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職場移転の日

ついに職場移転の日が来た。

事前に内覧会も行った新施設長は今月ずっと休みがないだろう。

 
引っ越しは三回に分けて行われた。

まず、初日の夕方に引っ越し業者が来て(保護者に利用者の迎えを頼んで)
二日目に職員のみ出勤して荷ほどきをして
三日目に引き続き荷ほどきをするという流れだった。

 
初日の夕方は何時に来るか分からなかった。

15:00~18:00のどこかで来るという大雑把さで
それは春は引っ越しラッシュで多忙過ぎるということの裏返しでもあった。

 
初日は普通に営業日だったので利用者を支援しつつ
荷造りをしていた。

 
昼食はカツ丼だった。
久しぶりのカツ丼はとても美味しくてバクバク食べた。
引っ越しをする職員への労いだとすぐに分かり
少し涙が込み上げた。

新施設長は昼食も適当に済ませて
運べる荷物を何往復もして運んでいた。

 
本来ならば早めに移転先の建物は引き渡し予定だったが
手直しをする箇所があり過ぎて
移転先には気軽に行けなかった。

工事完了は引っ越し初日午前中という(※結局間に合わなかった。)

 
利用者が帰ってからは更に荷造りを進めたが
まだ終わりきらない間に引っ越し業者の方が来て
次々に荷物を運んで行った。

 
トラックは1台かと思ったが
まさかの3台も来てたまげた。

引っ越し業者の人も多々いた。
皆さん、筋肉質で爽やかだった。

それを同僚に伝えると若干引かれた。

 
 
引っ越し二日目は予報通り朝から一日雨だった。

 
だからこそ初日にできることを急ピッチで進めていたわけだが
引っ越しに雨は不利すぎた。
さらにその日は最高気温一桁という容赦ない寒さも襲ってきた。

保護者も手伝いに入ってくれたのでありがたい。

 
私は引っ越し三日目が勤務日だったので
二日目にどこまで終わっているかが分からなかった。

集合は今いる施設の予定だったが
新施設長から前日にLINEが入り、移転先に集合に変わった。

 
 
引っ越し三日目。
朝から太陽が顔を出す。
勤務開始時間はいつもより早い。

 
初めて移転先の駐車場に車を停めて歩いた。
下見に行った時通り
早歩きで徒歩5分かかった。

 
みんなで相乗りして前の建物に移動。

移転先は物が無造作に散らばっていた。
まるで強盗が入ったかのようなごちゃごちゃさだ。

 
「これは、今日一日で終わるのだろうか。」

朝一でみんなが思ったことだった。

 
同僚、保護者と片付けをしている中
前施設長も子どもを預けてやってきた。

会うのは半年以上ぶりだが
変わらない様子だった。

どうやら下駄箱を作りに来たらしい。すごい。

 
私は合間に抜け出した。
その日は仕事である方に挨拶をする日だった。

あまりいい反応はされず、ハァ、とため息を吐いた。

一人でササッとおにぎりを食べた。
あまり味は感じなかった。

 
移転先に戻り、またしばらくバタバタしていると差し入れをいただいた。

甘い差し入れがありがたい。
感謝しつつペロリと食べる。うまい。

 
それからまた片付けに戻り、施設から飲み物の差し入れをもらい、また一気に飲み、私は片付けに戻った。

前施設長は授乳の関係で数時間で帰った。
気が楽になった。

 
なんとか午後には作業場や片付け場が片付いていき
明日から営業ができそうだという見通しが立った。

細々したものはまだだが、後はまぁなんとかなる。

 
サービス残業をして
帰っていいという許可をもらい
私は帰宅することにした。

 
ドッと疲れた私は
夕飯もろくに食べず、眠りについた。
明日からは営業開始だ。

 
利用者はきっと職員以上に新たな環境で戸惑う。
初日はきっとバタバタするだろう。

 
今まであれほど移転したくないはずだったのに
ガランと空っぽの部屋を見たら執着は薄れたようだった。

前に進むしか道はないから。

 
ここからは余談である。

私はこの引っ越し日に
前の建物で派手に転んで左足をぶつけ
移転先でも派手に転んで右足をぶつけ
石の尖っているところに右足をぶつけて血が出た。
両膝がボロボロになった。

先日、一緒にいた利用者が転倒して両膝を怪我したのがフラグのようにさえ感じた。

いくらおっちょこちょいの私でも
一日でこんなに怪我をするのは稀で
ある意味忘れられない日になった。
 
 
 
移転を急かされ
無理な日数で引っ越しをしたのに
移転から三日後
前の建物の前を通ったら何も変わっていなくて
無性に腹が立った。

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