元利用者を思う
障害者施設で働いた時
利用者の中に軽犯罪を犯した方、事件に巻き込まれた方がいるのは珍しいことではないと知った。
家族と不仲であったり
知的障害故に仕事や人間関係で支障をきたしたり
そんな中、やむを得ず犯罪を犯してしまう。
もしくは巻き込まれてしまう。
そんな方もいるようだった。
今からもう10年ほど前だろうか。
かつて私が担当した利用者でAさんという方がいた。
受け答えもしっかりしていたし
作業も問題なくできた。
見た目も普通だったので
パッと見は障害者に見えない方だった。
その方を担当したのは短期間だったし
すぐ退所した上、休みがちだったので
会って話したのはそう多くはない。
それでもその人の名前も顔も話し方や歩く姿さえ
今でも忘れてはいない。
担当になった他の利用者に対してもそうだ。
例え短期間の担当だとしても、今から10年以上前だとしても
案外覚えている。
退所してからは全く関わりがなかったその人の名前を
先日新聞で見かけた。
いいニュースではなかった。むしろ、かなり悪いニュースだった。
住所や年齢から、単なる同姓同名ではないことは明らかだった。
知人が犯罪を犯した時
よく周りはマスコミから人柄を聞かれたりする。
私からしたらあの人は。
Aさんは…。
意外だ、と驚きはしなかった。
嘘だ、とも思わなかった。
私が知っていたのは結局表面的なことだけだったのかもしれない。
施設を退所してからどう生きてきたのか知る由もない。
ただ、幸せではなかったのかもしれない。
今まで私は過去に犯罪を犯しつつも更生して立派に働いている利用者としか関わりがなかった。
元利用者が犯罪を犯したのは初めてだった。
Aさんは私を覚えていないかもしれない。
いや、覚えていないだろう。
Aさんの長い人生で私ができたことはあまりに少なかった。
それでも忘れないでほしい。
人と人の繋がりは消えたりはしない。
関わりがなくても、無関心なわけではない。気にかけていないわけではない。
あなたの今後、被害者や被害者の家族のことを
私は秘かに気にかけている。
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