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私とバセドウ病⑤【超音波検査】

バセドウ病通院3回目。

 
その日は3月31日で、年度終わりの日だった。

 
三日前に通院したばかりだというのに、また大学病院に行くなんて、よほど悪そうに見える。
自覚症状は円形脱毛症くらいなのに。

 
利用者や保護者もそろそろ不信がっているだろう。
今月、私は様々な病院にトータルで9回も行っている。9回だ。
堂々の自己最高記録更新だ。

そのうちいくつかは休んだり、遅刻したり、早退して行っている。

私でさえ急激に休みが増えたと思うのだから
周りもそろそろ察しているかもしれない。

 
その日はエコーの日だった。
超音波検査、と書くとなかなかに字面が強い。

再診のため受付はアッサリ終わり
私は指定された場所で待ち、名前を呼ばれるのを待った。

 
エコーはなかなか予約がとれないと言われたし
前回血液検査が1時間待ち、診察が予約から45分待ちなので覚悟したら
なんと予約時間ピッタリに名前を呼ばれた。驚いた。

午後の病院はいつもよりはかなり空いていた。

 
カーテンを開け、個室に通される。
仰向けに寝るように言われ、言われるがまま仰向けに横になる。

今日は甲状腺の状態を見るようだ。
触っただけではよく分からない。

 
マスクを少し上にずらすように言われ
首や首元にヌメヌメしたゼリー状のものを塗りたくられる。

 
薄暗い部屋でマスクで目は隠され(どちらにせよ目を閉じていたが)
ヌメヌメしたものを塗りたくられ
何らかの機械が当てられている。

この部位のエコーは初めてだ。 
私は内心戸惑いを隠せなかった。

 
マスクも上にずらしているため、こそばゆい気持ちになった。
マスクを外してもいいか尋ねたが
コロナ禍のため外してはいけないらしい。

 
美容室みたいに顔にタオルはいけないのだろうか。

そう思ったが
どう思おうが規則は規則なのだし
私は大人しくそれに従う。

 
入念に首元をチェックした後
今度は別の部位にヌメヌメを塗りたくり、検査だ。

 
実は私の左頬?(顎と頬の間)には数年前から小さなしこりがあり
前々から気になっていたのだ。

大学病院ならすぐ分かるだろうとタカをくくっていたが
口頭での返答ではなく、まさかのエコーにまで発展してしまった。

 
「あ、しこり動くんですね。」

「気づいた時から大きさに変化はありますか?」

 
技師の方が私のしこりに触り、コリコリと動かす。
そうなのだ、動くのだ。

触っても痛みはなく、だが右頬にはないが確かに左頬にずっとあるしこり。

 
数年前からの付き合いのしこりだが
人にコリコリ触られるのは不思議な気分だ。

 
「高熱を出したり、歯医者で大きな手術をしたりはありますか?」

私は首を振った。
どちらも記憶にない。
強いていえば、親知らずを抜いたくらいだ。

 
こちらも入念に調べて、終わった。

後日結果が分かるという。

 
今日は処方箋が出ていないので、会計をして終わりだ。
会計も混んでいなかったので
なんと30分で全てが終わった。

 
午後休みをもらったのに。
半日休みをもらったのに。

ガビーン、とした気分だが
今日を逃すと一ヶ月先まで予約は埋まっているらしいし
この日この時間にしか予約がとれなかったのだから仕方ない。

 
早々と大学病院が終わった私は、ついでにかかりつけの産婦人科にも行き、ピルの処方をしてもらった。
こちらもトータルで30分かからなかった。

 
思ったより早く終わったので
私はその足で今度は皮膚科に行った。
こちらもいつもより空いていてすぐに名前を呼ばれた。

 
この皮膚科は円形脱毛症の理由が甲状腺からきているのではないかと最初に教えてくれた病院だった。

 
私は先生に

・紹介された病院は甲状腺の治療ができず、大学病院への紹介状をもらったこと。

・バセドウ病と診断されたこと。

・服薬治療をしていること。

を話した。

 
「私にとってもレアケースだったのよ。円形脱毛症はまだ原因が解明されてないからね、円形脱毛症の患者さんは念の為甲状腺も調べるけど、まぁまず引っ掛からないのよ。」

「だからあなたも甲状腺じゃないと思っていたら、検査で引っ掛かるから私もビックリよ。早く分かってよかったわねぇ。」

 
先生はそう言い
私の頭部の状態を確認した。

 
あくまで大学病院は甲状腺の数値を平常値に戻す治療で
円形脱毛症の方は引き続き、こちらの皮膚科にかかるようになるみたいだ。

 
「あ!頭のてっぺんの方はうぶ毛が少し見えるのね。」

「うなじの方は一番生えるのが遅いから変化はまだないけど、二、三ヶ月様子を見るしかないから。」

先生はそう言った。

 
自分じゃ頭の様子は見れないし
たまに頭を触ってはツルッとした皮膚の部分が見つかって落ち込んだ。

 
薬を塗る母の話では
変わりない状態だし、むしろうなじの方は悪化したような気がすると話があったから
「うぶ毛」の一言は私に希望を与えた。

 
引き続き、甲状腺の薬を飲みつつ、頭に毛生え薬を塗るしかない。

 
私に甲状腺の病院を教えたのは看護師さんだった。

私が診察室を出る時、先生に「最初から大学病院へ行った方がよかったよね。申し訳ない。」と言われ
私が扉をしめようとしたら「やっぱりあそこは甲状腺の治療やってなかったって。も~!」と看護師さんに言う先生の声が聞こえた。

 
でも、と思う。

大学病院は初診は紹介状が必須だったし、初診は午前中のみだった。

勤務中、血液検査の数値異常の連絡をもらってから一回皮膚科に寄って結果をもらい
それから教わった病院に行ったわけだが。

 
例えあの時、例えば皮膚科で診察を受けて紹介状をもらったところで
時間帯として大学病院はその日間に合わなかった。

 
だから検査結果を聞き、大学病院に行ったのは
どちらにせよこれが最速だったのだし 
円形脱毛症をストレスで片付けないでくれたのは確かに先生だから、恨みつらみは私にはない。

 
 
次回の通院はまた二週間後。

エコーの検査結果が次回までに分かる。
一体何が分かるかな。

 
私の通院の日々はまだ始まったばかりだ。

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