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#2. 夜明けの星(『恋する惑星』)

あの、なんとも言えない熱気だとか空気感はどこからやってくるのだろう。

最近ゆったりとした時間ができたので、ひたすら映画を見続けている。面白そうだな、と思ったものはかたっぱしから。4年ほど前に、水原希子さんがアナザースカイに出演されていたとき、行き先は香港でその際に影響を受けた映画のひとつとして『恋する惑星』を挙げて以来、密かに気になっていた。(ちょうど前回のオリンピック開催のとしだ)

そのため、早速TSUTAYA DISCUSという郵便でDVDが届くサービスを使って送ってもらった。届いたDVDを早速みてみると、またわたしの好きな映像の雰囲気とどんぴしゃだった。

数年ほど前に香港には友人と行ったことがあるのだが、その頃には悪の巣窟と言われていた九龍城はすでに壊され、その跡地は公園となったあと。かつての九龍城を撮った写真集を見たことがある。すごい世界だった。できれば、直にこの目で見たいという思いは叶わずじまい。たぶん、映画はその城がちょうど取り壊されてしまったあたりの話と思われる。

あらすじ

麻薬取引にかかわる金髪の女ディーラーと、恋人にふられ落ち込み気味の刑事モウとの不思議な出会い。そして、モウが立ち寄る小食店の新入り店員フェイと、スチュワーデスの恋人にふられる警官との出会いとすれ違いという、平行線をたどる二組の関係を軸にして展開する、香港ニューウェイブ、ウォン・カーウァイ監督が描く恋愛映画。

ギラつく香港の街。

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物語の前半部分は、日本でも俳優として活躍していた金城武と、女ドラッグディーラーとの行き交いの話。(刑事の役だったのだが、223号と番号で呼ばれていた)そして後半は刑事633号と、日本でいうところの惣菜屋で働く女の子との恋の話。映像は全体的にベタっとしたコントラスト高めのカラーで、香港のギラギラとして、それでいてどこか茶目っ気のある雰囲気とよく合っていた。

まあ結果から見れば、その刑事223号も所構わずじぶんの私物に話しかけるどこかネジ一本外れてしまった男で、女の子は女の子でふとしたきっかけで手にした刑事223号の鍵を手に半ばストーカーチックに、じぶんの色に男の部屋を変えていく始末。これはもうどっちもどっちなのだが、そのコミカルな感じもわたしは結構嫌いではなかった。

昔、友人と一緒に4日くらい香港へと赴いた。いつくらいに行ったのかと写真の記録を見てみたらちょうど4年前の今頃だった。初めて訪れた香港の街は、至る所中国語ばっかりでたくさんの人で溢れていて、なぜかその雑踏の街の中に混ざると不思議と落ち着いた気分になったことを思い出した。

川島小鳥の『明星』

そういえば、これまた唐突だがわたしは川島小鳥の『明星』という写真集が好きで家に飾ってある。どこか垢抜けない少年少女が写真に収められている。こちらは撮影されたのは香港ではなく、台湾なのではあるが。

そして、たぶん『明星』と『恋する惑星』の間には共通点が存在する(と個人的には勝手に思っている)。とくにフェイ・ウォンが演じる女の子の役柄は、『明星』にでてくる女の子にかぶるものがある。そのどこか憎めない純朴さと澄み渡った自由さ。彼女たちは彼女たちで悩み多き年頃なのだが、きっと彼女たちはそれさえも次なるエネルギーに変えてしまうのではないかと思う。

そのエネルギーが、ときどきとても恋しくなる。きっと歳を重ねるごとに、知らず知らずいろんな荷物を背負っていて、それを下せなくなってしまって身動きが取れなくなってしまうのだろう。人はいつから冒険心だとか遊び心だとか見失ってしまうのだろう。

それにしても劇中の彼女たちは、とてもお洒落だ。

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