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『それでも町は廻っている』を読んだアニメ脚本家の視点など。

とあるコミック原作とアニメ化についての私見

たまたまキンドルで無料で読めるやつの中から、一冊を選んで読み始めたらすごく面白かったので、得した気になりました。
膨大な量のコミックが公開されているので、そのなかから一冊選んだやつが、『自分にとっての当たり』になる可能性は、高くはありません。

ちなみに僕の場合、小劇場の演劇が好きなんですが、まったく情報がないなかで劇場に観に行って、『当たり』に出会う確率はかなり低いです。
なので、それが『外れ』でも、「まぁ、しかたない」くらいにしか思わないようになってます。
外れても動揺しないというのが、僕のメンタリティというわけです。

『当たり』に出くわしたときには、思いの外喜び興奮します。
それはもう、宝くじに三万円当たった感じです。(三万かいッ!)

今回僕が『当たり』と思った作品は、

『それでも町は廻っている』作・石黒正数
でした。

あとで調べたら、2005年から16年に渡ってヤングキングアワーズに長期連載され、2010年にはアニメ化もされたヒット作でした。

絵柄は、女の子は可愛く、そのなかにリアルなおじさんとかも混じっているというもので、とても上手い漫画家さんです。
僕はまだ一巻だけしか読んでいませんが、セリフのタッチは軽妙で無駄がなく、ギャグタッチの中に、リアルな心情も折り込むというもので、そのセンスに脱帽しました。
(脚本家として、セリフがうまい人は、すぐに尊敬してしまいます)

自分が小劇場の演劇をやっているからかもしれませんが、まるで大好きな小劇場のライトコメディを見ているような感覚をおぼえました。
「あ、これ、そのまんま劇場でやってみたい」
そんなことさえ思ったほどです。
もちろんコミックならではのギャグなどは、舞台では難しいのですが、軽妙な会話などは、そのままやっても面白くなることが想像できました。

普通ならここで終わるところですけど、僕の職業病がムクッと頭をもたげます。

『アニメはどうなっているんだろう?』

そう思った次の瞬間、それを見ることができるのが、今の時代の素晴らしさ。
配信の時代。

ありましたァ、ユーネクスト。
そこでさっそく一話を見ることにしました。

オープニングは、山下達郎の名曲『DOWN TOWN』
この曲は、僕にとってはEPOさんのイメージが強いですが、ここでは歌は坂本真綾さんでした。
それでも一気に、懐かしいあの時代が広がっていき、一気にノリノリになってしまいます。

ここから先、ただアニメを楽しめばいいのですが、またしても職業病発動。
『自分だったらどうするのか』ということを考えてしまいます。
純粋に楽しめよ!
と、自分で自分にツッコミながらの視聴になってしまいます。

そういうわけで、一話を見ました。
一話だけみて、いろいろ言うなよとおっしゃる方もいらっしゃるでしょうが、そこはご勘弁ください。
脚本家の視点だと、こんなふうにアニメを見てしまうということを、ちょっとメモしたいと思います。

その前に原作の一巻と、アニメの一話を見てのおおざっぱな感想は、「面白かったし、良くできてたァ」でございます。
アニメは原作の面白さを、充分に表現しているし、アニメならではの見どころもたくさんあって、スタッフ陣の優秀さがわかります。
特に気に入ったのは、オープニングとエンディング。
曲もいいし、作画もナイス。
ずっとリピートで見ていたくなります。
オープニングは、ミュージカル調だし、エンディングはガールズバンド。
最高やないですか。

さて、脚本家の視点メモに戻ります。

視点その1
『このアニメは、誰にむかっているものなのか?』

原作のファン?
男子? 女子?
その年齢は?

などの疑問を心の隅において、見始めます。

視点その2

今回は原作を先に読んでいるので、(数十分前という新鮮さ)原作からアニメはどう変えたのか?
『作り手がやりたいことは?』

ギャグ? 
ラブコメ?
青春?

原作の面白かったところを、アニメがどういうふうに料理するのかを見てしまいます。

視点その3
『このアニメはヒットするのか?』

ヒットというのはなんなのっていうことは、まず前提として問題ですが、そこはそれぞれ基準があると思います。

話題になった? 
シリーズは継続した?
評判は?

そういう下衆なことも、ついつい考えながら見てしまいます。
もしヒットしてなかったとしたら、どこが問題だったのか?
それをクリアするために、何が必要だったのか?

などということも追加で考えたりします。
まぁ、これは一話だけで語れるものではないですが。

視点その4
『自分だったら、どうするか?』

原作をどこまで踏襲するのか?
オリジナルの要素はどうつけくわえるか?
それはどこまで可能か?
改変はどこまで可能か?

これは脚本家のトレーニングとしては、かなり有効だと思います。
作品を見て、どこをどうしたらいいのかを考えることは、自分が実際に書くときに注意すべきことになったりします。
もちろん良いものからは、どんどん吸収できるし、いいことずくめです。
細かいところを考えるのではなく、大きな客観的視点で見ることができるのも良いです。

簡単に、僕はこんな視点で、アニメ作品を見てるということをメモしてみました。

漫画コミックは、一人の作家が作り上げるもの。
アニメは大勢のスタッフがかかわってつくるもの。
二つは、まったく違う表現形式です。

一人の作家のこだわりのエッセンスをくみ取り、大勢のスタッフの力を結集して、総合的に楽しめる映像作品を作り上げるのが原作物のアニメだと思っています。

アニメ化ということには、かなりビジネス的な意味もふくまれています。
一人の作家による個人作業が、大きなエンタメビジネスになっていくわけです。
そこには大きな利益を生みだす可能性というものを見いださなければなりません。
出資者さんたちは、それに賭けてお金を出してくれるわけですから。

僕たち映像作品にかかわる脚本家は、そんなビジネス面も視野にいれながら、脚本づくりをしていかなければならないわけです。
なんか、視点メモを書くと最初に言っておきながら、ちょっと話がずれてしまいました。

今回は、原作のあるアニメを見るときに、脚本家がどんな視点をもっているのかということを書きました。
その視点から、自分がどういうことを思ったかということには踏み込みませんでしたが、もしあなたが脚本を書こうとしている方ならば、少しは参考になったかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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