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凹む時に踊る利用者

某所から引き受けた仕事がしんどい。

というのも
何度も何度も言っていることが変わるし
無茶ぶりが多いからだ。

 
ある日
私は送迎がてら
朝一でその機関まで行った。

巨大な段ボールを抱えて
その担当者がいる部屋まで行った。

…なかなかに重い。

そこでも話がまた変わり
納品できるはずが、また持ち帰るように言われた。

 
……朝から泣きたい気分だった。

 
私は車まで急いだ。

こだわりのある利用者で
その建物内に行くことを拒み
私が納品中、ずっと車で待っていたのだ。

利用者は窓からジッと私を見ている。

「遅くなってごめんね。本当にお待たせしました。」

私が謝ると、利用者は「大丈夫。」と微笑んだ。

 
私が憂鬱な気持ちのまま
車を走らせると
利用者は車内でクルクルと踊っていた。

その利用者は毎朝送迎車で踊るし
その踊りは初めて見るわけではないのだが
ミラー越しにその姿を見て
私は力が抜けてフフッと笑ってしまった。

 
こんな小さなことで落ち込んでる場合じゃないな。
やり直して納品すれば
あの人との関わりはなくなるんだから。
ちゃっちゃとやり直そう。

私は気持ちを切り替えて
前を向いた。

 
踊っていた利用者は
まさか私がこんな風にパワーをもらったなんて
気づいていないだろうな。


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