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営業の話

職場で作っている冬季限定グッズが密かな悩みの種だ。

 
例年、夏から作り出すのだが
今年は色々なことが重なり、作り出す時期が遅く、それによりまだ作り終わっていなかった。

職員はそれ作りを最優先し
他の仕事は後回しにするように言われていた。
もの作りより事務仕事の比率が多い私は
そのしわ寄せにより、サービス残業がどんどん増えていった。

 
また、その冬季限定グッズを作る関係で
数人の職員は毎日支援を抜けて仕上げに入るように言われており
現場は常に人手不足だった。

そんな状態が一ヵ月以上続いていた。

 
それでも冬季限定グッズがたくさん売れるならばまだいいのだが
例年に比べると売れ行きが芳しくなかった。

販売前から、デザインや価格、数量、制作時期について現場からは色々厳しい意見を出したが
上の言うことは誰も逆らえないのが社会人の宿命だ。

 
現実は私達の予想通りなのだが
それにより上からの圧がすごかった。

上から帰る前に今日の売上数を読み上げられ
グループLINEでも現在の売上数を書かれ
もっと頑張るようにせっつかれた。

 
冬季限定グッズは例年完売しているが
現時点では完売は途方もない無謀なことでしかなかった。

例年、冬季限定グッズの売上を見込んで年間計画を立てている。
完売しなかったら別件で売上を伸ばすしかない。

 
販売責任者の私は出張販売でたくさん売るように圧をかけられていたのだが
あまりに売れ残りがありすぎて
出店販売ごときではどうにもならなかった。

 
そんな中、上から前の職場にも営業をかけるように言われた。
もう例年声をかけている場所や人には一通り声をかけた上でのこの売上のため
今まで声をかけていない人や場所にも営業をかけるしか道はなかった。

周りの同僚からは断るよう言われたが
もう道はないのだ。

私に他にアテはない。

 
このまま売れ残れば
職員が自己負担で買うとかボーナスに影響があるとか
とにかくなんらかで嫌な結果が待っている。

私が職員がいくつか買えば済む話ではないくらい売れ残りがありすぎる。

 
久々に知人から連絡があると
大抵が宗教かお金の話だったりするが
私は私で久々に前の職場に連絡する理由がお金の件なのだから私も落ちたものだ。

冬季限定グッズのチラシを持っていって直接営業するのが一番効果的かもしれないが
サービス残業が多く、現場も人手不足で、土曜日出勤も二週連続なため
日中や仕事帰りに前の職場に行けるはずもなかった。
それに気持ちも進まなかった。露骨に営業すぎて嫌だった。

 
そこで私は前の職場の施設長や主任に事前連絡し、申込書を郵送することに決めた。
それならば相手も断りやすいだろう。
上からの命令は営業することだけだ。
直接営業だろうが郵送だろうが構わないだろう。

久々に話すのだし、明るい話をしたいのに、内容が内容なだけに話しにくかった。
仕事の合間に同僚の近くで電話したので、用件くらいを話してササッと電話を切った。

 
結局は、申込書を郵送したが、売れることはなかった。
でもそれでいいんだ。
もしも前の職場の方がたくさん買ってくれたら来年もアテにされてしまう。
だから売れない方がいい。
営業をかけるのが今年最初で最後になればいい。

 
前の職場は毎年様々な施設から営業が入った。
あまりに営業が多く、みんな特に買わなかった。同情や義理で買っていたらキリがない。

どの施設も売上を伸ばすことで苦戦していた。
私だって前の職場でだって、いかに利用者の工賃を稼ぐかは課題だった。
どの施設も大変なことは福祉職員はよく分かっている。

 
売れていない冬季限定グッズを作るために
また今日も人がとられ
また今日も仕事が滞り、サービス残業が増え
圧をかけられるだろう。

年内にあといくつ売れるかな。

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