きく見開いて答える。
彼らがボクの方をみる。純粋で真っ直ぐな眼差しで。

ボクは、思い出す。
この眼差しで。

あの時、
この場所で、
彼らとの、

忘れられない「出会い」を。


->《半年前:2012年11月26日土曜日、午後2時》

事後報告書(一部抜粋):
◆救世主、鳴沢大樹が収容された病室内による一連経緯
病室に召集されたメンバー:支部長 祠堂京耶、支部参謀、隊長、副隊長、以下レジスタンスメンバー総勢12名。
その場で救世主は支部参謀 高野秀二(こうのしゅうじ)に昨夜の経緯報告を受け、その上で、今後のレジスタンスへの参加に対し、以下の要求を求める。

『戦闘における殺害の抑制』
※補足:次項、他、自身の生命に危機が生じる場合は是を辞さない。
『救世主の生命より自身の生命を優先すること』

その場のレジスタンスメンバーに若干の混乱が生じたものの、第一遊撃隊 所属騎士 祠堂ますみが受諾。
以下、支部長 祠堂京耶を筆頭に、その場の残り11名も受諾。救世主に対し、誓いを立てる。

次項:今後の救世主護衛体制と運用ルールの見直しについて
・・・


->《唯 SIDE》

『これからの戦いなんですが、約束して欲しいことがあります。
 それは「人を殺さないこと」。
 いや、まあ、あの、どうしても自分の命が危険に晒される時などはしょうがないんだと思いますけど、でも、お願いしたいです。極力でいいんです。
 人を殺さない戦いをしてください。
 そしてあとひとつ。
 「ボクの命より自分の命を優先すること」。
 自分を犠牲にして、なんて思ってボクを護らないでください。
 確かにボクは何も力がありません。でも、ボクは将来、皆さんを、皆さんの家族を護る立場にならなくてなならないし、護れる存在になりたいんです。
 ボクを護衛してくれることは拒みません。でも護られるだけは、嫌だと思っています。
 ボクは皆さんと護り、護られる関係でいたいんです。凄く甘ちゃんな考えで矛盾していて、何言っているんだって思うと思います。
 でも、それが、ボクが救世主として皆さんと最後まで戦い抜く、条件です。』

ダイキさんのお願いは、私が思っていた通りのダイキさんらしい、お願いでした。

私は、本当に嬉しかったです。
そのままのダイキさんだったこと。
出逢った頃の、そのままのダイキさんだったことに。

だから私は、他の皆がその場で誓いをたてた時、私も誓ったの。
誓います。
あなたの思う世界が成就しますように。
あなたが苦しまず、悲しまず、その優しさをずっと持ち続けられる世界が成就しますように。
私はあなたの想いに誓います。
私はあなたを護るために、
この身を、
この心を、
この魂を、
そして、貴方への想いで、あなたを「護ります」。

あの日に誓った時の、そのままの思いで。


->《仁 SIDE》

『これからの戦いなんですが、約束して欲しいことがあります。それは・・』

鳴沢大樹という我らの救世主様は、こんな条件を付けてきやがった。

オレはこの時、とんでもなく頭にきていた。
見た目まんまの軟弱な考え方。
初めて見た時から感じていたふざけた考え方に。

だからオレは、他の皆がその場で誓いをたてた時、オレは口では、
誓います。
といったが、はっきり言って、納得できていなかった。
そして、なんで京耶リーダーに、ますみねぇや円ねぇまで、周りの皆はこんなふざけた条件に誓いを立てたのか、わからなかった。
唯なんて憧れの人をみるような目であいつを見ていやがった。
あいつのあんな軟弱な想いで、オレらレジスタンスを護れるのか?
オレは到底こんなヤツを心底から、この身を、この心を、この魂をもって、「護ります」、とは思えなかったし、怒りすら感じていた。

だからオレは、この時思った。「試してやる」って。
オレが仕えるに値するヤツなのか、
オレの全てを預けてこのレジスタンスを成就できるヤツなのか、
そして、
オレが護り続けなくちゃならない唯を任せられるヤツなのか。

試してやる。

そして、その価値のないヤツだとわかったとき、オレは・・・こいつを殺る。

前のお話:https://note.com/daikiha/n/n48392b4ec0f2

後のお話:https://note.com/daikiha/n/nbef4f78945b9

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