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【酒と料理の因数分解】「だし醤油」酒場のちょい足しレシピで日本酒と合わせる

いつもの家での食事も、ちょっと一工夫するだけでよりお酒にマッチする極上のおつまみに変身させることができます。お店でも実践しているそんなワンポイントのご紹介、今回のテーマは刺身には欠かせない、食卓でも頻繁に登場する「醬油」のちょい足しレシピです。

●日本酒と言えば和食、刺身という固定観念

日本酒を飲むなら、刺身がいいよね!刺身といえば日本酒は外せないよね!
という固定観念をお持ちではないでしょうか?その考え方自体は決して間違いとは言えないものの、その考え方に囚われてしまっていると本来美味しいとはいえない組み合わせのものも「美味しいものってこんなものなんだな」と思い込んで食べ続けてしまう、なんてことにもなりかねません。

●刺身と日本酒を合わせるのは実は難しい

刺身と日本酒をマッチングさせる場合に2つ問題があります。1つは刺身盛り合わせの存在、もう1つは醤油の存在です。

刺身の盛り合わせというものは非常に華のあるものですが、お酒とのペアリングやマッチングを考えたときには非常に難があります。盛り合わせのバリエーションが豊かすぎるのです。私自身もお店で「お刺身に合わせたいんですけど、どの日本酒がお勧めですか?」とよく質問を受けていました。厳密に考えるならば、淡泊な白身魚の刺身と赤身のマグロとでは相性のいいお酒のタイプが全然違います。例えるなら、鶏のささ身やローストポーク、牛のサーロインの盛り合わせプレートに合わせてワインを1本だけ選びたい、と言っているようなものです。さすがに全員にいい顔をするのは難しいことです。それであれば、今日の晩酌はこのお酒!と決めて買ってきたお酒に対して、薬味や調味料を変えて色々な魚の刺身をお酒に寄り添わせる、といったやり方の方が建設的で楽しめるのではないかと思います。

刺身

2つ目のポイントが刺身につきものの醤油の存在です。言うなれば醤油の存在感がありすぎるのです。醤油の味わいにはメイラード反応によるフルフラールが含まれます。これはコーヒーやチョコレート、ご飯のおこげ、ステーキの焼き色などにも含まれる美味しい香ばしさを生み出す要素で、こう聞くとその味わいの強さがうかがい知れます。しかもその濃さは刺身に着ける醤油の分量によって大きく左右されます。醤油の強い味わいがそれぞれの刺身に対してランダムの濃さで加わることが、より一層この問題を難しくしています。

●日本酒の急激な進化に世間の常識がついて行っていない

メイラード反応によるフルフラールですが、これは日本酒にも含まれるものです。日本酒の熟成過程でも同じくメイラード反応が起こり、フルフラールを発生することが分かっています。ですが近年は、より飲みやすくすっきりと洗練された日本酒が好まれる傾向にあり、醸造技術も発達してきています。以前は適度に熟成感がありフルフラールを含んでいるお酒が広く流通していたのですが、現在ではフルフラールを含んでいない、よりライトな飲み口のお酒が主流となってきています。
以前のイメージのままで、日本酒は醤油とも共通項があるから相性がいいよね、というのは難しくなってきているのではないかと思います。

一方で時流に左右されず、熟成させて美味しく飲ませることを追及している造り手もいらっしゃいます。燗にして美味しいお酒であり、よりヘビーな飲み口のお酒で決して欠かせないものです。好まれる方も多くいらっしゃいます。主流はより熟成感の少ない方向へと遷移しながらも、大きく2極化の流れにあると言えるのではないかと思います。

●いつもの醤油に一工夫

醤油の量に左右される、醤油の味わいに負けてしまう・・・、それなら醤油の味わい自体を和らげてあげればいいのではないか?ということで、いつもの醤油を一工夫して”だし醤油”にすることで相性をより良くすることができるのではないかと考えました。

だし醤油は醤油にカツオや昆布のだしの風味を加えたものです。めんつゆとどう違うのか?という方もいらっしゃるかと思いますが、みりんの量が大きく異なります。煮物やめんつゆなどの料理に使う場合、通常醤油とみりんは同程度に多く加えられます。これに対しだし醤油は基本的には醤油ベースであるので、みりんや糖質の分量が少なくすっきりとしています。

_油

●だし醤油レシピ
【材料】・濃口しょうゆ・みりん・白だし
【調理手順】醤油:みりん:白だしを4:1:1で混ぜるだけ。

家にあるもので簡単に即席だし醤油をつくるレシピです。だし醬油なんて普段から家にあるわけないだろう!という方でも大丈夫。お刺身を食べる前にひと手間でできてしまいます。
生醤油とくらべるとあたりが柔らかくまろやかで、だしの旨み、アミノ酸も加わることから日本酒との相性も改善されます。是非お試しください!

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