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税理士の先生が知っておきたい雇用をめぐる最近の法律問題 #8 育児休業(1)

「働き方改革」といった言葉で表された一連の労働法規制の改正が行われてから数年、雇用関係をめぐっては続々と変化が現れてきています。
この連載では税理士の先生方にもぜひ知っておいていただきたい、最近の雇用をめぐる法律問題をご紹介していきたいと思います。
今回からは育児休業をめぐる最近の動きについて解説していきます。

1.育児休業とは

育児休業とは、1歳に満たない子どもを養育する労働者が、法律に基づいて養育のために休業できる制度です。
まず、注意が必要なポイントとしては、育児休業制度は育児・介護休業法という法律で認められた労働者の権利だという点です。
労働者の権利ですので、労働者から申請があった場合には、雇用主は取得を認めることが義務づけられます。
「うちの会社には育休なんて制度はない」といって拒絶すると違法となってしまいますので注意が必要です。

2.育児休業が取得できる期間は?

育児休業を取得することができるのは、子が1歳に達する日(誕生日の前日)までの間で労働者が申し出た期間です。
もっとも、保育園に入所を希望しているが入所できない等、一定の事情がある場合は、子が1歳6か月又は2歳に達するまでの間、育児休業を取得することができます。
しばしば、保育園に入所の申込はするけれど、落選するために当選しにくい申込方法を勉強する、といった報道を見ることがあります。これは、保育園に申し込んだものの、入園できなかったことの証明があることで、育児休業が延長されるために起こってしまう現象といえます。

3.育児休業中の賃金は?

育児休業期間中は、就業規則等で特別の定めをしていない限り、雇用主として賃金を支払う義務はありません。
生活保障の観点から、休業期間中賃金が支払われない又は一定以上減額される場合には、雇用保険から最高で月額賃金の67%相当額が支給される育児休業給付金の制度が設けられています。
また、育児休業期間中は、社会保険料(健康保険、厚生年金保険)が本人、事業主とも免除されます。

このような育児休業に関する制度が設けられていますが、育児休業は女性の権利というわけではなく、男性にも認められる制度です。今回、法改正によって男性の育児休業取得を促進する制度が設けられました。
次回はこの点についてご紹介したいと思います。

【執筆者プロフィール】
弁護士 高井 重憲(たかい しげのり)
ホライズンパートナーズ法律事務所
平成16年 弁護士登録。
『税理士のための会社法務マニュアル』『裁判員制度と企業対応』『知らなかったでは済まされない!税理士事務所の集客・営業活動をめぐる法的トラブルQ&A』(すべて第一法規) 等、数々の執筆・講演を行い精力的に活躍中。

第一法規「税理士のためのメールマガジン」2023年8月号より

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