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話せなくなった日

利用者の滑舌が悪くなった。

 
保護者は「薬の飲み合わせが原因かもしれませんね。」と言い
しばらく様子を見ることになった。

 
様子を見ても滑舌は悪いままで
それどころか
今までできていたことができなくなった。

 
文字が書けない。
書けはするのだが、大きさや形が著しく崩れた。

ゴミをゴミ箱に入れるやり方も分からない。
今まではできたのに。

洗濯機に洗濯物を入れられない。
今まではできたのに。

 
私含め職員は心配になった。
その状態が数週間続いたからだ。

 
今すぐ病院に連れて行くべきではないか。

 
そう思ったが
保護者は定期通院まで待った。

薬を変更してみることになった。

 
だが、通院後、その利用者は更に進み、言葉が言えなくなった。

 
滑舌が悪くなる。

単語の頭文字しか言えなくなる。

言葉が発せなくなる。

そんな流れに驚いた。

 
今まで、障害がある人の中で発作、熱がきっかけで
著しく減退する人を見たことがある。
メンタルが原因だったり、原因不明で減退した人もいた。

 
だから私は覚悟をしてしまった。
もうその利用者は治らないかもしれない、と。

 
今となってはベラベラと話した利用者の姿が懐かしい。

私は一人切なくなっていた。

 
だけど薬の調整をしてしばらく経つと
少しずつ言葉を取り戻していった。
前のように戻っていった。

原因は薬だったのか。

ホッとした。

 
今日も部屋に響く利用者の声は当たり前なんかじゃない。

そんな風に思った。

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