だけど?の活用法(葛藤と逆接質問)

歯医者に行きたいです

コーチングスクールでの一コマです。僕がコーチングのデモンストレーションのクライアントを募集したところ、20代の男性が手を挙げてくれました。

CO「何について話したい?」
CL「歯医者に行きたいです」
CO「行ったらいいじゃない笑」
CL「はい。。。そうなんですけど。。。」
CO「そうなんだけど、何?」
CL「。。怖くて。。。」

行ったらいいじゃない

歯医者に行きたいなら、行ったらいいですよね。

だから「行ったらいいじゃない」と言ったわけですが、もちろんそれで終わるとは僕も思っていません

「行ったらいいじゃない」と言われると、それはそうなんだけど、というように、当初の考えと相反する考えが出てくるわけです。

クライアントの中に矛盾(葛藤)があるんですね。葛藤がなければ悩まないわけです。同じ状態の虫歯を抱えていても「歯医者に行こう」と思えば悩まないし、同じように「歯医者に行く必要はない」と思っている場合も本人は悩まないわけです。

悩むのは
「行ったほうがいいんだろうな」VS「でも痛いの嫌だなぁ」
「行きたいんだけど」VS「全然時間取れない」
「行かなきゃいけないけど」VS「怒られそうで気が進まない」

とか矛盾(葛藤)があるからですね。

この場合だと
「歯医者に行きたい」VS「怖い」

の矛盾(葛藤)が存在することがわかったので、簡単にコーチングするなら、それぞれの目的を明らかにすれば良いのです

CO「では、質問。歯医者に行きたいというけど、それは何のため?」(目的)
CL「痛くなるのを避けたい。。。」
CO「なるほど。あとは?」(網羅)
CL「歯を良い状態に保ちたい」
CO「どういうこと?」(具体化)
CL「年取っても健康な歯でいられたらいいと思います」
CO「なるほどね。では、歯医者行きたいに関して他にどんな目的がある?」(網羅)
CL「。。。みっともないのは嫌ですね」
CO「みっともない?」(具体化)
CL「虫歯のままとか、歯が欠けたり」
CO「そうなんだね。ここまで言ったことを踏まえて、歯医者に行く
一番の理由はなんだろう」(発散→収束)
CL「健康に不安がない状態になること」
CO「そっか。ここまで言ってみてどう?」
CL「はい。やっぱり行くしかないと思います!」

「行きたい」の目的

ここで
CO「どうする?」
CL「今から予約入れます!」

みたいな話になるなら、それで終わるのも良いと思います。

けれども一応「怖い」という方の話もきいてみましょう

CO「では、怖いという自分は、何を避けたがっているのでしょうか?」
CL「。。。。痛いこと」
CO「治療のときの痛さ?」(具体化)
CL「そうですね」
CO「なるほど。あとは何を避けたい」(網羅)
CL「うーん。歯を抜かれるとか」
CO「とか。。。」(網羅)
CL「神経を抜かれる」
CO「神経を抜かれる?」(具体化)
CL「昔にかかっていた歯医者が、すぐに神経を抜きましょうというので、それが怖かったと言うか」
CO「なんだろう。。。。」(具体化)
CL「なんだか分からずにどんどん進むのが、それでいいのかと」
CO「ちゃんと説明してもらって納得して進めたかった?」(言い換え)
CL「そうですね。他の選択肢がないのかききたかった」
CO「なるほど、他にはどうですか?避けたいこと」(網羅)
CL「うーん。あとは、なんでもっと早く来なかったとか言われそうとか笑」
CO「そっか、改めて、何を避けたがっていたのかな?」
CL「。。。なんだかわからない形で治療が進んでいくこと。。。それでいいのかな、って」
CO「痛さは?」
CL「嫌は嫌ですけど、ほっとくともっと痛くなるはずなので」
CO「あはは。そうだね。。ここまで話してどう思ってる?」(反芻)
CL「。。。。ちゃんと話をしてくれる歯医者さんに行きたいんだな、と思いました」

