椅子4つで出来るスーパーコーチング①

コーチングスクールを始めて14年。2000人ほどの参加者にプロ水準のコーチングのトレーニングをしてきました。

参加者は、毎回いろいろな質問疑問を持ってきてくれるので、こちらとしても刺激になります。

この記事は、まだ始まってから一ヶ月半の人たちのクラスで受けた質問からスタートしてみます

参加者「クライアントが未来を描けない場合、どうしたらいいですか」
僕「未来を描けない?」
参加者「自己成長がテーマだったんですが『10点満点の未来は?』ときいたら、『描けない』と言われました」
僕「なるほど!それで、どう対応したんですか」
参加者「『あなたの中で何が起こっている感じですか?』ときいてみました」
僕「いいですね!!そうしたらどうなりました」
参加者「『描きたいとは思うけど、止めている自分がいます』と言われました」

内敵葛藤の取り扱い

いいですね。コーチはしっかり関わってる。こういうことってよくありますよね。

何かをしてみたいと思うけど、もう一人の自分が止めてくる。で動けない。

この状態を何とかしようと思い、止める自分を変えようとするけど、なかなか変わらない。。。

こういう場合はどのようにセッションを進めたらいいのでしょうか。

まずはセッションの進め方の例を具体的に書いてみます


CO「10点満点の未来は?」
CL「描けません」
CO「描けない?」
CL「思いつきません」
CO「あなたの中で何が起きてる?」
CL「未来を描きたいとは思うけど、止めてくる自分がいるみたいな」
CO「未来を描きたいと思う自分と、それを止める自分がいる?」
CL「はい。その力が強くて、全然未来を思い描けません」

二人の自分がいて葛藤している。というのはよくあるケースです。ここからこういう場合の簡単な扱い方に入っていきます。

CO「では、椅子を使ってその二人の関係を表してみてください」
CL「?」
CO「未来を描きたいと思っている自分のことを、どの辺からどんな風に止めているのかを、椅子で表してみてください」

椅子の配置を上から見た図

例えばクライアントがこんな風に椅子を置いたとしましょう

CO「まず描きたい自分に座ってください。この自分は何をしたいですか」
CL「未来を描きたい。。。かな」
CO「未来を描きたい?」(具体化)
CL「はい。でも、できない。。。止める圧がすごくて。。。」
CO「描こうとすると、止める自分はどうしてきますか」(具体化)
CL「『そんなことやめな』。。。って言って全身で止めにくる感じです」

CO「では止める自分の方に座ってください。そして『そんなことやめな』って言ってください」
CL「そんなことやめな」
CO「もっと全身で止める感じで
CL「。。。そんなことやめな!!」
CO「どうして」(目的)
CL「。。。ろくなことにならないから」
CO「ろくなこととにならないって?」(具体化)
CL「結局できないし」
CO「できないし?」
CL「バカにされるから」
CO「誰に?」(具体化)
CL「。。。。。」
CO「誰が思い浮かんだ?」(具体化)
CL「。。。。。親です。。。」
CO「お父さん?お母さん?」(具体化)
CL「父です」
CO「そっか。。。。ろくなことにならないし、お父さんからバカにされるから。。。。。この自分は、何を守ろうとしてくれていたんだろう」
CL「。。。傷つかないこと」
CO「傷つかない。。傷つく代わりにどうなるようにしたいのかな」(肯定化)
CL「安心。。。」
CO「あとは?」(網羅)
CL「。。。楽しくやれたらいい」
CO「何を?」(具体化)
CL「。。。楽しくやれることを」
CO「そっか。。。あなたの目的は、傷つくことなく、安心して楽しくやれることをやってほしい、でいいのかな」
CL「。。。。はい」
CO「夢を描くのをやめた方がいいと思っていたのは、そのためだった?」
CL「。。。。。はい」


※(具体化)(網羅)などの質問が何かを知りたい方は、以下の記事をどうぞ。勉強になるはずです


建設的な目的

止める自分の目的が出てきましたね。ここまで来れたら一段落です。

アドラー心理学では「非建設的に見える行動にも、建設的な目的があると思って関わる」という原則があります。

これを目的論といいます。

人間の行動は目的を持っている。行動の原因ではなく、行動の目的に目を向けようというのです。

今回のケースで言うと

行動:未来を描くのを止める
目的:安心して楽しくやれることをやって欲しい

だったわけです。

この自分の目的をしっかりと理解できたら、すでにクライアントは変わり始めます。

安心して楽しくやれることをやって欲しいだけで、それが守られるなら、未来を描いてもよい、のですから!!

