あなたは何を「前提」にコーチングしているか⑥
このシリーズはNLPの前提と言われるものの解説記事です。卓越したコーチカウンセラーが持っている世界観・人間観を身につけてください
では今回もスタートしましょう
前回の補足
前回の記事では前提⑫「その人の行動がその人自身ではない」というものをご紹介しました。一見そのことと反するような考え方ですが、「相手に関する最も重要な情報はその人の行動(身体)から得られる」というものもあります。
その人自身ではないとはいえ、その人のことを知りたければ行動を観察しようという考え方ですね。僕はこのことをアドラー心理学指導の第一人者の野田俊作先生から学びました。野田先生は乱暴な言い方をするなら「身体≒無意識」だから身体(行動やふるまい、反射など)を見ていれば、その人のことがわかる、と言うのです。そして自分で自分の身体を見ることは難しいので、本人自身が一番自分のことには気づきにくい、と。
「やりたいけどやれない」ということがありますが、結局は「やっていない」のです。それが本人の決断なのです。一見葛藤が存在するように見えますが、結論としては「やらない」と決めて「やっていない」のです。
前提⑫「その人の行動がその人自身ではない」との関連で言うと「やっていない」からと言ってその人は「やらない人」「できない人」「勇気がない人」などではないのです。とはいえ、その人を知ろうと思えば、まずはその人の「やらなさ」など、そのときとっている行動や振る舞いを入り口にして、その奥にある目的や信念(思い込み)に迫っていきたいのです。
このようにして、自分の無意識がどんな理由で何を選択しているかに気がついていくと、今度は意識の力で別の選択をする道がひらけてくるのです
前提⑭コーチが抱く期待はクライアントの可能性を大きく左右する
上の解説でも、「行動と人格は別」という考えを繰り返したり、「無意識の選択を意識化すれば再選択のチャンスが生まれる」などのメッセージを伝えています。これは前提⑭「コーチが抱く期待はクライアントの可能性を大きく左右する」に基づいています。
僕は2005年にコーチングを初めて学んだときに、先生から「コーチはクライアントの夢の第一番目の信者になってください」と言われました。
そして先生たちは、実際に僕以上に僕の未来を信じて関わり続けてくれました。そのことのパワーを身をもって体験して今の僕がいます。だからこそコーチの一番の仕事は「クライアントを信じること」「クライアントに期待をすること」だと思っているのです。
一般にはピグマリオン効果、ホーソン効果などの名前で知られていますね。期待されている、注目されていると感じると、それに応えようと行動が変化するのです。逆に期待されていないと感じるとパフォーマンスが下がるとも言われ、そちらはゴーレム効果などと呼ばれています。
いずれにしても、人は人間関係システムの中で生きていますので、周囲の期待や注目の影響を受けてしまいます。特にコーチという親密な関係の相手が自分にどのような可能性を感じて注目してくれているかは大きいのです。
ですから私たちコーチはクライアントが大変に見えたとしても、「可哀想だ」とか「助けてあげたい」とか思ってしまうことに気をつけるべきです。そうするかわりに
「つらい状態かもしれないけど、この人はすでにできてることも沢山あるし、内外のリソースを活用して未来を切り開いていく能力がある人。そして必ず素晴らしい未来を生きる人。周りの人にも勇気を与える人」
のような見方をすることが、クライアントに期待すると言うことではないでしょうか
私たちが感じていることや考えていることは、思っている以上に相手に伝わっていると言うつもりで、まずは自らに向き合いたいですね
NLPだとスポンサーシップメッセージはこれと関係しています。ロバート・ディルツはスポンサーシップについて以下のように解説しています
このような意味でのスポンサーであるというアイデンティティでクライアントに関わることが、クライアントが本来の自分になっていく上で大切なのです。
クライアントがいま話していることを超えて、クライアントの本来の姿はどんなものかに関心を広げましょう。クライアントがその人らしさを発揮している場面がどんなものかを知りたがりましょう。
