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日津野洞窟(栃木県佐野市)

佐野市の出流原弁天池に行こうと決めた際
ついでにどこかに寄ろうと思った。

 
佐野といったらプレミアムアウトレットや佐野厄除け大師が有名だし
気になっているのはアミパ佐野(釣りやねこ喫茶等が楽しめる)だが
買いたいものは特にないし
厄除けは地元神社でしたし
今日は釣りやねこ喫茶の気分ではない。

 
Googleで出流原弁天池について調べた時
近くに無料の鍾乳洞があることを知った。
それが日津野洞窟だ。

レビューを見ると鍾乳洞内は気温は15度で肌寒いが
小規模な鍾乳洞で10分くらいで見終わり
無料なわりに灯りはついているらしい。

 
観光地と呼ぶにはしょぼく、女性が一人でいくものじゃないと書かれていたため
逆に行ってみようと思った。

多分出流原弁天池のついでではないともう行くことはないと思ったのだ。

 
一日あたりあまり行く人はいないらしい穴場らしいし
今回の日帰り旅はあまり人に会いたくなかったのでちょうどいいと思った。

 
 
出流原弁天池から日津野洞窟は車で15分くらいだ。
車で15分、鍾乳洞内の気温は15度、滞在時間も15分くらいで覚えておくとよい。

 
カーナビで日津野洞窟をセットして行くと
見落としてしまいそうな小さな看板が見えたのでそこを曲がった。
が、駐車場の位置がよく分からない。

一旦賽銭箱近くに停車し、スマホで調べていると、近隣の方が声をかけてくれた。優しい。

 
その方の話によると、坂道を上った先に家の形のトイレがあり、その周りが駐車場だという。
なるほど、車を停めるスペースはあるが、駐車場の文字はないし、白い線が引かれているわけでもなく、誰の車も停まっていないので初見では分かりにくい。

洞窟は階段の先らしい。

 
賽銭箱がある方の階段から上ってもいいし、駐車場側から上がってもいいらしいので、まずは駐車場側の階段から上がって、帰りは賽銭箱側階段から下りようと思った。

レビューでこじんまりとしたトイレがあるのは知っていたが
確かに駐車場近くにはムーミンの家の白い版みたいなトイレがあった。


中を開くと、外トイレの割にキレイだった。外観より中の方がキレイな印象だ。

 
トイレ付近には年季の入った洞窟や佐野の観光地案内の紙が貼られていた。

 
洞窟の案内に従い、階段を上った私はギョッとした。
ヒルに注意の文字があったからだ。

しまった、レビューにはヒルの件は全く書かれていなくて盲点だった。

 
そう、私はスニーカーは履いてきていたが(洞窟はスニーカー推奨だったため)
ロンスカを履いていた。
つまり、足を出していた。まずい、ヒルに狙われる。

鬱蒼とした木々の道をザッザッと足早に歩いた。
長居は無用だ。

 
なるほど、人気がない。昼間なのに若干怖い雰囲気だ。
女性が一人で来るには不向きなことが洞窟まで行かなくても伝わる。

 
洞窟には扉から入ることをGoogleで調べて知っていたが
まさかの扉が開いていて再びギョッとした。
何か事件が起きそうだ。

おそるおそる中に入ると、入ってすぐのところに記帳ノートが置かれていた。
そのノートによると、私はその日初めてのお客さんらしい。
前日は誰も来ていなかった。
土日の欄を見ても、一日10組くらいしか来ていない。

あまり人が来ないことは聞いていたが、まさかのトップバッターとは。下手したらその日最初で最後の来場者かもしれない。

しかし、扉は開いている。

 
これは、中に誰かが潜んでいたらバッドエンドコースだな。そんなことを考えながらソロリソロリと歩き出した。

 
中は一般的な鍾乳洞だった。
ところどころ濡れていて足場が悪い場所もある。
また、道によっては上からの石が大きくて屈まないと歩けない箇所もあった。

スニーカーは必須と言える。

 
また、歩き出して気づいた。
スマホは圏外だった。
つまり、奥に誰か悪い人が潜んでいて何かあったらバッドエンドだし、悪い人がいないにしても、すっ転んで頭を打って意識を失う等何かあってもバッドエンド確定だ。

三途の川が洒落にならない。

私が今日洞窟に行くことは誰にも話していなかった。
…緊張感が増した。

 
そんな中、先程話した近隣の方が微かな希望に見えた。
その方と私は10分以上話していたから印象に残っているだろうし、その方は私の車もチェックしている。

洞窟に入ってから何時間も車が置きっぱなしなら、不審がり、様子を見に来たり、警察なりなんなり呼んでくれるだろう。 

 
仮に私の意識がない状態で発見されても
先程入り口で記帳ノートに名前や市外から来たことは書いたし、私の持ち物から名前や住所、連絡先は分かるはずだ。

 
私に何かあった時は、頼んだよ、おばあさん。

名前も知らない方に私は自分の人生の保険を託した。

 
狭い道を私はそろそろ歩いた。
託したとはいえ、なるべくならあの見知らぬおばあさんを巻き込むわけにはいかない。

 
ゆっくり歩いた。
鍾乳洞の世界を楽しみつつ、滑ることには細心の注意を払い続けた。

肌寒いのはもはや気にならなかった。それよりも無事帰ることが最大の重要なことだったから。

 
一通り見て来た道を帰った。
入り口でもあった扉から光がこぼれていた。
入り口の扉が開いているのは怖かったが
出口の扉が開いているのは助かった感を強めてくれて心強かった。

 
ホッとした私は洞窟前で写真を撮ったのだが
そしたら蚊が寄ってきた。
まずい、敵はヒルだけではない。蚊もいやがる。

やはり長居は無用だ。

 
来た道とは違う階段を降り、駐車場へと戻る。
階段は古いため、ゆっくりゆっくり慎重に降りる。

落ちたら終わりだ。
発見が遅れる可能性が高い。

  
至る所に彼岸花が咲いている。
キレイだが、黄泉の国への誘いに見えなくもない。
油断せずに一歩ずつ階段を降りる。 

もうすぐで階段が終わるところで大きな蜘蛛の巣が見えた。
ヤバイ、トラップのようだ。
人があまり来ない場所だから蜘蛛には楽園なのだろう。

蜘蛛の巣に引っかからないよう更に注意をしながら私は階段を降りきった。

 
自分の車に乗った時は確かな安心感があった。
おかしい、鍾乳洞とはこんなにスリル満点な場所だっただろうか。 
福島のあぶくま洞に行った時はこんな感じではなかったはずだ。

 
車に乗った時、安心したのも束の間、蚊が入り込んでしまったため
私はすぐに出発できずに蚊と密室で戦うことになった。無事勝利してよかった。

 
さぁ出発しよう、と思ったら職場のリーダーからLINEが来た。
どうやらカメを保護したらしい。
微笑ましい日常に思わず笑ってしまう。
LINEができるって素晴らしい。

下界に無事帰ってきたんだとようやく安心する。

 
そんなわけで
ぼっち行動好きな私でさえ、女性一人で日津野洞窟に行くのはなかなかにハードルが高かったというのが感想だ。

 
余談だが、ドラマ版「金田一少年の事件簿(道枝くん主演)」ロケ地らしいので、ドラマ好きな方や道枝くんファンは女性一人で行ってみるのもいいかもしれない。


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