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【現実は甘くない】ものづくり系中小企業のD2Cブランドの始め方 〜失敗編〜

皆さん新年明けましておめでとうございます。
静岡県裾野市で小さな家具工場の3代目で、ソファ専門のD2Cブランド【MANUALgraph】と言う自社ブランドを運営している鈴木大悟と申します。

2020年は僕にとっても会社にとってもブランドにとっても、忘れられない1年になりました。恐らく皆さんにとってもそうではないでしょうか。

そんな1年でしたが最後にちょっと嬉しい出来事が。
日経新聞さんに事業承継について取材頂き記事にして頂きました。

昨年苦しい状況に至り、試行錯誤の上に始めたクラウドファイディングMakuakeへの挑戦やnoteの記事が記者さんの目に留まり記事にして頂きました。
よろしければご覧ください。

さて、そんな2020年ですが、「D2C」と言うワードがパワーワードとなり、D2C関連企業の株価も軒並み高値を更新するなど、コロナ禍以降大きく注目を浴びる1年となりました。
恐らく今年以降もその流れは加速し、また淘汰も始まるでしょう。

当社も自社ブランドを始めて今年で早8年目となりますが、僕同様、地方のものづくり系中小企業の後継ぎの方や若い経営者の方など、「自分もやってみよう!」と思っている方も多いのではないでしょうか?

今回の記事では、まだD2Cなどと言う言葉も聞いたことのない8年前から自社ブランドを運営してきて、未だあまりスケールしていない自社ブランドの反省や改善点を自分自身でまとめる意味と、そしてこれから始めようと言う僕と同じような地方のものづくり系中小企業の方向けに、僕の経験談(失敗談)を赤裸々に語ってお役に立てればと思い書きました。

以前書いたこちらの記事の中でも、いつか失敗談を書いてみたいと言いましたので、今回は失敗談を中心に書きたいと思います。

よろしければ最後までお読みいただき、そして全国のものづくり系中小企業の皆様のお役に立てればと思っています。

・経験談その1  「D2C=卸をしない=スケールしない」

D2C(ダイレクトtoコンシューマー)の定義は様々ですが、僕の中では

・お客様とのコミュニケーションがダイレクト
・ブランドの世界観を直接伝える
・流通が(なるべく)ダイレクト
・デジタルを上手く活用する

と言った感じで捉えています。
もっと詳しくは、フラクタの河野さんがこちらの記事で素敵に専門的にまとめてくれていますので是非読んでみてください。

当社のブランドMANUALgraphでは、卸をせず自前の販売チャネル(自社店舗2店舗+自社ECサイト)でしか販売をしていません。

これは別にD2Cだからと言う訳ではなく、単純にお客様によりお手頃な価格で高品質のソファをお届けをしたいと言う理由で直販しかしていないし、楽天やAmazonなどのプラットフォームでの販売もしていません。

しかし、当然ながらその代償は、なかなか「たくさん売れない」と言うことです。
なぜなら誰も売ってくれないからです。

当社の場合も8年前からもし卸をしていたら、広がり方はまた違っていたのかもしれないとも思いますが、ブランドの目的は何も売り上げだけでなく、当社の場合は「お客さまに良いものを適正な価格でお届けしたい」と言う理念があるのでそうしているだけです。

当社のように「ソファ」のような高単価商品は、そんなにコンバージョン数が多くなくてもある程度の売り上げは確保できますが、単価の低いもはD2Cだからと言って無理に「直販」にこだわる必要はないと思います。

大事なのは【Why】何の為にやるのか、そしてそれを【How】どうやって、【What】何を、【Who】誰に届けるのかが重要だと思います。

当社の場合は、

【Why】ソファを通じてわくわくする暮らし(FUN LIFE)を実現し人々のライフスタイルをより豊にする為。
そしてその先に日本のものづくりを再興し、地域を発展させる為。
【How】工場直販の受注生産で良いものを手の届きやすい価格で、
【What】高品質でカスタマイズ性とデザイン性の高いソファを、
【Who】ものにこだわる30代〜40代のファミリー層に。

と言ったところでしょうか。

D2Cは手段ですので、【Why】を軸に手段を選んでいけばいいのではないかと思います。

・経験談その2 「コミットできない」

恐らく多くのこれからD2Cブランドを始めようとするものづくり系中小企業の皆様は、既存の事業を持っていて、でもそれがなかなか立ち行かないから新たにブランドを始めよう、と思っている方も多いと思います。

当社の場合もそうでした。
しかし、いきなり既存事業を全てストップして新規事業にコミットするのは現実的ではないはずです。
資金的にも人的にもリソースの少ない中小企業であれば尚のことだと思います。
僕も既存事業の、営業も生産管理も納品も経理も全て行った上で最初は1人でブランドを立ち上げ運営をしてきました。

既存事業を騙し騙し続けながら、その傍らで新規事業を運用するのは無理が生じます。結局中途半端で終わってしまいます。

こちらの記事で、FABRIC TOKYOの森さんが語っているようにD2Cは総合格闘技です。
ものづくりから小売まで全て自前でやらなければなりません。

可能であれば、リスクを取って既存事業から撤退または縮小するか、ブランドを運営する専門の社員を雇うことをお勧めします。

当社の場合は、立ち上げ当初は僕が既存事業を推進しながら、その傍らでブランドを運営し、そして少しずつスタッフを増やしてきました。
それでも未だにブランドの責任者は僕自身で、既存事業も担当しながら恐ろしいほどのタスクに迫られながら日々を過ごしています。
これが結局うちのブランドが8年経っても大きく飛躍しないもう一つの要因となっています。

でもブランドをやるってやっぱり楽しくて毎日刺激的な日々を過ごしています。
結局は経営者の覚悟と頑張りと、そしていかに楽しめるかだと思います!

