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【酒と料理の因数分解】「みょうが」夏を象徴する和の薬味で日本酒と合わせる

いつもの家での食事も、ちょっと一工夫するだけでよりお酒にマッチする極上のおつまみに変身させることができます。お店でも実践しているそんなワンポイントのご紹介。今回のテーマはそうめんに、冷奴に、この時期は食事のアクセントに欠かせない「みょうが」を料理にちょい足しするポイントを日本酒とのペアリング目線からご紹介します。

●夏の薬味の代表格

全国的に梅雨も明け、夏も本番となってきました。暑くなってくると食欲も減退気味になって、そうめんなどのさっぱりした料理が食べたくなります。そうめんに付き物の薬味と言えばやはりミョウガを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。シャキシャキとした食感と爽やかな香りが食欲を刺激してくれ、夏バテ気味だった体も元気になってくる気がします。俳句では夏の季語とされており、古くから生活に浸透していることが伺えます。

みょうが薬味

●ミョウガの特徴

ミョウガはショウガ科ショウガ属に属します。東アジア原産とされていますが、現在の日本における野生の分布の仕方から、日本には大陸から持ち込まれたのではないかと考えられています。魏志倭人伝にも記載があるほど古くから存在しているのですが、現在でも常用の食用としているのは日本くらいのもので、渡来元とされる中国でも漢方として限定的に使われているに留まっています。

通常スーパーなどで食用として並んでいるものはミョウガのつぼみの部分にあたる花穂です。旬の時期には地中に伸びる茎の部分も「ミョウガダケ」として流通することもありますが、時期も短く流通量も少ないので見かけることも稀となります。露地栽培のミョウガの旬は2度に分かれて訪れ、夏ミョウガの旬が6月~8月、秋ミョウガの旬が8月~10月となります。それ以外の時期にはハウス栽培のミョウガも流通しており、近年ではほぼ一年を通して購入することができます。

みょうが蕾茎脚注入り

●ミョウガの食味

特徴的なのはその独特な香気と爽やかな風味、後味の辛みです。
ミョウガの紅色の色素成分はアントシアニン類で、抗酸化作用や肥満・糖尿病の予防・抑制作用が期待され研究されています。アントシアニン類は水溶性の植物色素で、ミョウガをアク抜きのために長く水にさらしてしまうと抜けてしまいます。

香り成分はα-ピネンが特徴的です。α-ピネンは松や杉などの針葉樹に含まれる特有の揮発性油の一種で、爽やかさとシャープさがあります。α-ピネンによる人体への作用に関する科学的な根拠は判明していませんが、経験的にはリラックス効果があると言われ、官能評価に基づくデータの蓄積が行われています。

ミョウガの辛味の成分はミョウガナール、ミョウガジアール、ミョウガトリアールの3種類のテルペン化合物が分かっています。このうちミョウガナールとミョウガジアールは強い辛みを持ち、交感神経系を活性化させ内臓脂肪の蓄積を抑制することが報告されています。また、これらのテルペン化合物は抗菌性、血小板凝集阻害活性、5-リポキシゲナーゼ阻害活性があることが報告されており、ミョウガの持つ抗菌性や漢方としての効用に対する裏付けとなってます。

他にも成分の90%以上を占める水分と、豊富な食物繊維がシャキシャキとした食感を支えています。

みょうが②

●ミョウガと日本酒の相性

ミョウガを薬味とする際に期待されている役割は、抗菌(くさみ消しなど)、薬用(血流改善、消化促進など)、味の補完です。このうち食べ合わせを考える際に重要になってくるのは、味の補完の分野です。ミョウガを加えることで加わるニュアンスは、爽やかな香気、後味の辛味、シャキシャキとした食感です。
このうち、爽やかな香気の元であるα-ピネンは柑橘系に含まれるリモネンなどと共に針葉樹の樹木に含まれます。このことからミョウガに含まれるα-ピネンと日本酒に含まれる芳香成分が合わさることで、森林浴のリラックス感にもつながる心地よさを感じさせているのではないかと思われます。
後味と食感の爽快感も相まってミョウガと日本酒は抜群の相性を誇ります。

●ミョウガの扱い方

ミョウガは日本酒と合わせることを前提とした場合には、ある意味万能の薬味となります。アジやさば、さんま、トビウオ等の青魚のお刺身はもちろん、カツオなどのちょっと味の強い魚の刺身の場合でも魚の臭みを消して、お酒の風味と歩調を合わせてくれます。他にもポテトサラダにトッピング、豆腐にトッピング、酢の物や和え物に加えるなど、様々な場面でお酒の風味と接点をつくってくれます。

使い方のポイントとなるのは、他の薬味との合わせ使いが重要となってくる点です。いくらミョウガによってくさみ消しの効果が期待できるからと言って、ミョウガのみで対処しようとすると結果的に膨大な量をトッピングしなくてはいけない羽目になります。何事も過ぎたるは悪影響を及ぼしてしまいます。調和を欠いてしまっては日本酒との相性どうのという話ではなくなってしまいます。

古来より和食における薬味の使い方はいくつかの薬味の使い合わせによって、それぞれ少量のトッピングで最大の効果を発揮する点が特徴的であると思います。ミョウガをトッピングする際にも、ネギやショウガといっしょに使ったり、大葉とネギと併用したりといった使い方がやはりおススメとなります。

ミョウガ大葉


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