「怖い」の目的

きいてみて良かったですね。何にしても避けたいことがわかれば、打ち手が見つかってくることが多いです。

なので、コーチは怖がらずに踏み込んでいくと良いですね。

このような展開を作ったきっかけが

CL「歯医者に行きたいです」
CO「行ったらいいじゃない笑」

肩入れ

この「行ったらいいじゃない」なわけです。人は矛盾を抱えている場合、片方に肩入れされると、もう片方が反発するようにできています

だから

CL「あやまったほうがいいのはわかってるんだけど」
CO「とっとと謝ればいいじゃん」
CL「いや、でももともとは彼女が言い始めたことだし」

となりやすいわけです。けれど同じ例でも

CL「あやまったほうがいいのはわかってるんだけど」
CO「謝りたくないんでしょ?」
CL「そうだけど、やっぱり僕も言い過ぎたのは間違いないんで」

となったりします。

コーチがクライアントの矛盾(葛藤)のどちらに肩入れするかで、クライアントの反応が変わるわけです

このようにしながら、クライアントの内側にある矛盾(葛藤)を浮かび上がらせた上で、先ほどの例なら「目的を明らかにする」など次の手に結びつけていくわけです

逆説接続詞を使う方法

別のやり方が、逆説接続詞を質問にする方法です。

逆説接続詞=しかし、だけど、とはいえ、でも、ところが など

歯医者に行きたい だから 予約をいれた(順接)
歯医者行きたい だけど お金がなくていけない(逆接)

ですね。

順接の接続詞も逆接の接続詞も、そのまま質問としてコーチングで使えます。

CL「もうこれ以上がまんしたくない」
CO「だから?」
CL「彼女としっかり話がしたいです」(結論)

CL「もうこれ以上がまんしたくない」
CO「だけど?」
CL「彼女にどう話したら伝わるかわからない」(課題)

みたいなイメージですね。これらは『確認の質問10選』に入っている質問です。確認の質問については、以下の記事をどうぞ

ということで、最初の事例に戻りますが

CO「何について話したい?」
CL「歯医者に行きたいです」
CO「歯医者に行きたい。だけど?
CL「。。怖くて。。。」

逆接の質問

というやりかたもいけるわけですね。

友達が欲しいんです

昔、とあるコーチから相談された案件です。

そのコーチは大学1年生にコーチングをしたのだけどうまく行かなかったといいます。以下はその再現です

CO「何が話したい?」
CL「うーん。。。」
CO「なんでもいいよ」
CL「友達がほしいです」
CO「いいね!友達と何したい」(具体化)
CL「いや、別に普通でいいんですけど」
CO「普通って?」(具体化)
CL「昼ごはん食べたり」
CO「あとは?」(網羅)
CL「一緒に授業受けたり」
CO「いいね。あとは?」(網羅)
CL「それぐらいです」
CO「ここまで話してどう?」(反芻)
CL「。。。ともだちがほしいです」

パート1

受容的な感じできこうとしているし、どうして友達が欲しいのかを聞こうと頑張っていますね。具体化や網羅の質問も入れています

改善するとしたら、クライアントが答えやすい質問にするといいですね

CL「友達がほしいです」
CO「いいね!友達と何したい」(具体化)

は決して悪くないですが

「もう少し教えて」
「どうして?」
「どんな友達がいい?」
「どんな人となら仲良くできそう?」
など他の質問と比較して、より答えやすそうなものを選ぶと、いいかもしれませんね。

またこのクライアントはゆっくり考えて自分のペースで話せたほうが良さそうですから、ゆったりと関わるのも大切そうですね

CO「なるほど!どんな友達がいい?」(具体化)
CL「。。。普通に話とかできたら」
CO「なんでもできるとしたら?」(制約を外す)
CL「なんでも。。。。。」
CO「そう。なんでもできるとしたら?」(再質問)
CL「どっか遊びとか行きたいです」
CO「例えば?」(具体化)
CL「。。。。プールとか?」
CO「いいじゃん!プールで何したい?」(具体化)
CL「え。。。泳ぐとか。。。」
CO「いいね。あとは?なんか食べたいとか」(網羅)
CL「。。。。。とうもろこし?」
CO「いいね!とうもろこしいいね!!」
CL「。。。。。。」
CO「ここまで話してどう?」(反芻)
CL「。。。。。ともだちがほしいです」