セッションの続き

CO「では今度はまた、未来を描きたい自分に座ってください。そして、目の前に座っているもう一人の自分を見てみてください」
CL「はい」
CO「この自分は本当は、安心して楽しくやれることをやって欲しいと思ってたみたいですよ。なんて言ってあげたい」
CL「ありがとう」
CO「っていうのは?」(具体化)
CL「これまで何度も本当に辛い思いをしてきたから。。。だから」
CO「だから?」
CL「守ろうとしてくれてたんだなって」
CO「そっか。。。では今度はあなたの思いを聴かせてください」
CL「。。。」
CO「あなたはどんな未来を描きたいのですか?」
CL「うーん。。。。本当はもっと楽しく仕事がしたい」
CO「いいですね!!どういうことだろう?」(具体化)
CL「もっと自分が成長したら、やれることも増えそうだし、いろんな出会いもありそうだから」
CO「いいね!!成長ってどんなイメージ?」(具体化)
CL「コミュニケーション力が上がったり、自信もって仕事できたら、これまでとは違う仕事ができたりしそう」
CO「そうしたらどうなる?」(予測)
CL「面白い人たちと仕事一緒に楽しくできそう」
CO「面白い人たちって?」
CL「なんか大学の時の友達のイメージが出てきたんだけど」
CO「なんだろうね」(具体化)
CL「なんか、優秀で、優しくて、面白い」
CO「いいね!!そんな人たちとどうしたいの?」
CL「仕事教えてもらったりもあるけど、私もアイディア出したりして」
CO「言ってみてどう?」
CL「そんな人たちと仕事するのはいいですね」
CO「この椅子の自分の目的は何だったんだろう?」
CL「面白い人たちと楽しく仕事したい」

二人の納得する未来とプロセス


さて二人目の目的も明らかになりました。そうしたらあとは、二人が納得する未来と、二人が納得するプロセスが明らかになればコーチング終了ですね!

シンプルに質問するなら

「では、この二人がいいね!と言いそうな未来ってどんな未来ですか?例えば」

そして

「では、その未来に向けて、どんな進み方をするなら、二人とも納得するのでしょうか?」

などときいていけば良いことになりますね。

チェックメイト

チェックメイトが近づいてきました!!

しかしここでは、さらに椅子を使うやり方を紹介します

4つの椅子で未来を表現

CO「では、今度は未来の自分を椅子で表現してみましょう。まずは楽しく仕事したい自分と、面白い人がどんな風に一緒に仕事をしているか。そして、そのときの自分はお父さんみたいなダメ出しする人を、どの辺りにおいているのか。安心して欲しい自分は、どこにいるのか」
CL「。。。。。。」

未来の椅子配置

クライアントは、試行錯誤しながら、このような配置に椅子を置きました。
コーチは、クライアントにすべての椅子に座ってもらいました。そして、みんなにとってこの椅子の配置が納得できるか、チェックしてもらいます。未来はみんなが合意できるものでないと実現しにくいし、実現しても幸せにはなりにくいからです。


楽しく仕事したい自分はまっすぐ未来を向いてちょっと前に出ています。
周りでは面白い人たちが助けてくれたりしています
お父さんは後ろのほうから、クライアントを見ていますが
安心して欲しい自分が、守ってあげているようにも見えます


CO「置いてみてどう?」
CL「いい感じです」
CO「どういうこと?笑」(具体化)
CL「この感じなら楽しくできそうです」
CO「安心して欲しい自分はここで何をしてるの?」(具体化)
CL「父のことを気にしなくていいよ、って言ってます」
CO「どうして?」(認知の修正)
CL「言ってるだけだし。。。。心配してるだけだから」
CO「心配しているだけっていうのは?」(具体化)
CL「。。。。今となっては、本当に心配しているだけ、別にどうもできないし。。。。たぶん、するつもりもない」
CO「そっか、単に心配しているだけ」
CL「はい。。。だから別に気にしなくていい。。。たまに順調だよって言ってあげたら、ホッとする」
CO「そっか。言ってみてどう」
CL「。。。とても落ち着きました」
CO「楽しく仕事したい自分はどうしてる?」
CL「楽しく仕事してます笑」
CO「いいね。周りの面白い人たちとどんな会話してそう?」
CL「。。。。こんなアイディア考えた、とか」
CO「いいね。あとは?」(網羅)
CL「ちょっとこれ教えてくれます?とか」
CO「いいね。楽しそうにやってるね」
CL「本当に!!」

ここまできたら、ここからGROWモデルなどに行けば良いのです。
本ケースは、冒頭からGROWモデルだと、やりにくかったり、うまくいきにくいケースですが、このように内敵葛藤の両者の目的を出した上で、それぞれが合意できる未来イメージを作れたら、

あとは

G いつまでに何を目指す?
R すでに何はできてる?どんなリソースがある?
O ゴール実現のためにはどんなやり方がある?
W 何から始める?それをしたらどうなりそう?

のGROWモデルでうまくいきそうですね!!!
(ただし、これらの答えは、葛藤していた両者「楽しく仕事したい自分」「安心して欲しい自分」が納得するものかチェックが必要です)


まとめ

いかがでしょうか。これはとても楽なやり方です。

葛藤の両者を出した以外のポイントは、

関係者を明確にした

ことです。アドラー心理学では相手役と言ったりしますが、実は多くの場合、人間の目的には相手役がいるのです。

・未来を描きたい自分は 面白い人たちと楽しく仕事するために描きたい

・描くのを止める自分は 父親にバカにされないために止めている

ですから、クライアントの内部で葛藤している二人には、それぞれ意識している人がいるわけです。

だったら、意識している人も未来の中に出してしまえばいいわけです。

面白い人たちのように近くにいたい相手は、未来でも近くに
お父さんのようにほどほどの距離感でいたい相手は、ほどほどの距離で

そうすると、楽しさと安心感がある未来のイメージになり、ますます進みやすいわけです。

ということで、続きの記事では別ケースを通じて、もう少し詳細な解説を行います。


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