受験に必要な勉強時間って?

 勉強時間はどのくらい確保すればいいのでしょうか?
 よく大学受験生が疑問を持つことだと思います。

 一般的には、難関大志望の学生は、休日なら10時間前後、平日なら5時間前後、勉強していると思います。私の生徒もそのくらい勉強する人が多いです。

 私は休日も平日も3時間程度の勉強時間で東大に現役合格しました。合計時間は計算していないので分からないですが、だいたい7~800時間でしょうか。(1日3時間勉強してたのも高3の10月から12月の3ヶ月だけで、それ以外の期間はさらに短かったです。部活を引退した高3春までは、定期テスト期間以外は1日10分程度しか勉強していませんでした。)平均の半分以下の勉強時間でしょう。

 「効率の良い勉強の仕方をしていたんですね」と言われることが多いですが、その度に「なんか違うなぁ」という感覚になります。

 今回はその辺りを詳述してみようと思います。
 「効率が良い」は「楽をする」ではないです。むしろしんどいです。勉強時間の多寡よりも、同じ時間でどれだけ頭を使ったかの方が余程大事です。
 効率がいい勉強は頭をより使う勉強なので、疲れるものになります。実際、私の生徒は、私の授業は「自分で勉強するよりもしんどくて疲れる」と言います。

 また、「楽をして伸ばそう」という発想は大事ですが、その方法を考えるのは楽ではありません。頭を使って、勉強法を工夫して編み出すことになるからです。だから、楽をするために頭を使うことになります。

 真面目な学生の中には、この手間をめんどくさがって気合いで勉強する人がいます。しんどいのが嫌だから量に逃げるのです。頑張っているようで頑張っていないとも言えますね。
 逆にセンスがある学生の中には、しっかり考え抜くことをめんどくさがる人もいます。雰囲気で答えが出せるので、それでよしとしてしまうのです。

 だから、勉強時間に関する私の持論は以下のようになります。
まず、難関大を志望するなら1、日10時間程度勉強できるだけのモチベーションと体力が必要条件になるでしょう。8時間の人もいれば12時間の人もいますが、そのくらいは誤差の範囲です。それで合否が分かれることはないと思っています。生活リズムの個人差に起因する部分が大きいです(私は集中力にムラがあるので短時間しか勉強しません)。
 そして、さらに上のレベルには、1日10時間ももたないくらい密度の濃い勉強があると思います。
 少し話は逸れますが、日本人は労働生産性が低いと言われています。その発端の一つに受験勉強があるような気がします。頭を使って工夫する代わりに、量でカバーする発想を多くの人が受験勉強を通して身につけてしまうのではないでしょうか。
 deliberate practiceという概念があります。色々な訳され方をしますが、「よく考えて計画された練習」くらいに思ってください。様々な分野で超一流になるためには厖大な練習時間が必要条件となりますが(「10000時間の法則」というキャッチーな表現があります)、その練習時間に占めるdeliberate praciticeの割合が高いことも大切だとされています。そして、deliberate praciticeは1日6時間程度が限界だと言われているのです。勉強にも同じことが当てはまる可能性はあるでしょう。

 最後に、おまけとして、私がなぜ短い勉強時間で受かったか、私なりに考えている答えを述べてみます。
 まず、本番に強かったことと、運が良かったことが挙げられます。これは今回のテーマに関係ないので、触れません。
 テーマに関係あることとしては、机に向かっている勉強時間は少なかったけれど、頭を使っている時間は長かったと思います。机に向かって勉強した時間だけが成績に影響するのではないのです。私の場合は、哲学的なことを考えるのが好きだったので、特に現代文の内容理解に効いたと思います。自分なりに考えたことがある内容・テーマだと、難しい評論文も理解しやすくなるものです。
 もう一つ関係があるのは、高校生にしては教養があったことです。私は家庭の事情もあって幼稚園にも保育園にも通わずに家で育ちました。その頃に、大人が読むような本を読んだりNHKの教養番組を見たりして育ちました。そういう事情があったので、比較的教養がありました。そのおかげで、社会や現代文が得意でした。英語の長文の内容を推測するのにも役立ちました。
 こういう力で、他の力の不足をカバーしていました。
 一方で、積み重ねが必要な英語や数学はとても苦手で、英語は文型の基本も理解していないような状態でした。だから、短い勉強時間で東大に受かったと言っても、短い時間で他の東大合格者と同じ能力を身につけたと言うよりも、他の人と違う能力で問題を解いていたと言った方が正確でしょう。英語の主語と述語をしっかり意識して読むような能力は、どんなに才能に恵まれた人でも一朝一夕に身につくものではありません。誰でも、一定時間の努力は必要です。それは今になって私が実感していることです。

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