パート2

一問一答になってしまい、コーチングが苦しそうですが、引き続き制約を外しながら、望む未来を具体化しようとしていますね

とくに友達を具体化してみようとするところはいいですね。どんな友達と何がしたいか。がわかれば行動へのモチベーションもあがりますし、相手が明確ならどう関わっていくと仲良くなれそうかもイメージできますね。

なので、

CO「なるほど!どんな友達がいい?」(具体化)
CL「。。。普通に話とかできたら」
CO「なんでもできるとしたら?」(制約を外す)

これでも良いですが、あんまり急がずに
CL「。。。普通に話とかできたら」
CO「どんな話ができる相手だと良さそう?」

みたいに、具体化をすすめてみるなどもありですね

制約を外すのもいいですが、そのあとで「本当にやりたいこと」が出てくるのが大切なわけです。そういった意味では「とうもろこし」はあんまり関係なさそうですね

CO「だれか友達になりたい人っている?」
CL「。。。。」
CO「例えばでいいよ」(具体化)
CL「2、3人は」
CO「いいね!その人たちとどうしたら友達になれそう?」
CL「。。。。。」
CO「友達ができてる人は、どうやって友達つくってる?」
CL「。。。。話しかけたりとか」
CO「そっか。話しかけたらどうなりそう」
CL「うーん。友達になれるのかな」
CO「。。。じゃあ話しかけてみたら?」
CL「それは無理です」
CO「そっか。。。。どうしようね。。。。」

パート3

行動に移そうという姿勢は素晴らしいですね。しかも相手を選んでもらうのも良いですし、他の人の友達作りのやり方を参考にする(モデリング)こともいいと思います

ただクライアントにとっては、いきなり話しかけるはハードルが高いようなので、スケーリングを使うなどして、ステップを細分化してもいいかもしれませんね

CL「2、3人は」
CO「いいね!その中から一人選んでくれる?」
CL「はい」
CO「その人と友達になっている状態が10点だとして、今何点まできてる?」
CL「。。。。4点?」
CO「おおいいね。4点の中身は?」
CL「名前は知ってるし、学部は同じだし。。。。あと◯◯が好きみたいで、それは僕も好きだし」
CO「いいじゃん!!それが4点だとしたら、5点ってどんな状態?」

スケーリング

みたいに進めていけば、何かできることが見つかるかもしれませんね。


GROWと「だけど」

とはいえ別のやり方もあって、それが「だけど?」と逆接の質問をぶつけてみることなんですね

一番早く使うならこのタイミングです

CO「何が話したい?」
CL「うーん。。。」
CO「なんでもいいよ」
CL「友達がほしいです」
CO「友達が欲しいんだね。だけど?

逆接質問

この質問をしたときに

CL「どうしたらいいかわからなくて」
CO「っていうのは?」
CL「声の掛け方がわからない」
CO「わかったら行けそう?」
CL「。。。。そうですね」

課題がHOWの場合

このような展開なら、このコーチが進めようとしていたラインで丁寧に展開すればうまく行った可能性があります。しかし

CL「友達がほしいです」
CO「友達が欲しいんだね。だけど?」
CL「。。。自分なんて、って思ってしまって」
CO「。。。自分のこと、あんまり好きじゃないし、人ともうまくやっていけなさそうな気がするから」

課題が認知の場合

などの場合は、対応が変わってくるわけです。GROWモデルで行くにしても、行動を考える段になったら、このクライアントの思い込みを考慮した上で、行動を考えていくことになりますね

もしくは、この思い込みを変えていくようなやり方もできるわけです。

「友達が欲しい自分」VS「人とうまくやっていけない気がする自分」と捉えて、それぞれの目的を理解していくのも良いですし、

認知再構成法のような、認知を書き換えるパターンを使うこともできます

いずれにしても、クライアントに何が起きているかがわかれば対処法が考えられますから、その点で

だけど?

ときいてみることの意味は大きいのです。単純にGROWモデルで行けなさそうなときは、ぜひクライアントが何に葛藤しているかに興味を向けてみてください。

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