僕に最初にコーチングを教えてくれた平本さんは、コーチングをしているときに、上のようなことを意識していると言います。これもスポンサー的な視点だと言えるのではないでしょうか
前提⑮人はゴールに必要なリソースを持っている
クライアントが描くゴールがどんなものでも、クライアントはその達成に必要やリソースは全て持っています。もちろんこれも、そのような前提で関わりましょう、と言うことです。
とは言え、この前提についてもいくつか根拠になる考えがあります。
まず、人は過去に全く体験していないものはゴールに描けないのです。描かれた未来は過去の体験を素材に作られたものであり、いわば未来は過去のコラージュなのです。だからクライアントが叶えたいと思って描く夢には何らか過去の体験にその根拠があるということなのです。
次に「その夢を実現できる人は必ずいる」という考え方があります。あなたのクライアントが描く夢が叶いにくそうに思える場合を想像してください。その場合でも、他の人だったら同じ状況からその夢を叶えられる可能性があるのです。なにしろ地球上には80億人もの人が生きていますから、あなたのクライアントの夢がどんなものでも、叶えられる人はまず存在するのです。
だとすると、あとは考え方と行動の仕方が問われているだけなのです。考え方を変え、行動を変え、内外にあるリソースをうまく活用すれば、どんな夢でも叶う可能性があるのです。
そして内的なリソースだけでも大変なものです。私たちの意識は忘れていているかも知れませんが、私たちは人生の中で何万、何十万もの体験をしてきているのです。自らの直接体験もありますし、親兄弟友達など近しい人の行動や結果の目撃や、体験談を聞くこともあります。そしてテレビや映画、本などを通じて見聞きしたものもありますね。それらの全ての中に人生についての様々なヒントが含まれているのです。ですから何かを実現しようと思ったときに、過去の体験の中から必ず何かヒントは得られるはずなのです。
また外的なリソースを全て利用できるなら、叶わないゴールの方が少ないでしょう。外的なリソースを活用するための最大のポイントはコミュニケーションです。つながること、知ること、教えてもらうこと、助けてもらうこと。これらによって、クライアントの未来は大きく広がっていくのです。ですからクライアントがコミュニケーション能力を発揮できるように関わっていくことができれば、クライアントはより多くのリソースにアクセスできるようになっていきます。
テクノロジーの進化も非常に大きな要素です。僕はYouTubeを通じて多くの人に(文字通り世界中にいる人に)コーチングの可能性を伝え続けてきました。驚くべきことにYouTubeは全くの無料で利用できるサービスで、むしろ広告収入まで得ることもできるのです。僕がインターネットを本格的に利用し始めたのは1996年でしたが、その当時は個人がこんなことができるようになるなんて想像することもできませんでした。
現在では生成AIの個人利用も可能になり、多くの時間やお金をかけることなく、個人で実現できることが劇的に増えています。そしてこれからもその傾向は進んでいきます。
私たちは人類史上最も夢を叶えやすい時代に生きているのです
ですからそんな時代のコーチである私たちは、クライアントに現状の制約を超えた夢を描いてもらい、クライアントに内外のリソースをフル活用してもらえば良いのです。コーチングは問題解決のためにあるのではありません。クライアントの理想の未来の実現にあるのです。
※とはいえ、描いたゴールを実現するには、時間もエネルギーも必要です。そのため描いた夢によっては、実現までにそれなりの工夫や努力が必要なこともあります。あくまでもどうしたいかを決めるのはクライアントです。コーチは必要に応じて、クライアントと夢の規模や形を見直すような関わりをすることもできます
今回はコーチの期待を中心に解説をしてきました。クライアントにはその人にしか生きられない人生があります。世界史の中で、クライアントその人が、自分の夢を追いかけられる機会は一度だけ。同じ人生は後にも先にもないのです。クライアントその人にしか地球上で実現できない価値があるのです。そこをみて、それを応援できるコーチでありたいと思います。
続く
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