・経験談その3 「餅は餅屋」

中小企業にもブランディングが必要だと言われ始めだいぶ経ちますが、当社も含めその間、デザイナーさんを連れてきてロゴマークを作ってもらい、素敵なホームページを仕立て上げ、見事にデザインされたプロダクトを作り上げた企業の方も多くいらっしゃると思います。

また、これからD2Cブランドを始めようとしている方も多くの場合、まずはそうしようと思っているかもしれません。

それは間違いではないし、それをやらないと何も始まらないでしょう。
でもそれはスタートラインに立ったに過ぎなくて、その時点では売り上げは立ちません。

かく言う僕も、ブランドを立ち上げた当初、たまたま友人がブランディングデザインをやっていたのもあって、彼にお願いをしロゴマークとホームページを作ってもらい、それで満足をしてしまいました。

でも何も起こりませんでした。

デザイナーさんは商品を売ってくれる訳ではありません。

やはり必要なのは、「販促」と「マーケティング」そして「必死の営業」です。

「デザイン」の領域は、自分ではどうにもならないので外部の方にお願いせざる得ないのでそうしますが、大概の場合そこで資金も気持ちも尽きてしまいます。

特にD2CブランドではWEBマーケティングが重要で、この領域は経営者や後継者が特に前職でその経験がある場合以外は、実は「デザイン」と同様いきなり自前ではなかなか上手くいきません。

当社の場合、「必死の営業」だけで立ち上げ数年はなんとかなりましたが、立ち行かなくなった数年後に慌てて「ECコンサルタント」なる方にコンサルをお願いして、そして大金を失いました。

「餅は餅屋」で外部に委託するのは重要で必要ですが、そもそもこちらが無知だと自社のブランドに合わず当社のように失敗します。

結局失敗を繰り返しながら、こちらも必死で学習し、最適な外部パートナーを選ぶのが最前だと思います。

ちなみに当社の場合、結局現時点でも「必死の営業」と「必死の学習」でデザインの領域以外の全てを自前で行っていますが、次のステップに行くにはやはり「餅は餅屋」が必要であり、これまたこれまで大きくスケールしなかった要因の一つだと思っています。

でも当社も皆さんも「ものづくり」のプロで、ものがつくれる設備や経験が最大の強みです。
その強みを最大限に活かせさえすれば必ず明るい未来は来ると信じて失敗を繰り返しています(笑)。

・体験談その4 「セグメンテーションとプレイス」

ものづくり系中小企業はそもそも作れるものが限られているので、そのプロダクトや販売する市場は自ずと決められてしまいがちです。
当社の場合はソファをメインで作っていたので自ずと「ソファ専門ブランド」となりました。

逆に言うと「強みを活かしている」とも言えますが、リソースの少ない中小企業では、セグメントごと思いっきりピボットするのはなかなか困難に思えます。

でも、本当にそうでしょうか。
今の設備や技術を発想を変え横転換して、ユーザーに真に求められるプロダクトに変換する事も場合によってはできるかもしれません。

また今はECもありますので、マーケティングの4Pで言う所の「プレイス」に関しては全国、もしくは全世界を対象にする事もできるかもしれません。

ただしどの市場を狙うかを明確にしないと施策が中途半端になります。

当社の場合、ここが未だ定まらず右往左往しています。

静岡県裾野市に位置し、ECもやっていますがソファという製品の特性と価格上、メインの販売チャネルはやはりリアル店舗になります。

ブランディング上のペルソナは「インテリアやデザインに関心が高く、ものにこだわりを持つ30~40代の住宅取得層」と定めていますが、この層は地方には少なく、都市部の方がターゲット層の多い市場となります。

ただどうしてもリアル店舗の立地が静岡の為、地元での施策と外部への施策両方を行う為マーケティングのリソースが分散してしまいがちです。

実際は2店舗目も地元に出店した為、結局今は7:3の割合で地元のお客様の方が多いのですが、逆に静岡県東部と言う都市部に近い立地もあり、多くの方が関東圏からわざわざお越しいただく機会も多いのが実情です。
その為「プレイス」を明確に絞り切る事ができず施策が中途半端になってしまっています。

ただ、今後はこの立地を逆手にとって、元々「地域に人々を呼び込むブランド」を目指しているので、もっと関東圏からお客さまを呼び込みたいと思っています。

地方のものづくり中小企業も様々な地理的要因があるかと思います。
自社の立地とプロダクトの特性をうまく活かした4Pを実践していただければと思います。

以上、失敗談と言うかこれまでの反省点を書いてみました。

他にも数々の失敗がありますが、会社を潰さない程度に(笑)失敗を繰り返しながらも、遠回りをしてでも自分の掲げたビジョンを実現したいと思っています。

D2Cと言う手法はものづくり系中小企業にとってもとても有益な手段だと思っています。
そして自分たちでブランドをやると言う行為はとても楽しいです。

是非皆さんも僕の反省点を教訓にしてわくわくするブランドを立ち上げてみて下さい。

僕もまだまだ頑張ります!

最後まで読んでいただきありがとうございました。




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